公爵様、これが夢なら醒めたくありません!

菰野るり

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私はハルファティカ

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ただただ眠りを共に貪り、目覚めた時もアンリに抱かれている。その幸福はあまりに濃密で離れがたいものであったが、このまま日々を悪戯に過ごすわけにはいかない。

ハルファティカから受け継いだ記憶が、そう告げていた。


おもむろに寝台を離れた私は、身繕いをする。あのまま娼館の片隅の部屋で着心地の良い服だけを着て、アンリと自由気ままに過ごせたら、どんなにか良かっただろう。そのまま世界最後の日を迎えても良かった。

しかし、アンリが貴族の道を選び、ハルファティカがら記憶を受け継いだ今、私たちには民たちを救う義務があると考えた。須藤あかりのままではいられない、記憶を受け継ぐ事で身体のハルファティカと溶け合ったのだろう。

「ミア、どうしたの」
ミアと私を呼ぶ声が甘くて愛しい。
拒絶しなければいけないのは、本当に嫌だ。

「アンリ、王宮に戻らねばならないの。
準備を手伝ってもらえる?」

アンリは理由を聞かなかった。
メイドの代わりに私の髪を美しく整えて、髪結いで小銭稼いでたんだと笑った。

「だからミアが貴族の生活を嫌になったら、街で暮らしていけるよ」
「アンリが他の女の髪を結うなんて嫌よ」
「君のためならどんな仕事でもできる」

器用な手つきで私の髪を美しくハーフアップに結うと、1束髪を指先で掴み、口づけをした。

「わたくしのドレスを着るの、手伝ってくれる?」
記憶長ない頃は1人じゃ2度と着られないと思ったドレスも、仕組みが分かってみればスルスルと形にする事ができる。アンリに手伝ってもらうのはコルセットを締めることぐらいだ。

既に折れそうなほど細い腰だから、コルセットをしめるだけでドレスはフィットした。大きな姿見の前に立てば、明らかに平民ではない高貴な生まれと分かる少女がだっている。まるで芸術作品のようにバランスが良くしなやかで繊細な立ち姿。

準備を手伝ってくれたアンリはからも感嘆の溜め息が漏れる。私は笑顔で振り返る。

「ありがとうございます、モルナール公。次はあなたも準備するのですよ」
「はいはい、ちゃんとした格好しますよー」

私が記憶を取り戻しても、深くを聞かずミアとして接してくれる。アンリだって不安なはずなのに、無理に聞き出そうとはせず、私の気持ちを優先してくれる。

思わず駆け寄り、後ろから抱きついてしまう。

「ミア…!」

私の縋る手が震えているのをアンリはみてとる。

「記憶を取り戻したからといって、それに縛られる必要はないんだよ。」

空色の柔らかい眼差しが私を包む。

「君が望むなら、このまま君を攫って逃げ出してもいい。アンリ・モルナールは自由気ままな風だからね」

自分から、アンリにキスをした。
「わたくし、あなたと一緒に平和な世界で生きられるように頑張ります。それから、早めに引退しましょ」
「はは、ノブリスオブリージュからは逃れられそうに無いね。では、姫の騎士になりますよ」
「ええ、わたくしの剣はあなた、ただひとり」

アンリは白と金の縁取りの服を選び、浅黒い肌に生えて大層美しかった。

「わたくしの名はミア」
「俺が名付けた名だね、美しいミア」
「でも、王宮ではハルファティカと呼んで」

アンリは私に綺礼をした。

「それではハルファティカ殿下、お手を」

私は跪くアンリに手をのばした。
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