29 / 35
【番外編】side マーク④ 部下が恋心を自覚した
しおりを挟む
サイラスは、しばらくは沈んでいたけれど、徐々に普段の調子に戻っていった。相変わらず週一回のルナとのお茶の時間は死守するし、お土産選びに余念がない。変わっていないように見えて少しだけサイラスは変わった。困っている人がいたら手を貸したり、仕事をできるだけ普通の手順でしたり。相変わらず色付き眼鏡と分厚い手袋は手放せないみたいだけど。
たまに『焼きてぇ…』『殺してぇ…』って独り言が聞こえるけど、それ魚のことだよね?
それから数年が経った。人に壁はつくるものの、着任時の尖った感じからだいぶ丸くなったサイラスに、周りの人はやっと思春期の難しい時を抜けたのかと思っていた。実際は、幼女に恋したのをきっかけにアレコレあって、少しだけ精神的に成長しただけなんだけどな!!
そんなある日、ギルド長の執務室に帰り、執務用の机の椅子を引いた時のことだ。
椅子が収まっていた空間に、サイラスが背を丸めて座り込んでいる。どうしようどうしようと頭を抱えるサイラスにこっちが頭を抱えたくなる。
今 度 は な ん だ?
「毎回毎回、変なところから登場するなよ。今度はどうした?」
なんとか執務用の机の下から、ぐにゃぐにゃになったサイラスを引きずり出して、応接用のソファーに座らせる。
「マークどうしよう。俺ルナのこと好きみたい。あっ好きって犬猫を好きっていうあれじゃなくて、女の子として好きってことで、恋とか愛とか的なことで、将来は結婚して、おじいちゃんとおばあちゃんになるまで添い遂げて、死んでも一緒にいたいし、むしろ死んでも一緒で、生まれ変わってもまた一緒にいたくて、とにかくずっと一緒にいるってかんじの好きなんだけど」
え、 今 さ ら ?
そして重い。恋を自覚してないのも驚きだけど、その思いの重さにドン引きする。ヤクさんはそんな話しないだろうし、俺も恋愛というものに疎そうなサイラスにあえて、そういった話をふらないようにしていた。サイラスは二十歳になってようやく、自分の恋愛感情を自覚したようだ。激重だけど。
「ねー二十歳と十歳って、だめなの? この前読んだ小説に幼女趣味とかロリコンって書いてあったんだけど! 僕がルナを好きなのってダメなの? おかしいの?」
「まぁ、十七歳の時に、七歳好きって言った時は、やばいなって思ったけど……」
二十歳と十歳か……うーん、絵面的にまだちょっとアレなかんじはある。
二十五歳と十五歳……まだ、ギリギリアウト?
三十歳と二十歳、これなら大丈夫なかんじだなぁ。
「なんでなんで、確かにルナが七歳の時から好きだけど、だめなの? ルナと同い年だったら、ルナが七歳の時に好きでもおかしくないんでしょ?」
「まーそうだな。同い年なら、小さい頃から好きってむしろ純愛っぽいな……年が開いてると、小さい頃から好きってなんか変態っぽいんだよな……」
「僕ほど純粋にルナを好きな奴なんていないのに! ねぇ、マークどうすればいい? 僕の体を十年若返らせればいいかな? それとも、十年後のルナの所に今の僕が行けばいい? あれ、そうすると今のルナが一人ぽっちになっちゃう? ねぇ、僕どうすればいいの? どうすればルナと同い年になれるの?」
ついには、禁断の時魔術にまで手を出そうとしているのを見て焦って、年を経ればおかしくなくなるから、それまで、清い関係でいれば大丈夫だとなんとか説得して、事なきを得た。
本人が自覚した愛はそれからドンドン重くなっていった。
ルナの十二歳の誕生日前のことだ。
「あ、依頼入ってた南の孤島の古竜倒しに行ってくるわ」
なんかちょっとそこまで魚釣りに行ってくるわ、くらいのノリで、止める間もなくふらっと出かけ、サクッと古竜を倒して帰ってきた。
えーと、その古竜、S級冒険者がパーティーで綿密な作戦立てて、長期戦で相打ち覚悟で挑む相手だからね。その底知れない力をもっと世界の役に立ててくれないかなぁ。くれないよね。
「ルナの誕生日に紫の魔石をプレゼントしたかったんだよね。魔術の付与たくさんできる大きい石。古竜の魔核になってる魔石って幸運の加護ついてるでしょ。周囲の人間に怪しまれるから、防御はつけられないんだよねー。えーと、感情察知に音情報通信、位置情報感知……。認識阻害はこの石を察知されないよう指定っと」
もう、何も言えない。形に残るものはダメだという制約を潜り抜けるために、魔石に周りの人から認識されないよう認識阻害をかける手の込みよう。ヤクさんの許可は降りるのか?
