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⑥
しおりを挟む一夜の過ち、ワンナイト。
お酒に呑まれた勢いで肌を合わせて、先生が秘密にしていた性癖を身を持って教えられた。
結局、先生は『準備がないから』と、挿入はしなかった……からワンナイトではないのかな。
けど、私を舐めてかじって嗅いで摘んでと、じっくりねっとりと味わっていた。
最後は、私の足の先を舐めながら自慰をする姿を見せてくれた。
ねだったのは私だ。
ソファーに腰をかけ直した私の前に、九ノ瀬先生がひざまずく。
「先生、人の足を舐めながら自分でしたことはあります?」
先生は首をふった。
「……してみたいけど、機会がなかった」
「……して見せて欲しいな。私、男の人が自分でしてるとこ、見たことが無いんです」
先生は、迷いと期待のこもった目で私を見る。
「なら、脱いだストッキングをもう一度履いてくれないか? それを舐めながら……してみたい」
「いいですけど、ストッキング履く姿って、ちょっとマヌケな感じなので……いいって言うまで目を閉じてもらってて良いですか」
私の場合だけど新品のストッキングほど、履くときには人には見せられない姿になってしまう。
なんか、履きながら屈伸とかしちゃう。
あれって、みんなそうなのかな。
「あれ、どこいったかな……先生、脱がしたあと、どこやりました?」
先生はおずおずと、床におちた自分のジャケットの下から、ぴろりとストッキングを引っ張り出した。
先生が自分のをしごきながら、ストッキングに包まれた足をねぶる姿。
たまに目をあけて、私の視線に恥ずかしがる。
ちゃんと見てますよ、と声をかけるとびくんと腰が揺れる。
私はそんな先生の姿が可愛くて、もっともっと先生の好きなことをさせてあげたくなった。
自分の性癖を大っぴらにする人も居るけれど、先生は自分が匂いフェチな事は隠していたかったらしい。
出来ればずっと。
歴代の彼女達には告げられず、自分の欲を吐けない為に不満が溜まり、そのうちに上手くいかなくなってお別れを繰り返したという。
『言ったら、一人位は理解してくれる人が居たかもしれないのに』
そう、二人でぎゅうぎゅうに無理やりに横になったソファーで、先生に言おうとして止めた。
先生は、言えなかったのだ。
好きな人には何でも話をして欲しいと思う。
けれど、好きな人だからこそ、話せない事だってある。
失望されたり嫌われたくないもの。
もしかしたら、言って酷く失敗したことがあったのかもしれない。
ベッドの中で、何かを言いたそうな先生と、聞けずにいた彼女達。
想像をすると、胸が少し苦しくなる。
「吉岡の優しさは温い沼みたいで、足がつかなくて怖いのに、そのまま沈んでしまいたくなる。何でも許して貰えるけれど、溺れたら……君は助けてはくれないだろう?」
先生が、暗い天井に向かってぽつりと吐いた。
そんな事はない、とは言い切れなかった。
『物事をはかる一線』というものが私の場合は石灰で引いた白線と同じだから。
足で簡単に誤魔化すように消せる、そして好きな場所に引き直す事が出来る。
足元でグチャグチャになった、私の一線。
その白線に許され続けて、少しずつ男の人が甘えて姿を変えていくのを見るのが好きだったのかもしれない。
だけど、優しさだけに溺れて傲慢になった人は、愛し続けられなかった。
ダメ男製造機。ダメにするだけで、愛し続けてあげられない。
そうか。そうだったんだ。やっぱり私が悪かったんだ。
「……どうして、私には先生の性癖のこと、言えたんですか?」
彼女じゃないから。酔ったいきおい。
理由はそんな所だろうか。
「……はは、何でだろうなぁ。しいて言えば、俺と同類の匂いがしたからかな」
先生がなんだか楽しそうに笑うから、それ以上深く聞く気が無くなってしまった。
それって絶対、褒めてない。
「じゃあ、九ノ瀬先生は私にダメにされないで下さいね? 先生いわく、私は助けないらしいので」
「……多分これ以上の痴態を見せることはないと思うけど……また吉岡が見たいって言うなら、してやるよ。今度、事務所でしてやろうか」
「先生、ここが事務所ですよ」
「ふ、あはは!そうだった、まさかここで吉岡の足を舐めながら、職場でオナニーさせられるとはおもわなかったなぁ……あ~気持ちよかった」
先生がまた笑う。うん。先生が楽しそうなら良いや。
私はまた、足元の吹けば飛ぶような白線を小さく蹴った。
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