寡黙でイケメンな上司が可愛い匂いフェチだったので、甘やかしてダメにしてしまいたい!

木登

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「とりあえず、吉岡に似合いそうなのを買ってきた。明日から着けてきて欲しい。帰りに俺に渡してくれ」

 数日後、いつも通りに出勤すると先に来ていた九ノ瀬先生にひとつの紙袋を渡された。上質な白地に、ピンク色のキラキラした箔でショップの名前が押してある。

 高級感がありながら、可愛らしさやセクシーさも兼ね備えた、勝負下着を奮発して買うならまず候補に上がるランジェリーショップの。

「こ、これってもしかして、下着ですか?」

「そうだ。サイズも合ってる、なんせ実際に触って確かめたからな」

「一応聞いても良いですか。……どうして?」

「俺がプライベートで嗅ぐからだろ」

 九ノ瀬先生、遂にこんなにオープンになってしまって。

 まるで子供みたいな得意げな顔。
    先生のそんな顔、初めて見てこっちまで嬉しくなる。いや、嬉しくなってる場合じゃないんだけど。

「先生、一人で買いに行ったんですか?」

 まず聞く所はそこじゃないのは分かっているのだけど、どうしようもなく気になるんだからしょうがない。

「うん。君に似合いそうなのをネットで探してるうちに店を知って。実際に見て選びたかったから行ってきた」

「気まずかたったりはしなかったんですか?やっぱり男性はお店に入り辛かったでしょう」

 先生はああ~と、何か思い出したようだ。

「色違いで悩んだ時に、本人の意見が聞けなかったのが残念だったかな。好みもあるだろうけど、今回はとりあえず君に似合いそうなのを選んできた」

「今回は……!?」

「次は、俺の好みのを買う。週末空けといてくれ、食事にも行こう」

 胸を張って言う事じゃないだろ、と突っ込んでくれる三田先生は、こんな朝のうちに事務所には来ない。

 開けてみて、と急かされて紙袋を覗いてみると一セットずつ綺麗に包装された下着が存在感を放つ。そっと取り出して並べると、先生の使っている海外家具メーカーの漆黒のデスクに色とりどりの美しい華が添えられた。

 わぁ、綺麗……て、違うだろ。

 きちんと上下揃えて五セットもある。総レースや小さなリボンがあしらわれたもの、どれもが手に取りたくなるような素敵な下着だ。

「どれも綺麗です……先生、これ選んでる時も私の事を考えてたんですか」

「当たり前だろ、吉岡に似合うのを選んだんだから」

 そうか、少なくともその時間、先生の頭の中を私でいっぱいにしてくれたんだ。すごく真剣に選んでくれたんだろうな。

 使用目的はともかく。

 先生の頭の中は、私が占めていた。正確には私の匂い、なんだろうけど。それでも嬉しいものは嬉しい。

 そうして、閃く。

「じゃあ、九ノ瀬先生が着せてください」

「えっ」

 時刻はもう少しで九時になる。今日一番の来客の予定は十一時、それまでは事務所で二人きりだ。

「先生が私に一番着て欲しい、私の匂いがしたら嬉しい下着、着せて下さい」

 先生の表情、期待で口元が緩んだのが分かる。

「先生が着せてくれた下着で、今日一日過ごしますね。それで接客対応したり、ランチに出たり、今日は少し暑いから汗かいちゃうかも」

 グニャグニャの白線。私はぐりぐりと足で消す。

「……じゃあ、吉岡からおねだりして見せてくれ。先生、着せてって」

「嫌です。九ノ瀬先生がお願いしてくれなきゃ」

「今の、はいって言う流れだろ~」

 先生。私、先生にはダメになって欲しくないんです。

 なのに、どうしようもなく、全力で私の手でダメになって欲しい。
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