そんな俺の心配をよそに、無事、ルナの手に魔石が渡ったらしい。この魔石のすごさを知ったら、倒れるんじゃないか?
「んー家って先に準備しておいた方がいいのかな?やっぱり一緒に探すところからはじめたほうがいいかな? ルナの好みもあるしなぁ」
それからサイラスは、王都で二人で住む家を熱心に探しはじめた。時々、首から下げた古竜の逆鱗を撫でながら。古竜の逆鱗がどうやら、ルナにあげた紫の魔石と対になっていて、ルナの感情や周りの音や位置を知る受信機になっているらしい。いちおう常時受信しているわけではなく、ルナの強い感情を感知するときだけ、受信するようになっているらしいが。これはセーフなのか?っていうか、まだ恋人同士じゃないよな? まだ相手十二歳だしなぁ。なんかもう、結婚した俺の嫁!みたいになってるけど、ルナとそのあたり、すり合わせてるんだろうな?
色々と気になることはあるものの、ご機嫌なサイラスに水を差さなくてもよいかと放置しておいた。
たまに『焼きてぇ…』『殺してぇ…』って独り言が聞こえるけど、それ魚のことだよね?
それから数年が経った。人に壁はつくるものの、着任時の尖った感じからだいぶ丸くなったサイラスに、周りの人はやっと思春期の難しい時を抜けたのかと思っていた。実際は、幼女に恋したのをきっかけにアレコレあって、少しだけ精神的に成長しただけなんだけどな!!
そんなある日、ギルド長の執務室に帰り、執務用の机の椅子を引いた時のことだ。
椅子が収まっていた空間に、サイラスが背を丸めて座り込んでいる。どうしようどうしようと頭を抱えるサイラスにこっちが頭を抱えたくなる。
今 度 は な ん だ?
「毎回毎回、変なところから登場するなよ。今度はどうした?」
なんとか執務用の机の下から、ぐにゃぐにゃになったサイラスを引きずり出して、応接用のソファーに座らせる。
「マークどうしよう。俺ルナのこと好きみたい。あっ好きって犬猫を好きっていうあれじゃなくて、女の子として好きってことで、恋とか愛とか的なことで、将来は結婚して、おじいちゃんとおばあちゃんになるまで添い遂げて、死んでも一緒にいたいし、むしろ死んでも一緒で、生まれ変わってもまた一緒にいたくて、とにかくずっと一緒にいるってかんじの好きなんだけど」
え、 今 さ ら ?
そして重い。恋を自覚してないのも驚きだけど、その思いの重さにドン引きする。ヤクさんはそんな話しないだろうし、俺も恋愛というものに疎そうなサイラスにあえて、そういった話をふらないようにしていた。サイラスは二十歳になってようやく、自分の恋愛感情を自覚したようだ。激重だけど。
「ねー二十歳と十歳って、だめなの? この前読んだ小説に幼女趣味とかロリコンって書いてあったんだけど! 僕がルナを好きなのってダメなの? おかしいの?」
「まぁ、十七歳の時に、七歳好きって言った時は、やばいなって思ったけど……」
二十歳と十歳か……うーん、絵面的にまだちょっとアレなかんじはある。
二十五歳と十五歳……まだ、ギリギリアウト?
