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しおりを挟む「あなたはこの者を妻とし、病める時も健やかなる時もこの者を愛し、生涯を共にすることを誓いますか?」
「はい、誓います」
凛とした声でクレアの隣に立つ背の高い男性は迷いなくそう答えた。
それを聞いたクレアは、自分の旦那様となるレスリー様はこんな格好良くて優しい声をした方なんだと、この時初めて知った。
急遽決まった結婚であったことと、クレアの準備に時間がかかったこともあり、クレアとレスリーが顔を合わせるのはこの時が初めてとなっていたからだ。
「あなたはこの者を夫とし、病める時も健やかなる時もこの者を愛し、生涯を共にすることを誓いますか?」
「はい、誓います」
クレアも同じように神父に聞かれた誓いの言葉に対して答えた。
クレアは教育を受けていなかったが、この結婚のために必要な礼儀作法とマナー、結婚式での流れについては教わっていた。
次は指輪の交換をして、誓いのキスをする。
ここまではちゃんと上手にできている。
クレアは指輪を落とさないか少しドキドキしながらも、レスリーの指に通すことができた。
「では、誓いのキスを」
神父のその声で、クレアは少し上を向いてレスリーの前に立つ。
そして、レスリーがクレアのベールを上げた時、クレアは初めてレスリーの顔を見ることができた。
簡単に頭の後ろで一つにまとめられた髪は少し落ち着いた色合いの金色で、艶のないクレアの髪とは違ってサラサラだ。
それに、クレアをまっすぐに見つめてくれている瞳は深みのある澄んだ藍色で、誠実さを表しているようだった。
クレアの頭の悪そうな桃色の髪と瞳とは大違いだ。
「キスをしても、いいですか?」
クレアがレスリーのことをそんな風に見ていると、こっそりとクレアにだけ聞こえるように声をかけてくれた。
結婚式の流れの中で、こんなことは教えてもらっていない。
もしかすると、レスリーが初めて会う相手であるクレアを気遣って聞いてくれたのかもしれない。
柔らかい笑みを向けて優しい声をかけてくれる彼に、クレアは緊張しながらも頷くと目を瞑った。
「……うっ」
しかし、待っていても唇に何かが触れる感覚はなく、代わりにそんな呻き声が聞こえてきた。
うっすらと目を開けると、レスリーはクレアの前で右頬を押さえていた。
どうやら、指輪を持ってくる役目をしていた男の子がいたのだが、その男の子がその時に使っていたトレイを振り回して手からすっぽ抜けてレスリーの頬に飛んできたようだった。
「今、神と会衆の前において、この二人は夫婦となりました。神がこの二人を祝福し、これからの歩みを導いてくださいますように」
クレアは大丈夫ですかとレスリーに声をかけようと思ったが、その前に神父が祝福の言葉を述べた。
神父の方からは二人がキスをしたように見えたのかもしれない。
「不運だ……」
誰かがそう呟く声が聞こえた。
そしてそのまま、結婚式は終えられたのだった。
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