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第1章 将棋を指すカラス
第5局 カラスがネット動画に出たら
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画面の真ん中に立った橋田が「皆さん、こんにちは、バシバシの将棋実況です」と挨拶して一礼する。
「今日はゲストとの対局を将棋ファンの皆さんにご覧いただきたいと思います」
そう言ってゲストの4人、正確には3人と1羽を呼んだ。
「まずはアマチュア強豪の佐倉さん。今日の対局者を私に紹介してくれた方です」
佐倉が軽く頭を下げる。
「今日の対局者について、佐倉さんも何度か対局したと聞いていますが、率直な感想はいかがですか?」
「第一印象を正直言えば『ま!さ!か!』ですね」
「そうですね。私は『ま!まさか!』でした」
橋田と佐倉が笑う。
すぐに佐倉が真顔になる。
「しかし強いことは強いです」
橋田も大きくうなずく
次に橋田は馬場を紹介した。
「こちらは佐倉さんの知り合いで朝草将棋クラブの常連。さらに何度も全国大会出場の経験がある馬場さんです」
馬場が頭を下げる。
「馬場さんはアマ四段の力量ですよね。馬場さんの第一印象はどうでしたか?」
「いやー、私も『まさか』でした」
3人が笑う。
「最初に負けたのが馬場さんと聞きましたが」
馬場が「そうなんです」と答える。
「いつの間にか将棋を覚えたようで、あれよあれよという間に負けていました。その次の対局も負けましたし、その後も一度も勝てていません」
「そうなんですね」
その次に橋田は少女を呼び寄せる。
「そして今日の対局者…」
ここで橋田は数秒ためた後、「…の飼い主である角野鈴香ちゃんです」と続けた。
「よろしくお願いします」
いくらか緊張した面持ちの鈴香が頭を下げる。
「馬場さんのお孫さんにあたるのですが、そんな鈴香ちゃんも将棋を指すんですよね」
「はい!」
「どのくらい?」
「この前、おじいちゃんに二段くらいって。で、この前、橋田先生にも飛車落ちで何とか勝てました!」
そう言いながら右手でブイサインを出す。
「はい、負けました!」
鈴香に橋田もテンションを合わせる。
「鈴香ちゃんは棋士を目指してるの?」
「はい!いつか辻井八冠に勝ちたいです!」
「おおぅ!」
威勢の良い鈴香の言葉を聞いて、橋田がちょっとのけぞった。
「私も勝ちたいなあ…」
そう嘆く橋田を鈴香が励ます。
「一緒に頑張りましょう!」
「…だね」
「さて…」
橋田が声を改めると、鈴香が鳥かごを前に出す。
「今日の対局者。カラスのクロ君です。1歳とちょっとかな?」
鈴香がうなずく。そして呼ばれたことが分かったのか、クロが「クワッ」と鳴く。
「ええ、皆さんがご覧の通り、鳥のカラスです。『カラスが将棋を?』と思うでしょう。『強いの?』とも。実は昨日、私もクロと2局指して負けてるんです。ええ、2局とも負けました。大事なことなので2度言います。2連敗です」
橋田は苦笑交じりで紹介する。
「動画を見ている人の中には『カラスを飼ってもいいの?』と思う人もいるでしょう」
続けて橋田が説明する。
「クロはケガをしたことで、馬場さんらによって保護されました。その後、ケガの治療は済んだものの、満足に飛べない状態となったため、許可を得て飼っているんです」
クロが「そうだよ」と言わんばかりに「クワッ」と鳴く
「で、ちゃーんと皆さんに紹介しようと考えて、今回の対局動画にしてみました。この橋田勝吾とクロとの将棋。しっかりと目を見開いてご覧ください」
橋田が礼をすると画面が切り替わった。
橋田と鈴香が将棋盤を挟んで向かい合って座っている。もちろんクロは鈴香の膝の上。
