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しおりを挟む「公爵様も可哀想よね。才色兼備の第8王女様じゃなくて、まさかハズレ姫と結婚することになるなんて」
「ほんとよね。やっぱり、公爵様の“不運体質”は伊達じゃないわね」
同情するように、でもどこか楽しげに王宮の侍女がそんな噂話を口にする。
今にもくすくすと笑い出しそうだ。
「ねえ、公爵様って……」
「何ですか?こっちはあなたのお手伝いで忙しいんです。無駄なことは話しかけないで下さい」
少女の髪を整えながらそんな話をしていた侍女に、その少女が声をかけると先ほどまでの楽しそうな声音が嘘のように冷たく返した。
その声に少女ははっとした。
話しかけて邪魔をしてはいけなかったことを忘れていたと。
今日はその少女、第13王女であるクレア・マクレナンとプレスコット公爵家の嫡男、レスリー・プレスコットとの結婚式がある。
侍女たちはその準備として、クレアの身支度をしていた。
わざわざ自分の手伝いをしてくれていた侍女たちに迷惑をかけるなんていけないことだったと、クレアは声をかけたことを後悔した。
「ごめんなさい。不運体質ってどういうことなのか、気になって……」
「ああ、そのことですか」
クレアはすぐに侍女に謝った。
もう話しかけて邪魔しないようにするからと伝えようと思ったクレアだったが、次女はクレアの疑問に答えて話を続けた。
「あなたと今日、婚姻を結ぶレスリー・プレスコット公爵様は不運な公爵様とお呼ばれなんです。道を歩けば穴に落ち、買い物に行けば直前で売り切れ、晴天でも彼が出かければ雨が降る。公爵様を知る方々は皆、そんな彼の不運体質をご存知だそうです」
「そんな方なのね。可哀想だわ」
「そうです。とても可哀想な方なんですよ。そして、その不運体質のせいであなたみたいなハズレ姫を娶らされることになってしまったんです。とても不運だとは思いませんか?」
「うん、とても申し訳ないわ……」
侍女はどこか機嫌良さそうに説明してくれて聞けばもっと教えてくれそうではあったが、クレアはそれ以上話しかけるのをやめて俯いた。
クレアは自分が誰かと結婚できるなんておかしいと思っていたから、その話を聞いてそういうことだったのかと納得した。
本当はプレスコット公爵は第8王女と結婚することになっていた。
しかし、直前になって第8王女は失踪してしまった。
王家とプレスコット公爵家の結びつきを強めるための結婚を中止することはできない。
そこで急遽、第13王女のクレアがその代わりとなることになった。
クレアは自分が“ハズレ姫”と呼ばれていることを知っている。
国一番の魔術師であった母親と国王である父親の間に生まれたクレアだったが、魔力を一切持っていなかった。
国王はクレアが生まれて間もなくそれが分かった時に「ハズレだな」と言ったのだという。
だから、クレアはハズレ姫なのだ。
頭の出来も悪いから、教育も受けられない。文字も読めない。
そんな自分と結婚させられるなんて、公爵様は本当に可哀想な方だとクレアは申し訳なく思っていた。
本当に自分なんかと結婚して良いのだろうかと不安に思っていた。
「ほら、ぐずぐずしないで準備してください。貧相なあなたを何とか見られるようなものにするのは大変なんですから」
髪を結い終わった侍女が苛立ったように俯くクレアを促した。
クレアは慌てて立ち上がると、花嫁衣装に着替え始めた。
ゆっくり考えている暇はない。
結婚式はもうすぐだ。
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