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【本編】子豚と魔王
一話 魔王の棺 *屍姦(睡眠姦)
しおりを挟むとうとう手に入れた。
魔王の棺を。
□□□
ボクが大学を卒業して半年ほど経った頃、歴史博物館に彼女と行った。
職場に先着十名、欲しい人は持っていっても良いという無料チケットがあった。
彼女が歴史好きだったため、デートの良い口実になるのでありがたく手に取った。
そんな軽い気持ちで向かい、目玉展示である魔王の棺は凄い列だった。
根気強く待ち、辿り着いた展示ゾーンの棺は蓋が開けられ、ガラスケース越しに魔王を見る事ができた。
それを見られたのもほとんど一瞬ではあったが、ボクはその美しさに、思考も、嗜好も、魔王に奪われていた。
これが欲しいと。これに命を捧げると、そう狂い願うほど虜になったのだ。
ボクが内側から変化している事に気付くはずもなく、彼女は知識を披露してくれている。
魔王の両方のこめかみ辺りから生えている角は、万病に効く薬になると言われ、左側の角は半分ほど欠けていた。既に薬として利用されたのかもしれない。
勇者は魔王討伐後、国民の健康を願い、国王にその遺体を献上するのが習わしなのだそうだ。
しかし、式典の最中に勇者は姿をくらませた。魔王の棺と共に。
ちょうどそれが千年前の話で、ずっと行方知れずとなっていた棺がようやく見付かった。
科学が発達した現代社会では想像もつかない世界だが、確かに千年前はそうした剣と魔法の世界があった。日本で忍者や侍がいなくなったみたいに、海外でも剣と魔法がなくなっただけだ。
その日にボクは彼女とは別れた。
元よりこの女はボクの実家の財産目当てで近付いてきただけだ。
ボクも見た目が可愛いからいいかと、アクセサリーのつもりで付き合っていた。
愛など最初から無かったし、清い関係だったので大きな変化はない。
多少縋られて面倒だったが、最後には金しか取り柄がないくせにと罵倒され、頬を全力で叩かれて終わった。
ボクは仕事熱心になった。
これまでも真面目さだけは唯一の取り柄だったが、今は野心が芽生えている。それだけで恐ろしく成果が出た。
どうしても魔王の棺が欲しくて、手段を選ばず権力者に近付き、すり寄り、立場を築いていった。
大手企業経営者の父を持った事に、この時初めて感謝した。
□□□
十年経った。
その十年で稼げた金額では、魔王の棺の所有者にはなれなかった。
当然だ。歴史的な世界の財産なんだ。個人がどうこうできるものではない。
しかしボクは、あらゆるコネと金を使い、一時間の魔王との面会が認められた。
今までの努力が実った瞬間だった。
それで何をしたかって?
屍姦だ。
ただ、勘違いしないで欲しい。
まだ魔王は生きているのだ。だから正確には睡眠姦だ。
どっちでも外道なのは変わらないが。
ボクはこの十年、死に物狂いで働きながら、魔王について研究した。
どんな生物も死ねば必ず遺体が朽ちる。たとえ魔王であっても。
だがこの肉体は今でも美しさを保っていて、眠っているように見える。
実際、これは眠っているだけなのだ。
眠りから解放する手段は、王子様のキスなんかではなく、性交だった。
人間が酸素を全身に巡らせて生きているみたいに、魔王は魔力をずっと体内に巡らせている。
眠っている間、その魔力が外に出ないように封印が施されているそうだ。
その封印を解く、溶解液の役割が新鮮な精液ということらしい。
口内射精だと目覚めても変な所に入って呼吸困難になったら困るし……なんて言い訳をしながらボクはアナルセックスを選択した。
見苦しい理由をつけてでも、十年越しの想いを遂げるくらい許して欲しい。
封印を解いた後の事なんてどうでも良かった。
ボクが惨たらしい最期を迎えようとも、世界が滅びようとも構わない。
こじらせた気色悪い童貞に犯される魔王が一番可哀想だが、わかっていても今更やめられない。
やめる気があるなら、最初からここまでの努力はしていないんだ。
監視カメラの映像もすり替えたし、警備員には金で一時間いなくなってもらった。
誰にも邪魔をされない一人の空間で、棺の蓋を丁寧に外す。
そこに横たわる魔王は、十年前に見たままの姿だった。
黒の長い髪。片方が欠けた大きな角。高い鼻。長い睫毛。形の整った唇。
その美しさは決して女性的なものでなく、男性特有の精悍さが際立っている。
自分の事を同性愛者だと思ったことはなかったが、魔王を初めて見た瞬間から劣情を抱いた。
十年前のボクは、自分の欲望を否定する気は一切起きなかった。
そして今、その本懐を遂げようとしている。
ボクは準備した簡易マットレスを棺の横に配置し、魔王を傷付けないように抱き上げ、そこに運ぶ。
とても重いが、あの魔王に触れているという実感で想像以上の力が出せた。
明日もボクが生きていられたら、しばらく筋肉痛になりそうだけど。
黒を基調としたシルクのような手触りのローブを丁寧に脱がしていく。
本当は色々と見分したい所だが、時間が限られている。
余計な思考は排除して、魔王を裸にした。
彫刻のように整った筋肉が全身についていて、思わず感嘆の溜息が零れてしまう。
ボクは慌てて意識を切り替え、アナル用のローションを取り出した。
ボトルの口が細長くなっているので、アナルに直接注入できる。