きれいに並んだ駒から、橋田は5枚の歩を取ると、両手で包むようにして振る。カチャカチャ音がするくらい何度か振った後、パッと盤上に広げた。
これは先手と後手を決める振り駒だ。地方を回って行われる将棋のタイトル戦では、絹布を広げた上でゲストや記録係が駒を振ることが多い。しかし仲間内で対局を行う時などは上手側が駒を振るのが通例。
盤上に広がった5枚の駒は「歩」が3つ、「と」が2つとなった。通常、こうした場合は上位者、つまり橋田が先手となる。
「私が先手ですね」
「はい」
橋田が5枚の歩を並べ直す。
ひと呼吸おいて、橋田と鈴香が「よろしくお願いします」と頭を下げる。ほぼ同時にクロも「クワア」と鳴いてお辞儀した。
画面が切り替わる。中央に将棋盤を真上から映したもの、左右に橋田と鈴香アンドクロが指している様子が映る。
ピシッ
橋田が飛車先の歩を突いた。
コトッ
クロが角道を開けた。
パチリ
カタン
パシッ
コトン
数手の後、クロは左から3番目の筋に飛車を移動した。先日、佐倉が指した三間飛車だ。
「むぅ」
少し考えて、橋田が玉を左側に移動させる。
クロも玉を飛車と反対の右側に持っていく。
双方が打ち合わせたわけでもないが、どちらも穴熊に囲った。
先日、クロと佐倉の対局ではクロが居飛車穴熊、佐倉が三間飛車穴熊だった。これをひっくり返した格好だ。
「これは勉強させてもらわないと」
少し離れたところから観戦している佐倉がつぶやいた。
その後、慎重な駒組が続く。
橋田もクロも金銀4枚で穴熊を固めた後に、飛車や角をこまめに動かして間合いを探る。
橋田が飛車を真ん中の5筋に移動させたところで、クロがちょっと頭を傾けた。
直後に「クワッ」と鳴いて、端の歩を前に動かす。
その歩を橋田は取る。
クロはさらに横の歩を前に出す。
その歩をまたも橋田が取る。
開戦は歩の突き捨てから
そんな将棋の格言がある。歩を相手に取らせることで一時的に駒を損するものの、敵陣を乱しつつ自分の攻め駒をスムーズに進める意図がある。
格言に沿ったように、クロの飛車、角、桂が躍動した。
駒得した橋田はクロの攻めを防ぎつつ、反撃のチャンスを狙う。
「橋田陣に隙があったようには見えないけどなあ」
佐倉が考え込む。
「クロが有利なの?」
馬場の問いに佐倉が「うん、いくらか指しやすい…と思う」と答えた。
パチリ
コツン
パシッ
トンッ
互いの飛車と角を交換したが、クロの方だけ桂馬がさばけた格好となっている。
当然のことながら、その分はっきり形勢がクロ有利となった。
「こうなると逆転は難しいだろうなあ」
先日からのクロの対局をひと通り見てきた佐倉がつぶやく。
「じゃあ、バシバシさんに3連勝だ」
そう言う馬場はもちろん、佐倉の心境も複雑だった。
クロにも橋田にも頑張って欲しい。2人ともそう考えている。
しかし勝つのは一方のみ。
パチリ
コトン
クロの角成りを見た橋田が大きくため息をついて「負けました」と投了した。
鈴香が「ありがとうございました」と深く礼をすると、クロも「クワッ」と鳴いて頭を下げた。
再度、画面が切り替わる。
橋田と佐倉を中心に将棋ソフトを使いつつ、今回の対局を振り返った。
振り飛車を劣勢に見がちな将棋ソフトの解析では、序盤は振り飛車側、つまりクロの側がちょっと不利な数値を現わしている。しかし双方が穴熊を組み終わったところでは、その差が小さくなっていた。
皆が注目したのは、橋田が飛車を移動させて、クロがちょっと変わった様子を見せた局面。
この手で将棋ソフトの形成判断が振り飛車側、つまりクロの側に傾いた。と言っても、わずかな数字でしかない。
「この手が悪手だったかー」
橋田の嘆きに佐倉が否定する。
