[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第三章

彼の旅路⑥

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緊張が走る中、杖を握りしめコツコツと次第に近づいて来る足音に神経を集中させていると……バタンと大きな音と共に、足音がとまった。
私はそっと廊下を覗き込んでみると……そこには先ほど見た黒いローブ姿で藍色の瞳をした青年と、20代ぐらいの若い男が、彼の行く手を阻むように佇んでいる。

20代ぐらいの若い男は藍色の瞳に、ブロンドヘアーを後ろに一つにまとめ、長いローブの裾には王宮文官の紋章である、桐の花が描かれている。
あれは……彼がオズワルド公爵か……。
緊迫した雰囲気の中、二人の様子をじっと観察していると、突然にオズワルドが青年へと詰め寄った。

「お前はどうしてこんな事を……っっ。どうして……、あああああああああああ」

オズワルドは発狂するように叫びだすと、震える声が静かな廊下に響きわたる。

「煩いなぁ、お前には関係ない。俺はお前もこの国も嫌いだ。だから全てを作り替えるんだ。俺たちの力でな」

「何をバカな事を言っているんだ!!!こんな事は今すぐやめろ!」

「はんっ、あんたが悪いんだろう。俺を捨てたあんたが……っっ!!!俺が今までどんな生活を送ってきたのかしっているのか?同じ親から生まれた妹は、豪華な家に住み、食うもの困ることはない。俺が一体何をしたというんだ!!!!なのにこんな……あまりにも理不尽だとは思わないか?」

青年は憎しみを込めた瞳でオズワルドを睨みつけると、彼は怯んだ様子を見せた。

「……っっ。シモン……すまなかった。だがこんな事をしても何も変わらない。だから……俺の妻を……返してくれ」

「ふんっ、さぁ~どうしようかなぁ。まだあんたにはやってもらいたい事があるんだ。それが終われば……解放してやるよ」

シモン……?
どこかで聞いたことがある……。
必死に過去の記憶を呼び起こすと、師匠の姿が頭に浮かぶ。
あれは……私がまだ魔法を習い始めた頃、師匠から聞いた名前だ。
まだ魔法を使いこなすことが出来なかった頃。
不安がる私に師匠が話してくれた……そこに確か彼の名前が出てきたんだ。

(私が魔導師になるなんて……やっぱり無謀ですよ)

(ははっ、そんなに不安になることはない。君と似た魔力を持った少年は、立派に魔法を使いこなしていた)

(私と似た魔力ですか……?)

(あぁ、シモンという青年さ。彼は……まぁ色々あって騎士に捕らえられてしまったが……君と同じ境遇だった子供さ。魔法って言うのは使い方を誤れば大変なことになるからねぇ~。僕は牢屋で彼を見たけれど、彼はオリジナルで魔法を作っていたんだ。ほら、こんなふうに……)

彼がシモン……。
なら彼がこの屋敷の魔法陣を描いた人物か。
そんな事を考えていると、シモンはニヤリと口角を上げ、オズワルドの手を振り払っていた。

「なぁ……どうして突然に、女の数が減ったのかを知っているか?」

シモンの問いかけに、オズワルドは大きく目を見開き固まると、体を小さく震わせていた。

「まさか……お前の仕業なのか?」

「バッカじゃねぇの、さすがの俺でもそんな事出来るわけねぇ。でも俺は、もうすぐその原因を掴めそうなんだ。ははっ、あんたがよく知る人物が関わっているかもしれねぇぜ。……俺はその証拠を手に入れ城へ乗り込む。一体どうなるんだろう……。アハハハハッ」

狂ったように笑うシモンに、オズワルドは何かを耐えるように拳を強く握りしめると、押し黙った。
証拠……?
一体どういうことだ……?
女性が減った理由は未来でも、まだ解明されていないはずですが……。

「もう一つ教えておいてやるよ。俺たちはなぁ、今それを知る人物を捕えているんだ。そいつが話す気になれば、俺がすぐにでも記憶を抜き出して、真っ先にお前に見せてやるよ」

シモンはニヤリと口角を上げると、オズワルドを挑発するように睨みつける。
記憶を抜き出す……。
どんな魔導師でも、無断で他人の記憶を見る事など出来ない。
だが一つだけ方法がある……その本人が記憶見る事を許可した場合に、その記憶を抜き出すことが出来る。
そこまで難しい魔法ではないですが、捕らえられているのが彼女だとして……彼女の性格を考えれば、素直に従うとは思えない。
まさか……拷問……。

そう結論に達した瞬間にハッと顔を上げると、シモンから膨大な魔力が流れ始めた。
私は咄嗟にその場を離れると、階段へと身を隠す。

「おぃ、お前……まさかここへ来ることを誰かに話したのか?」

シモンが発した低く鋭い声には、怒りが混じっていた。

「いや、私は誰にも告げずそれに誰にも見られず来た!本当だ!信じてくれ!だから妻には何もしないでくれ!!」

悲痛な声で叫ぶオズワルドは、ドサッと床へと倒れ込み、そこに強く蹴り上げる音が聞こえた。
グハッと唸り声がすると、一人の足音が近づいて来る。
私はすぐに花瓶の棚へ身をひそめると、いつでも戦えるよう杖をしめた。
息をひそめながらその場で隠れて居ると、シモンは私に気が付くことなく、手前の階段を静かに下りて行った。
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