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ダメ男製造機。字面だけ見ても明らかに生産性を感じられない、褒めてもいないし、何ならちょっと貶してる感もある。
ダメ男製造機。それは私、吉岡とわ子《よしおか とわこ》に長年の女友達が付けた、不名誉な二つ名だ。
「吉岡、このあとの来客の予定を教えて」
「はい」
相談に来られた方が少しでもリラックスして入室出来るように、入口の扉はガラスになっていて室内の雰囲気が分かる造りになっている事務所。
観葉植物が置かれ、自然光が明るく室内を照らす。
中にはプライバシーがしっかりと守られた相談室があり、万が一に備えて扉は表と裏に二つ、監視カメラも付いている。
駅から歩いて三分。雑居ビルの一室に構えるここは、九ノ瀬法律事務所。
私はそこでパラリーガルをしている。
といっても、弁護士は一人、秘書も居ないここでは、パラリーガルの仕事以外にも秘書や受付も兼ねた業務をこなしている。
やる事は沢山あるけれど、その分しっかり申し分なくお給金を頂いているので文句はない。
「十三時に一件、十五時に一件のご相談の予約が入っています。十五時にいらっしゃる方は、三田先生のご紹介です」
受付のカウンターから離れていても、すぐに確認出来るように、スケジュール管理された自前の手帳を開いて報告をする。
「三田か、あいつ自分も弁護士なのに、何で俺の所にわざわざ紹介してくるんだろうな」
「さぁ……、またこれを口実に、先生に会いに来たいんじゃないですか?」
私の言葉を聞いて、先生は一瞬端正な顔を歪ませた。
九ノ瀬一《ここのせ はじめ》、三十一歳。仕立ての良いスーツを着こなす体躯を持ち、容姿端麗を地でいく男。
黙って書類に目を落とす姿は、まるで映画や雑誌のワンシーンだ。
切れ長の瞳、艶のある黒髪。形の良い唇から綴られる言葉には、全てを任せて信用してみたいと思わせる力があった。
三田先生は、九ノ瀬先生がこの事務所を構える前の職場での同期で、今でも二人には交流がある。
たまに三田先生が私の為にと美味しくて評判のお菓子を手土産に事務所へ来る事があるけれど、あれは絶対に九ノ瀬先生の顔が見たくて来るんだと思っている。
二人はなんやかんやとお互いの事を言うけれど、結局は毎度その夜には飲みに繰り出す。
私もたまに誘われてご一緒させて頂くけれど、顔面偏差値の高い二人が肩を組合い、赤い顔をしてへろへろに笑っている姿は拝みたくもなる。
顔の良い男の側は、パワースポットだ。
それに、この二人の側では安心出来る。
きっと先生なら、絶対に私にダメにされない。
ダメ男製造機。それは私、吉岡とわ子《よしおか とわこ》に長年の女友達が付けた、不名誉な二つ名だ。
「吉岡、このあとの来客の予定を教えて」
「はい」
相談に来られた方が少しでもリラックスして入室出来るように、入口の扉はガラスになっていて室内の雰囲気が分かる造りになっている事務所。
観葉植物が置かれ、自然光が明るく室内を照らす。
中にはプライバシーがしっかりと守られた相談室があり、万が一に備えて扉は表と裏に二つ、監視カメラも付いている。
駅から歩いて三分。雑居ビルの一室に構えるここは、九ノ瀬法律事務所。
私はそこでパラリーガルをしている。
といっても、弁護士は一人、秘書も居ないここでは、パラリーガルの仕事以外にも秘書や受付も兼ねた業務をこなしている。
やる事は沢山あるけれど、その分しっかり申し分なくお給金を頂いているので文句はない。
「十三時に一件、十五時に一件のご相談の予約が入っています。十五時にいらっしゃる方は、三田先生のご紹介です」
受付のカウンターから離れていても、すぐに確認出来るように、スケジュール管理された自前の手帳を開いて報告をする。
「三田か、あいつ自分も弁護士なのに、何で俺の所にわざわざ紹介してくるんだろうな」
「さぁ……、またこれを口実に、先生に会いに来たいんじゃないですか?」
私の言葉を聞いて、先生は一瞬端正な顔を歪ませた。
九ノ瀬一《ここのせ はじめ》、三十一歳。仕立ての良いスーツを着こなす体躯を持ち、容姿端麗を地でいく男。
黙って書類に目を落とす姿は、まるで映画や雑誌のワンシーンだ。
切れ長の瞳、艶のある黒髪。形の良い唇から綴られる言葉には、全てを任せて信用してみたいと思わせる力があった。
三田先生は、九ノ瀬先生がこの事務所を構える前の職場での同期で、今でも二人には交流がある。
たまに三田先生が私の為にと美味しくて評判のお菓子を手土産に事務所へ来る事があるけれど、あれは絶対に九ノ瀬先生の顔が見たくて来るんだと思っている。
二人はなんやかんやとお互いの事を言うけれど、結局は毎度その夜には飲みに繰り出す。
私もたまに誘われてご一緒させて頂くけれど、顔面偏差値の高い二人が肩を組合い、赤い顔をしてへろへろに笑っている姿は拝みたくもなる。
顔の良い男の側は、パワースポットだ。
それに、この二人の側では安心出来る。
きっと先生なら、絶対に私にダメにされない。
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