力なく横たわっている魔王の腰の下に、圧縮袋から出したクッションを潜り込ませた。
こうした方が挿入しやすいとネットに書いてあった。童貞だから真偽はわからない。
魔王の両膝を立て、左右に広げてその中心を露わにした。
ひとまず周りにローションを塗り、指でマッサージしていく。
指先が中に入りそうだと思ったら、ボトルの先端を差し込んで、液体を惜しげもなく注いだ。
これでひとまずは摩擦で傷付けるという事はなさそうで安心した。
性行為というより、完全に作業だ。
ゆっくり指を一本出し入れして、もう一本増やし、大丈夫そうになったら、極細のディルドを挿入する。
指で届かない範囲も少しずつ広げていく。
用意した三段階の太さのディルドを、着実に中に埋め込んでいく。
余計な力が入っていないお陰で、自分のペニスほどの太さのディルドも挿入できた。
出し入れしても問題なさそうだったので、ディルドを抜き取り、いざ本番となった。
緊張や罪悪感で勃起しなかったらどうしよう、なんて思っていたが、問題なくガチガチになっている。
作業だなんて自分に言い聞かせながら、ボクは確かに興奮していたんだ。
ボクは自分のペニスを握り、魔王のアナルへ押し込む。
すんなりと全体が中に納まった。
当たり前だが、なんの反応もない。
これはただ肉の筒に突っ込んでいるだけといった感じだ。
オナホの方が快楽を追求して作られているのだから、正直圧倒的にオナホの方が気持ちが良いと思った。
それでも、そこそこの圧がペニス全体を包んでいれば射精できない事もない。
余計なことは考えずに、肉棒に感じる快感だけを追った。
「はぁ、はぁ……く、うッ!」
数分後、感慨らしい感慨もない童貞卒業である。
ボクは無事に魔王の腸内に射精できた。
だが、何か起きる様子もなく、やはり眉唾情報だったんだと妙に納得していた。
警備が戻るまであと10分を切っていて、清めて棺に戻すにもギリギリだと思った。
このまま屍姦した犯罪者として逮捕されるのもアリかもしれない。
目的を達成して、燃え尽き症候群のようになっていた。
しかし、突如事態は一変した。
「……子豚?」
いつの間にか目を開いていた魔王が、ボクを見てそう言った。
子豚。そう、ボクの見た目はよく子豚と形容されていた。
太っていて、鼻が上向きで、口先が尖っていて、目も小さい。
身長だって中学から伸びることはなく、154cmしかなかった。
魔王を十人中十人が『美しい』と言うとしたら、ボクは十人中十人が『不細工だ』と言う容姿だ。
時代の違う存在にすら、豚と言われる事実は少し面白かった。
「ぼ、ぼ、ボクは……貴方を……目覚めさせた……豚だ」
まさか本当に魔王が目覚めて、言葉を交わせるなんて思わなくて声が震えた。
人生で今が一番幸せだ。死ぬなら今がいい。
「どれくらい経っている?」
「えっ、あ、あの……ま、魔王が勇者に討伐されてから千年ちょっと」
「ここはどこだ?」
「日本……博物館の保管所。毎年保管の国は変わる……今年は十年ぶりに日本に来た」
「どうやって封印の解き方を知った?」
「せ、世界中の歴史や、魔術について勉強した、から……?」
「それを実行できるだけの権力もあると?」
「ある……し、お金も……ある」
もう私財はゼロになったけど。
死ぬつもりだったから、もう何もかも必要ないのだ。
それでもまた稼げと言われれば稼げる自信はあるし、魔王のためならなんでもできる気がした。
「そうか……合格だよ、子豚ちゃん」
「ご、うかく?」
「余の保護者の資格が、子豚ちゃんにはある」
「ほ、ほ、保護者……ってなに」
「言葉通り、余を監視し、保護し、共にいる者だよ」
共にいる。
魔王の側にいても良いということだろうか。
「余と二人で暮らさないか」
ボクを見上げ、手を差し出す魔王。
まだボクは魔王の中に入ったままだし、魔王は脚を広げて仰向けに倒れているままだ。
そんな中、天気の話をするくらいの気軽さで、いきなり同棲の提案をされた。
ボクは無意識にその手を握ろうとしたが、手汗やローションで濡れている事に気付いて手を引いた。
慌てて脇に置いてある荷物からウェットティッシュを取り出す。
その様子に魔王は驚いて固まっている。
「ご、ごめん、もうちょっと待って」
「く、ふふ……ああ、構わないよ」
空気が読めないヤツだと笑われたのだろうか。それでも構わない。
指を一本一本綺麗に拭いて、手のひらも、甲も、何枚もシートを使って清めた。
「お待たせ……よろ、よろしく、お願いします」
「ははは、礼儀は大切だね。ふふ、よろしくお願いします」
手を握った刹那。
ボクは見知らぬ草原に立っていた。
衣服は普段着ているスーツをしっかりと着込んで、情事の痕跡はない。
手に温かさを感じて、その方向を向けば魔王がいた。
魔王はこちらを見て微笑んでいる。
立っていると魔王はとても背が高いので、ボクは顔を見る度に首が痛くなりそうだ。
「子豚ちゃん、あそこが余の家だよ」
魔王が指で示した先には、レンガ造りの一軒家と、畑に井戸。鶏小屋がある。
こんな広い草原にポツリと存在する家と庭。
ボクは、ここが日本に存在するはずのない空間という事だけは理解していた。
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