【R18】魔王様は勇者に倒されて早く魔界に帰りたいのに勇者が勝手に黒騎士になって護衛してくる

くろなが

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【最終章】魔王を護る黒騎士

二話 ユタカは双子騎士の誕生を見守る

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「本当に申し訳ございませんでした」
「どんな罰でもお与えください」


 あれから十日ほどして、魔界のリズ様の家に双子は来た。
 もうこの家には俺とリズ様とレジィしかいない。


 たまに他のメンツも遊びに来るけど、基本的にはみんな魔城で何かしら作業をしている。
 魔城を結婚式場にして誰でも訪れて遊べる施設にする計画を話したら、天使が率先して改装を担ってくれた。
 自分で破壊した責任を取ってくれるらしい。


「とーっても頑丈なお城になったら、レジィ、闘技場が欲しい」


 この鶴の一声ならぬレジィの一声で、ファリーヌがやる気になったのが大きかった。
 天使三人に城全体の改装を任せる事になり、俺とリズ様にはかなりの余裕ができた。
 ちなみにイーグルが調理場とレストランの設計を全面的にやってくれている。

 神は基本的に暇しているらしいので、楽しそうで何よりだ。

 フリアンは人員の確保のため、魔界全体を駆け回ってくれている。
 獣耳の種族は足が早いから情報伝達役にピッタリなんだって。


 そんな動きがここ数日にあり、今日双子が謝罪に来たのだ。
 双子は憑き物が落ちたように大人しい。

 レジィは勇者から力が戻ったお陰で足も綺麗に治っているし元気だ。
 むしろ勇者に渡していた力が大きかったから、双子にやられる前より強くなっているくらいだ。
 リズ様もレジィが元気になってもう怒ってない。


「はぁい、許しました。おしまい!」


 レジィは謝罪に対してこれで終わらせようとした。
 慌てたのは双子の方だ。


「レジャンデール神、そんなあっさり」
「それでは僕達の気が済みませんよ」


 レジィは本当に強い神なんだろうな。
 死にかけたのにもう全く気にしてない。


「そもそも油断してたレジィが悪いよ。まんまと君たちの作戦にハマったのはレジィの弱さ。君たちは素晴らしい戦略を練って実行しただけ。平和ボケに気付かせてくれて感謝すらしてるんだから!」


 メルベイユをただ見守るだけになり、暇になったレジィは本格的に闘神に復帰するつもりらしい。
 双子に襲われた事はレジィ的には良い転機だったと力説していた。
 レジィを魔城闘技場のラスボスに据えたら良いイベントになりそうだ。


「レジィよりもリスドォルに謝ったら?」
「はい」
「勿論です」


 双子はリズ様に向き直って同様に謝罪した。


「グリストミル様の消えかけた精神を留め、回復させてくださっていたのに、何も知らずに……」
「貴方は恩人でした。それなのにとんだご無礼を……」


 本当に双子はグリストミルが好きなんだな。
 愛で暴走しちゃう気持ち、よくわかるぞ。


「私も終わったことは気にしていない。が、折角の貸しがあるなら使わせて貰おう」
「はい、なんなりと」


 姿勢を正し、リズ様の言葉を待つ双子はカッコイイ。
 動きがビシッと合ってる。


「二人で魔王の護衛をしないか」


 双子はパチパチと何度か瞬きをしてから首を傾げている。
 チラっと俺の事も見て『お二人がいれば必要ないのでは』という言葉が視線だけで伝わってくる。
 リズ様は小さく笑って説明した。


「正しくは、クラウンの護衛だ。私が魔城にいない時の魔王代理を頼んである。今日、その返事に来る予定なのだがな」


 そういえばまだ来てないな。
 まあ時間の指定はない緩い感じだから気にしてない。


「なるほど、クラウンは魔力は強いですが、身体能力は無いに等しいですからね」
「クラウンでは奇襲には全く対処出来ないでしょう。僕達の役割がわかりました」


 クラウンは正面から目線を合わせる事さえ出来れば、ほとんどの相手を弾け飛ばせるらしい。
 対象の魔力量や魔力抵抗で破壊力が変わるらしいけど、それで死なない相手は精神干渉で操れるから問題ない。
 が、悪魔は肉体的にはほぼ人間で、戦闘向きではない種族なんだそうだ。
 そもそもクラウンの精神干渉は攻撃手段じゃないけどな。
 クラウンは好戦的ではなく、基本的には力を使う事を望まないだろうとリズ様は言っていた。
 だから、代わりに剣が必要なんだ。


「私からの要望はお前達にクラウンの騎士になって貰う事だ。魔王代理のために命を懸けられるか?」


 その問いに、双子はリズ様の前に跪いた。
 動きの機敏さがとても騎士っぽい。二代目の白騎士だな。


「必ずお守りします」
「クラウン……いえ、魔王様の剣となり、盾となりましょう」


 リズ様は満足そうに頷いた。


「あとはクラウン本人の意思だけだ」
「悪魔は約束を守る種族なのにまだ来ないのですか」
「僕達が探して来ましょうか」


 双子は心配そうに立ち上がる。
 しかし、その時だった。
 リズ様が急に頭を押さえてうずくまった。


「がっ……あ……!」
「リズ様!?」


 慌てて俺はリズ様を抱き締める。
 リズ様は俺の服に深いシワを作るくらい手に力が入っている。
 これは、まるでクラウンの精神干渉の時の様だ。


「クラウン……か?」


 双子も俺と同じ考えに至ったらしく、グーデがそう呟くと、リズ様が顔を上げた。
 その顔は涙に濡れていて、悲しげだった。
 こんなリズ様は見た事がない。


「グーデ……リエール……我は?」


 これは、リズ様にクラウンの意識が入っているのだろうか。
 明らかに受け答えがリズ様ではなく、グスグスと子供の様に泣いていた。

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