「悪手ってほどでもないでしょ。若干の緩手《かんしゅ》くらい」
実際には佐倉の言う通りで、橋田の飛車寄りは決して悪い手ではない。しかし厳しい手や最善手でもない。そこをクロが厳しくとがめた形。
さらに差し手を進めて、飛車と角を交換した局面では、クロの方が1000点くらいのリードとなっている。
「こうなると逆転は無理か…」
その後の手順を追ったが、クロの指し手は最善手や次善手ばかりで、逆転どころか互角に戻るような場面もない。
終盤に連発した橋田の勝負手にも、クロは的確に応じていた。
最後は投了図から橋田玉の詰みまでを解説した。
その後、朝草将棋クラブで橋田とクロが指した2局を解説する。
橋田にとっては都合3連敗ながら、「次こそは勝ちます!」と笑顔を欠かさなかった。
「これでクロの実力が皆さんにも分かったかと思います」
画面に向き直った橋田が総括する。
「今後もクロとの対局を続けていきますので、応援投稿、イケテルネボタン、番組登録などなど、よろしくお願いします。クロについての問い合わせは、日本将棋協会や私のところまで。間違っても自宅トツなんてしちゃダメですよ!」
最後に橋田が一礼して番組が終わった。
「お疲れ様ー」
録画を終えた橋田を鈴香が拍手して迎える。
「協力ありがとう。クロもありがとう」
「どういたしまして」なのか、クロも「クワア」と鳴いて応じた。
橋田は佐倉と馬場に向き直る。
「動画は今夜中にはアップします。きっと反響は大きいと思いますよ」
佐倉は「そうだと良いですね」とうなずいた。
「協会…と言うのは?」
馬場の問いに、橋田が「そうそう」と続ける。
「協会の理事や職員にクロのことを話してあります。将棋関連なら協会に窓口になってもらった方が良いでしょう。もっとも、私の話だけでは皆信じていませんでしたけどね」
佐倉も馬場も「ハハッ」と笑う。
「でも、この動画を見たら信じないわけには行きませんよ」
3人が笑いつつ話している一方、鈴香はクロに好物のチーズを食べさせていた。
「今日はゲストとの対局を将棋ファンの皆さんにご覧いただきたいと思います」
そう言ってゲストの4人、正確には3人と1羽を呼んだ。
「まずはアマチュア強豪の佐倉さん。今日の対局者を私に紹介してくれた方です」
佐倉が軽く頭を下げる。
「今日の対局者について、佐倉さんも何度か対局したと聞いていますが、率直な感想はいかがですか?」
「第一印象を正直言えば『ま!さ!か!』ですね」
「そうですね。私は『ま!まさか!』でした」
橋田と佐倉が笑う。
すぐに佐倉が真顔になる。
「しかし強いことは強いです」
橋田も大きくうなずく
次に橋田は馬場を紹介した。
「こちらは佐倉さんの知り合いで朝草将棋クラブの常連。さらに何度も全国大会出場の経験がある馬場さんです」
馬場が頭を下げる。
「馬場さんはアマ四段の力量ですよね。馬場さんの第一印象はどうでしたか?」
「いやー、私も『まさか』でした」
3人が笑う。
「最初に負けたのが馬場さんと聞きましたが」
馬場が「そうなんです」と答える。
「いつの間にか将棋を覚えたようで、あれよあれよという間に負けていました。その次の対局も負けましたし、その後も一度も勝てていません」
「そうなんですね」
その次に橋田は少女を呼び寄せる。
「そして今日の対局者…」
ここで橋田は数秒ためた後、「…の飼い主である角野鈴香ちゃんです」と続けた。
「よろしくお願いします」
いくらか緊張した面持ちの鈴香が頭を下げる。
「馬場さんのお孫さんにあたるのですが、そんな鈴香ちゃんも将棋を指すんですよね」
「はい!」
「どのくらい?」
「この前、おじいちゃんに二段くらいって。で、この前、橋田先生にも飛車落ちで何とか勝てました!」
そう言いながら右手でブイサインを出す。
「はい、負けました!」
鈴香に橋田もテンションを合わせる。
「鈴香ちゃんは棋士を目指してるの?」
「はい!いつか辻井八冠に勝ちたいです!」
「おおぅ!」
威勢の良い鈴香の言葉を聞いて、橋田がちょっとのけぞった。
「私も勝ちたいなあ…」
そう嘆く橋田を鈴香が励ます。
「一緒に頑張りましょう!」
「…だね」
「さて…」
橋田が声を改めると、鈴香が鳥かごを前に出す。
「今日の対局者。カラスのクロ君です。1歳とちょっとかな?」
鈴香がうなずく。そして呼ばれたことが分かったのか、クロが「クワッ」と鳴く。
「ええ、皆さんがご覧の通り、鳥のカラスです。『カラスが将棋を?』と思うでしょう。『強いの?』とも。実は昨日、私もクロと2局指して負けてるんです。ええ、2局とも負けました。大事なことなので2度言います。2連敗です」
橋田は苦笑交じりで紹介する。
「動画を見ている人の中には『カラスを飼ってもいいの?』と思う人もいるでしょう」
続けて橋田が説明する。
「クロはケガをしたことで、馬場さんらによって保護されました。その後、ケガの治療は済んだものの、満足に飛べない状態となったため、許可を得て飼っているんです」
クロが「そうだよ」と言わんばかりに「クワッ」と鳴く
「で、ちゃーんと皆さんに紹介しようと考えて、今回の対局動画にしてみました。この橋田勝吾とクロとの将棋。しっかりと目を見開いてご覧ください」
橋田が礼をすると画面が切り替わった。
橋田と鈴香が将棋盤を挟んで向かい合って座っている。もちろんクロは鈴香の膝の上。
きれいに並んだ駒から、橋田は5枚の歩を取ると、両手で包むようにして振る。カチャカチャ音がするくらい何度か振った後、パッと盤上に広げた。
これは先手と後手を決める振り駒だ。地方を回って行われる将棋のタイトル戦では、絹布を広げた上でゲストや記録係が駒を振ることが多い。しかし仲間内で対局を行う時などは上手側が駒を振るのが通例。
盤上に広がった5枚の駒は「歩」が3つ、「と」が2つとなった。通常、こうした場合は上位者、つまり橋田が先手となる。
「私が先手ですね」
「はい」
橋田が5枚の歩を並べ直す。
ひと呼吸おいて、橋田と鈴香が「よろしくお願いします」と頭を下げる。ほぼ同時にクロも「クワア」と鳴いてお辞儀した。
画面が切り替わる。中央に将棋盤を真上から映したもの、左右に橋田と鈴香アンドクロが指している様子が映る。
ピシッ
橋田が飛車先の歩を突いた。
コトッ
クロが角道を開けた。
パチリ
カタン
パシッ
コトン
数手の後、クロは左から3番目の筋に飛車を移動した。先日、佐倉が指した三間飛車だ。
「むぅ」
少し考えて、橋田が玉を左側に移動させる。
クロも玉を飛車と反対の右側に持っていく。
双方が打ち合わせたわけでもないが、どちらも穴熊に囲った。
先日、クロと佐倉の対局ではクロが居飛車穴熊、佐倉が三間飛車穴熊だった。これをひっくり返した格好だ。
「これは勉強させてもらわないと」
少し離れたところから観戦している佐倉がつぶやいた。
その後、慎重な駒組が続く。
橋田もクロも金銀4枚で穴熊を固めた後に、飛車や角をこまめに動かして間合いを探る。
橋田が飛車を真ん中の5筋に移動させたところで、クロがちょっと頭を傾けた。
直後に「クワッ」と鳴いて、端の歩を前に動かす。
その歩を橋田は取る。
クロはさらに横の歩を前に出す。
その歩をまたも橋田が取る。
開戦は歩の突き捨てから
そんな将棋の格言がある。歩を相手に取らせることで一時的に駒を損するものの、敵陣を乱しつつ自分の攻め駒をスムーズに進める意図がある。
格言に沿ったように、クロの飛車、角、桂が躍動した。
駒得した橋田はクロの攻めを防ぎつつ、反撃のチャンスを狙う。
「橋田陣に隙があったようには見えないけどなあ」
佐倉が考え込む。
「クロが有利なの?」
馬場の問いに佐倉が「うん、いくらか指しやすい…と思う」と答えた。
パチリ
コツン
パシッ
トンッ
互いの飛車と角を交換したが、クロの方だけ桂馬がさばけた格好となっている。
当然のことながら、その分はっきり形勢がクロ有利となった。
「こうなると逆転は難しいだろうなあ」
先日からのクロの対局をひと通り見てきた佐倉がつぶやく。
「じゃあ、バシバシさんに3連勝だ」
そう言う馬場はもちろん、佐倉の心境も複雑だった。
クロにも橋田にも頑張って欲しい。2人ともそう考えている。
しかし勝つのは一方のみ。
パチリ
コトン
クロの角成りを見た橋田が大きくため息をついて「負けました」と投了した。
鈴香が「ありがとうございました」と深く礼をすると、クロも「クワッ」と鳴いて頭を下げた。
再度、画面が切り替わる。
橋田と佐倉を中心に将棋ソフトを使いつつ、今回の対局を振り返った。
振り飛車を劣勢に見がちな将棋ソフトの解析では、序盤は振り飛車側、つまりクロの側がちょっと不利な数値を現わしている。しかし双方が穴熊を組み終わったところでは、その差が小さくなっていた。
皆が注目したのは、橋田が飛車を移動させて、クロがちょっと変わった様子を見せた局面。
この手で将棋ソフトの形成判断が振り飛車側、つまりクロの側に傾いた。と言っても、わずかな数字でしかない。
「この手が悪手だったかー」
橋田の嘆きに佐倉が否定する。
「悪手ってほどでもないでしょ。若干の緩手《かんしゅ》くらい」
実際には佐倉の言う通りで、橋田の飛車寄りは決して悪い手ではない。しかし厳しい手や最善手でもない。そこをクロが厳しくとがめた形。
さらに差し手を進めて、飛車と角を交換した局面では、クロの方が1000点くらいのリードとなっている。
「こうなると逆転は無理か…」
その後の手順を追ったが、クロの指し手は最善手や次善手ばかりで、逆転どころか互角に戻るような場面もない。
終盤に連発した橋田の勝負手にも、クロは的確に応じていた。
最後は投了図から橋田玉の詰みまでを解説した。
その後、朝草将棋クラブで橋田とクロが指した2局を解説する。
橋田にとっては都合3連敗ながら、「次こそは勝ちます!」と笑顔を欠かさなかった。
「これでクロの実力が皆さんにも分かったかと思います」
画面に向き直った橋田が総括する。
「今後もクロとの対局を続けていきますので、応援投稿、イケテルネボタン、番組登録などなど、よろしくお願いします。クロについての問い合わせは、日本将棋協会や私のところまで。間違っても自宅トツなんてしちゃダメですよ!」
最後に橋田が一礼して番組が終わった。
「お疲れ様ー」
録画を終えた橋田を鈴香が拍手して迎える。
「協力ありがとう。クロもありがとう」
「どういたしまして」なのか、クロも「クワア」と鳴いて応じた。
橋田は佐倉と馬場に向き直る。
「動画は今夜中にはアップします。きっと反響は大きいと思いますよ」
佐倉は「そうだと良いですね」とうなずいた。
「協会…と言うのは?」
馬場の問いに、橋田が「そうそう」と続ける。
「協会の理事や職員にクロのことを話してあります。将棋関連なら協会に窓口になってもらった方が良いでしょう。もっとも、私の話だけでは皆信じていませんでしたけどね」
佐倉も馬場も「ハハッ」と笑う。
「でも、この動画を見たら信じないわけには行きませんよ」
3人が笑いつつ話している一方、鈴香はクロに好物のチーズを食べさせていた。
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