三十歳と二十歳、これなら大丈夫なかんじだなぁ。
「なんでなんで、確かにルナが七歳の時から好きだけど、だめなの? ルナと同い年だったら、ルナが七歳の時に好きでもおかしくないんでしょ?」
「まーそうだな。同い年なら、小さい頃から好きってむしろ純愛っぽいな……年が開いてると、小さい頃から好きってなんか変態っぽいんだよな……」
「僕ほど純粋にルナを好きな奴なんていないのに! ねぇ、マークどうすればいい? 僕の体を十年若返らせればいいかな? それとも、十年後のルナの所に今の僕が行けばいい? あれ、そうすると今のルナが一人ぽっちになっちゃう? ねぇ、僕どうすればいいの? どうすればルナと同い年になれるの?」
ついには、禁断の時魔術にまで手を出そうとしているのを見て焦って、年を経ればおかしくなくなるから、それまで、清い関係でいれば大丈夫だとなんとか説得して、事なきを得た。
本人が自覚した愛はそれからドンドン重くなっていった。
ルナの十二歳の誕生日前のことだ。
「あ、依頼入ってた南の孤島の古竜倒しに行ってくるわ」
なんかちょっとそこまで魚釣りに行ってくるわ、くらいのノリで、止める間もなくふらっと出かけ、サクッと古竜を倒して帰ってきた。
えーと、その古竜、S級冒険者がパーティーで綿密な作戦立てて、長期戦で相打ち覚悟で挑む相手だからね。その底知れない力をもっと世界の役に立ててくれないかなぁ。くれないよね。
「ルナの誕生日に紫の魔石をプレゼントしたかったんだよね。魔術の付与たくさんできる大きい石。古竜の魔核になってる魔石って幸運の加護ついてるでしょ。周囲の人間に怪しまれるから、防御はつけられないんだよねー。えーと、感情察知に音情報通信、位置情報感知……。認識阻害はこの石を察知されないよう指定っと」
もう、何も言えない。形に残るものはダメだという制約を潜り抜けるために、魔石に周りの人から認識されないよう認識阻害をかける手の込みよう。ヤクさんの許可は降りるのか?
そんな俺の心配をよそに、無事、ルナの手に魔石が渡ったらしい。この魔石のすごさを知ったら、倒れるんじゃないか?
「んー家って先に準備しておいた方がいいのかな?やっぱり一緒に探すところからはじめたほうがいいかな? ルナの好みもあるしなぁ」
それからサイラスは、王都で二人で住む家を熱心に探しはじめた。時々、首から下げた古竜の逆鱗を撫でながら。古竜の逆鱗がどうやら、ルナにあげた紫の魔石と対になっていて、ルナの感情や周りの音や位置を知る受信機になっているらしい。いちおう常時受信しているわけではなく、ルナの強い感情を感知するときだけ、受信するようになっているらしいが。これはセーフなのか?っていうか、まだ恋人同士じゃないよな? まだ相手十二歳だしなぁ。なんかもう、結婚した俺の嫁!みたいになってるけど、ルナとそのあたり、すり合わせてるんだろうな?
色々と気になることはあるものの、ご機嫌なサイラスに水を差さなくてもよいかと放置しておいた。
34
あなたにおすすめの小説
夢を現実にしないための正しいマニュアル
しゃーりん
恋愛
娘が処刑される夢を見た。
現在、娘はまだ6歳。それは本当に9年後に起こる出来事?
処刑される未来を変えるため、過去にも起きた夢の出来事を参考にして、変えてはいけないことと変えるべきことを調べ始める。
婚約者になる王子の周囲を変え、貴族の平民に対する接し方のマニュアルを作り、娘の未来のために頑張るお話。
【完結】好きになったら命懸けです。どうか私をお嫁さんにして下さいませ〜!
金峯蓮華
恋愛
公爵令嬢のシャーロットはデビュタントの日に一目惚れをしてしまった。
あの方は誰なんだろう? 私、あの方と結婚したい!
理想ドンピシャのあの方と結婚したい。
無鉄砲な天然美少女シャーロットの恋のお話。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
拾った指輪で公爵様の妻になりました
奏多
恋愛
結婚の宣誓を行う直前、落ちていた指輪を拾ったエミリア。
とっさに取り替えたのは、家族ごと自分をも売り飛ばそうと計画している高利貸しとの結婚を回避できるからだ。
この指輪の本当の持ち主との結婚相手は怒るのではと思ったが、最悪殺されてもいいと思ったのに、予想外に受け入れてくれたけれど……?
「この試験を通過できれば、君との結婚を継続する。そうでなければ、死んだものとして他国へ行ってもらおうか」
公爵閣下の19回目の結婚相手になったエミリアのお話です。
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
後妻の条件を出したら……
しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。
格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。
だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。
しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる