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第6章 史上最強の棋士
第105話 カラスの負け将棋を棋士が研究したら(その1)
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「壬生先生が勝ったか…」
Hamabe TVのネット中継を見ていた辻井孝太はモニターから目をそらした。
クロに宣言勝ちしたことは棋士づたいに聞いていたし、その棋譜も日本将棋協会から送られていた。しかし実際の対局風景を見て得られるものがある。
辻井はパソコンで棋譜を再現していく。
「相振り飛車かあ」
後手となった壬生善元九段が、クロの先手番に対して、どう戦うかには興味があった。
「もし自分なら…」
辻井は基本的に居飛車党だ。
奨励会時代に、香落ちなどを中心に振り飛車を指したことがあったものの、今ひとつ感覚が合わなかった。
と言って、振り飛車を全く考慮していな訳ではない。
ある種の可能性はあると思っているし、いつか振り飛車を指すことがあるかもしれない。
「自分なら相掛かりか、それとも角換わりか…」
その後も序盤から中盤を並べていく。
「ここは…だめだな」
「こうすると、難しいか」
「ここも…だめか」
クロ陣にも壬生陣にも隙がありそうに思えるが、深く読んでいくとなかなか難しい。
「うーん、まだ互角か」
将棋ソフトの形勢判断も、ほぼ互角から外れていないまま、ずっと続いている。
「これを数分で指し続けるんだからなあ…」
辻井はモニターに棋譜を映した。
指し手の横に考慮時間を記してある。
先手のクロの指し手の横には時折1分とある。
これまでの動画を見ても、クロが1分前後で指しているのは同じ。ごくまれに2分考えることがあるくらい。
第6局の棋譜でも1カ所2分とあるだけだ。
一方、後手の壬生九段も1分、2分が大半で、3分を超えることすら珍しい。
持ち時間を追いかけながら指し手を進めて行くと、両対局者の思考を追っているような感覚になる。
「ここで2分か…」
クロが2分考えたところで、棋譜を止める。
中盤の難所で、持ち時間があれば何時間でも考えたい局面。
「自分なら…」
辻井は思考をめぐらせた。
10秒…20秒…30秒…1分、そして2分。
2分で読めるところまで読んでいく。
実際のクロがどんな手順を考えたかは分からないが、クロの指し手とは異なっていた。
「この手では…互角か」
辻井の指し手を将棋ソフトに判定させる。
クロの手とどっこいどっこいの数値を示した。つまり辻井の考えた手もソフトの判断によれば、悪い手では無いということ。
「まあ、これも一局か…」
簡単に優劣の出にくい局面。
クロとの読み合いで負けていないことを示している。
その後もクロと壬生の指し手を辻井は一手一手追っていく。
そして入玉が視野に入った局面となる。
「おそらく壬生先生は、ここで入玉を考えたはず。自分なら…」
あくまで入玉を阻止するのも1局。
逆に相入玉を目指しても良さそうだ。
「さて…」
辻井がクロと同じように1分かけて考えた手は、クロが指した手とは違っていた。
将棋ソフトに判断させると、わずかに辻井の方が良い。
それでも壬生が入玉するのを阻止するのは難しそうだ。
「そうなると相入玉で差し直しが再選か…」
その後も辻井は研究を進めて行く。
しかし、はっきりクロ良し、もしくは壬生良しとなる局面は出なかった。
「どうするかな…」
辻井は来たるべき7局目に備えて考え始めた。
Hamabe TVのネット中継を見ていた辻井孝太はモニターから目をそらした。
クロに宣言勝ちしたことは棋士づたいに聞いていたし、その棋譜も日本将棋協会から送られていた。しかし実際の対局風景を見て得られるものがある。
辻井はパソコンで棋譜を再現していく。
「相振り飛車かあ」
後手となった壬生善元九段が、クロの先手番に対して、どう戦うかには興味があった。
「もし自分なら…」
辻井は基本的に居飛車党だ。
奨励会時代に、香落ちなどを中心に振り飛車を指したことがあったものの、今ひとつ感覚が合わなかった。
と言って、振り飛車を全く考慮していな訳ではない。
ある種の可能性はあると思っているし、いつか振り飛車を指すことがあるかもしれない。
「自分なら相掛かりか、それとも角換わりか…」
その後も序盤から中盤を並べていく。
「ここは…だめだな」
「こうすると、難しいか」
「ここも…だめか」
クロ陣にも壬生陣にも隙がありそうに思えるが、深く読んでいくとなかなか難しい。
「うーん、まだ互角か」
将棋ソフトの形勢判断も、ほぼ互角から外れていないまま、ずっと続いている。
「これを数分で指し続けるんだからなあ…」
辻井はモニターに棋譜を映した。
指し手の横に考慮時間を記してある。
先手のクロの指し手の横には時折1分とある。
これまでの動画を見ても、クロが1分前後で指しているのは同じ。ごくまれに2分考えることがあるくらい。
第6局の棋譜でも1カ所2分とあるだけだ。
一方、後手の壬生九段も1分、2分が大半で、3分を超えることすら珍しい。
持ち時間を追いかけながら指し手を進めて行くと、両対局者の思考を追っているような感覚になる。
「ここで2分か…」
クロが2分考えたところで、棋譜を止める。
中盤の難所で、持ち時間があれば何時間でも考えたい局面。
「自分なら…」
辻井は思考をめぐらせた。
10秒…20秒…30秒…1分、そして2分。
2分で読めるところまで読んでいく。
実際のクロがどんな手順を考えたかは分からないが、クロの指し手とは異なっていた。
「この手では…互角か」
辻井の指し手を将棋ソフトに判定させる。
クロの手とどっこいどっこいの数値を示した。つまり辻井の考えた手もソフトの判断によれば、悪い手では無いということ。
「まあ、これも一局か…」
簡単に優劣の出にくい局面。
クロとの読み合いで負けていないことを示している。
その後もクロと壬生の指し手を辻井は一手一手追っていく。
そして入玉が視野に入った局面となる。
「おそらく壬生先生は、ここで入玉を考えたはず。自分なら…」
あくまで入玉を阻止するのも1局。
逆に相入玉を目指しても良さそうだ。
「さて…」
辻井がクロと同じように1分かけて考えた手は、クロが指した手とは違っていた。
将棋ソフトに判断させると、わずかに辻井の方が良い。
それでも壬生が入玉するのを阻止するのは難しそうだ。
「そうなると相入玉で差し直しが再選か…」
その後も辻井は研究を進めて行く。
しかし、はっきりクロ良し、もしくは壬生良しとなる局面は出なかった。
「どうするかな…」
辻井は来たるべき7局目に備えて考え始めた。
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