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第4章 棋士の立場
第64話 カラスがタイトルホルダーと対戦したら(その3)
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「お待たせしました」
解説兼立会人を務める守口敏内九段が対局する場に姿を現した。
「守口先生…」
読み上げの岡田女流二段が困ったような顔をしていたが、守口が「うん、大丈夫」と声をかけると、ホッとしたような表情になった。
守口が盤面とモニターを確認する。間違いなく千日手だ。
「同一局面4回ですので千日手です。佐藤さんはよろしいですか?」
「はい」
佐藤叡王はしっかりうなずいた。
「クロさんは千日手ってのは分かりますか?」
守口の言葉が分かるのか、クロは「カア」と鳴く。
それに合わせて鈴香も「大丈夫だと思います」とうなずいた。
「ネットの対局でも千日手は足りましたし、私とじいちゃん…っと、祖父との対局でも千日手があったので」
「ふむ」
そこまで聞いた守口が判定を下す。
「この七番勝負で千日手に対する規定はありませんが、通常の対局ですと先手と後手とを入れ替えての指し直しとなります」
佐藤と鈴香は「はい」と返事をしつつうなずく。
クロは顔を左右に傾けていた。
「指し直しするとして、佐藤さんはどうですか?」
「問題ありません」
「鈴香さんとクロさんはどうですか?」
鈴香はクロの頭を撫でつつ、「もう一局だって、どう?」と聞いた。
クロは羽ばたきながら「クワッ」と元気良く鳴いた。
「良いみたいです」
2人と1羽から確認を取った守口はスタッフと話し合う。
「ええ、指し直しで行きましょう」
引き分けで終わってしまうよりは指し直しで決着がつく方が盛り上がりが期待できるため、スタッフも乗り気だった。
「しかし時間が…」
「それはこっちで何とかしましょう」
放送時間が伸びてしまうことに対しては、何人かのスタッフが電話をかけたり調整に走って行ったりした。
守口が盤の傍に戻ってくる。
「聞こえていたかもしれませんが、指し直しと決まりました」
鈴香と佐藤は「はい」と応え、クロも「クワッ」と鳴いた。
「通常の規定に従って、30分の休憩を挟みます。その後に先手と後手を入れ替えて対局となりますので、その時は今と反対側に座ってください」
説明が終わると、守口は解説室に戻っていく。
視聴者に向けた説明を収録する必要があるからだ。
「それじゃあ、ありがとうございました」
「あ、はい、ありがとうございました」
「クワクワア」
先に佐藤が頭を下げると、鈴香とクロも頭を下げた。
「お疲れー」
「お疲れ様」
「2人ともお疲れ」
控室に戻った鈴香とクロを祖父の馬場らが出迎える。
鈴香にはジュースが差し出された。
「クロ、食べる?」
クロには歩美がチーズを差し出した。
クロはチーズを咥えるとおいしそうに食べる。2つ、3つと食べたところで、鈴香からストップが入った。
「クロ、あんまり食べ過ぎると駄目だよ」
「クワア」
クロがうなだれた様子を見せたことで皆が笑顔になる。
「クロは千日手の経験はあるの?」
朝草将棋クラブの席主である大升が尋ねる。
「指したことはないけど、見たことはあるから」
「そうか、なら大丈夫だな」
「どっちにしても先手と後手が入れ替わるだけだしね」
クラブの常連である佐倉も言葉を添える。
しかし鈴香は不安そうな顔を見せる。
「でも佐藤先生は先手番にどんな作戦を用意しているのかなあ」
皆が「うーん」と悩ましそうな顔になる。
「まあ、クロに任せるしかないんだけどね」
佐倉が「そりゃそうだ」と軽口を叩いたことで、再び部屋の雰囲気が明るくなった。
「じゃあ、そろそろ行くね」
「クワッ」
「鈴香ちゃん、クロ、頑張ってー」
歩美を皮切りに皆が応援の言葉をかける。
鈴香は手を振って、クロも片方の翼を上げて控室を出て行った。
解説兼立会人を務める守口敏内九段が対局する場に姿を現した。
「守口先生…」
読み上げの岡田女流二段が困ったような顔をしていたが、守口が「うん、大丈夫」と声をかけると、ホッとしたような表情になった。
守口が盤面とモニターを確認する。間違いなく千日手だ。
「同一局面4回ですので千日手です。佐藤さんはよろしいですか?」
「はい」
佐藤叡王はしっかりうなずいた。
「クロさんは千日手ってのは分かりますか?」
守口の言葉が分かるのか、クロは「カア」と鳴く。
それに合わせて鈴香も「大丈夫だと思います」とうなずいた。
「ネットの対局でも千日手は足りましたし、私とじいちゃん…っと、祖父との対局でも千日手があったので」
「ふむ」
そこまで聞いた守口が判定を下す。
「この七番勝負で千日手に対する規定はありませんが、通常の対局ですと先手と後手とを入れ替えての指し直しとなります」
佐藤と鈴香は「はい」と返事をしつつうなずく。
クロは顔を左右に傾けていた。
「指し直しするとして、佐藤さんはどうですか?」
「問題ありません」
「鈴香さんとクロさんはどうですか?」
鈴香はクロの頭を撫でつつ、「もう一局だって、どう?」と聞いた。
クロは羽ばたきながら「クワッ」と元気良く鳴いた。
「良いみたいです」
2人と1羽から確認を取った守口はスタッフと話し合う。
「ええ、指し直しで行きましょう」
引き分けで終わってしまうよりは指し直しで決着がつく方が盛り上がりが期待できるため、スタッフも乗り気だった。
「しかし時間が…」
「それはこっちで何とかしましょう」
放送時間が伸びてしまうことに対しては、何人かのスタッフが電話をかけたり調整に走って行ったりした。
守口が盤の傍に戻ってくる。
「聞こえていたかもしれませんが、指し直しと決まりました」
鈴香と佐藤は「はい」と応え、クロも「クワッ」と鳴いた。
「通常の規定に従って、30分の休憩を挟みます。その後に先手と後手を入れ替えて対局となりますので、その時は今と反対側に座ってください」
説明が終わると、守口は解説室に戻っていく。
視聴者に向けた説明を収録する必要があるからだ。
「それじゃあ、ありがとうございました」
「あ、はい、ありがとうございました」
「クワクワア」
先に佐藤が頭を下げると、鈴香とクロも頭を下げた。
「お疲れー」
「お疲れ様」
「2人ともお疲れ」
控室に戻った鈴香とクロを祖父の馬場らが出迎える。
鈴香にはジュースが差し出された。
「クロ、食べる?」
クロには歩美がチーズを差し出した。
クロはチーズを咥えるとおいしそうに食べる。2つ、3つと食べたところで、鈴香からストップが入った。
「クロ、あんまり食べ過ぎると駄目だよ」
「クワア」
クロがうなだれた様子を見せたことで皆が笑顔になる。
「クロは千日手の経験はあるの?」
朝草将棋クラブの席主である大升が尋ねる。
「指したことはないけど、見たことはあるから」
「そうか、なら大丈夫だな」
「どっちにしても先手と後手が入れ替わるだけだしね」
クラブの常連である佐倉も言葉を添える。
しかし鈴香は不安そうな顔を見せる。
「でも佐藤先生は先手番にどんな作戦を用意しているのかなあ」
皆が「うーん」と悩ましそうな顔になる。
「まあ、クロに任せるしかないんだけどね」
佐倉が「そりゃそうだ」と軽口を叩いたことで、再び部屋の雰囲気が明るくなった。
「じゃあ、そろそろ行くね」
「クワッ」
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