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第6章 史上最強の棋士
第108話 カラスがまたタイトル戦を観戦したら(その1)
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「じいちゃーん、形勢はどう?」
鈴香が祖父である|馬場敬一(ばば けいいち)のいる居間に飛び込んできた。
クロが「クワッ!」とうれしそうに鳴く。
「鈴ちゃん!」
鈴香の祖母が睨むと、鈴香は「はーい」と返事をして、手を洗いに洗面所に向かう。
その後にパタパタと足音がして、再び鈴香が戻って来た。
「うーん、難しいところだな」
馬場がネット中継を見ながら、難しい顔で腕組みしている。
映っているのは王座戦五番勝負の第5局。
辻井孝太王座に挑戦者の佐藤巧叡王が挑んでいる。
勝敗はここまで2勝2敗。つまりどっちが勝っても決着がつく。
タイトルホルダーである辻井王座が勝てば、7冠を堅持することになる。
挑戦者の佐藤叡王が勝てば、叡王と合わせて自身初の二冠だ。
「鈴香はどっちを応援してる?」
馬場に聞かれて鈴香は「うーん」と悩む。
「辻井七冠に勝って欲しいと思うけど…」
「けど?」
「佐藤先生にも頑張って欲しいな」
「そうだね」
鈴香が将棋盤と駒を持って来る。
「ねえ、最初から並べてもいい?」
「ああ」
鈴香に付き合って馬場も駒を並べる。
駒を縄辺終わった頃、祖母がジュースとお菓子を運んできた。
「おばあちゃん、ありがと」
「クワア」
鈴香とクロに祖母は「いえいえ、どういたしまして」と応じた。
「じゃあ、お願いしまーす」
「うん、お願いします」
「カア」
その後は馬場が棋譜を読み上げて、鈴香が一手一手駒を動かして行く。
クロは盤の側で、鈴香が手を動かすさまを眺めている。
先手が佐藤、後手が辻井。
「相掛かりだな」
「うん、もう難しいよー」
そうとう深く研究しているだろうことは、馬場にも鈴香にも分かる。
完全に理解するのは不可能だろうが、少しでも近づくために棋譜並べは有力な勉強方法のひとつだ。
「で、8六飛車」
「えーっ!」
飛車交換を狙った佐藤の大胆な手に鈴香が声を上げた。
「こんな手があるのー!?」
中継を見ていた馬場も同じようなことを思ったのを思い出す。
鈴香が「うーん」と考え込む。
無意識のうちに盤上で右手の人差し指をちょこちょこと動かした。
まるで先日のクロとの対局で壬生善元九段がしていたように。
「佐藤先生が指したんだから、ある手なんだろうけど…」
馬場が「どうだ?」と聞くものの、鈴香の表情は晴れない。
「分かんないよー」
鈴香が髪をクシャクシャとしたところで、クロが「クワア」と鳴いた。
「クロは分かる?」
鈴香が尋ねるものの、クロは頭を傾げて見返すばかりだった。
鈴香が祖父である|馬場敬一(ばば けいいち)のいる居間に飛び込んできた。
クロが「クワッ!」とうれしそうに鳴く。
「鈴ちゃん!」
鈴香の祖母が睨むと、鈴香は「はーい」と返事をして、手を洗いに洗面所に向かう。
その後にパタパタと足音がして、再び鈴香が戻って来た。
「うーん、難しいところだな」
馬場がネット中継を見ながら、難しい顔で腕組みしている。
映っているのは王座戦五番勝負の第5局。
辻井孝太王座に挑戦者の佐藤巧叡王が挑んでいる。
勝敗はここまで2勝2敗。つまりどっちが勝っても決着がつく。
タイトルホルダーである辻井王座が勝てば、7冠を堅持することになる。
挑戦者の佐藤叡王が勝てば、叡王と合わせて自身初の二冠だ。
「鈴香はどっちを応援してる?」
馬場に聞かれて鈴香は「うーん」と悩む。
「辻井七冠に勝って欲しいと思うけど…」
「けど?」
「佐藤先生にも頑張って欲しいな」
「そうだね」
鈴香が将棋盤と駒を持って来る。
「ねえ、最初から並べてもいい?」
「ああ」
鈴香に付き合って馬場も駒を並べる。
駒を縄辺終わった頃、祖母がジュースとお菓子を運んできた。
「おばあちゃん、ありがと」
「クワア」
鈴香とクロに祖母は「いえいえ、どういたしまして」と応じた。
「じゃあ、お願いしまーす」
「うん、お願いします」
「カア」
その後は馬場が棋譜を読み上げて、鈴香が一手一手駒を動かして行く。
クロは盤の側で、鈴香が手を動かすさまを眺めている。
先手が佐藤、後手が辻井。
「相掛かりだな」
「うん、もう難しいよー」
そうとう深く研究しているだろうことは、馬場にも鈴香にも分かる。
完全に理解するのは不可能だろうが、少しでも近づくために棋譜並べは有力な勉強方法のひとつだ。
「で、8六飛車」
「えーっ!」
飛車交換を狙った佐藤の大胆な手に鈴香が声を上げた。
「こんな手があるのー!?」
中継を見ていた馬場も同じようなことを思ったのを思い出す。
鈴香が「うーん」と考え込む。
無意識のうちに盤上で右手の人差し指をちょこちょこと動かした。
まるで先日のクロとの対局で壬生善元九段がしていたように。
「佐藤先生が指したんだから、ある手なんだろうけど…」
馬場が「どうだ?」と聞くものの、鈴香の表情は晴れない。
「分かんないよー」
鈴香が髪をクシャクシャとしたところで、クロが「クワア」と鳴いた。
「クロは分かる?」
鈴香が尋ねるものの、クロは頭を傾げて見返すばかりだった。
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