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【番外編】side マーク⑤ 部下の交際を知って、覚悟を問う
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サイラスがルナに紫の魔石をプレゼントしてから一年後、東の辺境のギルドから緊急召集があり、俺とサイラスも出動した。
ワイバーンの大群が確認され、魔の森を出ないうちに駆除せよとのことだった。魔物は瘴気を好むので、あまり魔の森を出ないが、翼を持つ魔物は移動が一瞬なので、油断できない。
たまたま、ルナとお茶をする日だったようで、突然の召集に不機嫌顔で現れた。瘴気避けの重装備を確認していると、上下のつなぎの戦闘服に色付きゴーグルという軽装で現れた。
「おま、瘴気あるところにいくのに正気か? 早く瘴気避けの装備に着替えろよ!」
「え、僕、いつも魔の森でもどこでもこの恰好だけど? 僕の周りに瘴気避けの防御壁つくって、空気も空間魔術と風魔術で供給されるようになってるし。大丈夫だよ、戦闘に必要な魔力はそれを常時発動してても全然残ってるよ。あーあ、ルナとの憩いの時間を邪魔したんだから、さくっと全滅させるかぁ」
その言葉に嘘はなく、薄暗い魔の森を縦横無尽に駆け巡り、次々とワイバーンを倒していく。
「人と一緒だと、やりにくいんだよね。他の人の位置に気を付けて攻撃しないといけないし、守ってやんないといけないし」
緊急召集で、俺とサイラスと辺境にたまたまいたA級ランクの冒険者三人と対応していたので、さすがのサイラスも少し手こずっていた。あーあー足ひっぱっちゃってすまんなぁ。
と、なんとなく緊迫感のないまま、粛々と討伐していたのだが、突然サイラスが立ち止まると、俺と一緒に来ていた冒険者を四人をまとめて防護壁で覆う。次の瞬間、残りのワイバーンの首が全て吹き飛んだ。そして、全てのワイバーンの死骸が消える。
「ルナがピンチだから行くわ。ワイバーンの死骸は生体反応ないの確認済みで、本部のギルドの倉庫に転移させたから。マーク、帰るくらいは自力でできるよな? じゃ、俺行くから」
俺と冒険者が目を瞬いてる間に、サイラスは消えた。
後から聞いたところによると、ルナが幼馴染のダレンにキスされそうになるという緊急事態が発生したらしい。えっとワイバーンの討伐の方が状況として重くない? え、扱い軽すぎん?
そして、ルナのピンチに駆けつけたどさくさで、告白されて思いが通じ合ったらしい。その浮かれようは凄まじかった。
「あールナってなんであんな可愛くて綺麗で天使みたいなのに、妖精みたいなんだろ。つきあうってことは、もうほとんど結婚してるのと同じだよね? だって成人して王都に来たら、一緒にいたいって、それって結婚するってことだよね? 朝起きたらルナがいる生活ってすごくない? おはようからおやすみまで、隣にルナがいて、おやすみからおはようまで隣で眠って! なにそれ天国なの? やばくない俺一回死んでるのかな? でも、死んじゃうとルナと一緒にいれない…」
これまでも独り言は気持ち悪かったけど、のべつまくなしに惚気なのか呪詛なのかわからないものをまき散らすようになった。せっかく上がっていた周りの評価も下がり、『脳内幼妻のいるヤベー奴』と再び、遠巻きにされるようになった。
そんなサイラスを見て、十七歳の頃にはじめてルナと出会った頃のように、俺には危機感が募った。
ヤクさんに連絡を取り、サイラスを西の辺境へ出張させると、密かに東の辺境の村へと向かった。サイラスの執着のもとであるルナの所へ。
ルナはどうやら不憫な境遇にあるようだ。話に聞く限りでも同情に値する。しかし、サイラスとつきあうというなら話は別だ。サイラスは今や王都の本部ギルドでなくてはならない人材であるし、はじめて会った十六歳ですでに生気のない目をした少年をなにくれとなく世話するうちに、保護者になったような気もしているのだ。
可愛さや庇護欲だけで、取り入って寄生しようとするならば、容赦はしない。そんな姑根性で、鼻息荒く、乗り込んだのだが、対面してすぐにその心はぽっきり折られる。
あまり威厳がないし、周りから侮られてばかりいるけれども腐っても王都のギルド本部のギルド長だ。いつもは下ろしている前髪をきっちり後ろへなでつけて、ギルド職員の正装で挑む。
百戦の猛者でも怯む眼光で目の前の少女をねめつける。
細身の体に、紫の大きな目を瞬かせて、両手の拳をぎゅっと握りしめて、少し震えながらも目を逸らそうとはしない。そのまっすぐな目線には受けて立つという気概が感じられた。
本当に十三歳なんだろうか? うちの娘と変わらない年頃だけど、まとう雰囲気は全然違う。
そして、妙に納得してしまう。儚い容姿に、瞳に宿る強い意志。
庇護欲と、そして一部の男の加虐心をそそるのだろう。
いや、ただサイラスにただ寄りかかるだけのお荷物になるなよーとちょっと釘刺したかっただけなんだ。あいつ初めての恋で目が眩んでんじゃないかって確認したかったのもある。希代の天才が女で人生を傾けたなんて話ゴマンとあるからな。
でも、あいさつをして少し言葉を交わした時点で、大人の威圧感バリバリでいったことを後悔していた。儚い姿からは想像できないくらいしっかりしているし、会ったばかりなのに誠実さと健気さに、もういいよって言ってあげたくなる。
それでも、上司として保護者として確認しておかねばならないと心を鬼にして質問を重ねる。
でも、途中から、目の前の少女が、サイラスを思い負担を掛けないように語る決意をただただ聞くことしかできなかった。言いたいことを言い切ると、少女の目からぽろりと大粒の涙が一つ零れる。それをぐいっと手で乱暴にぬぐうと、口を一文字に結んだ。その目にもう涙はなかった。
もう、おじさん泣いちゃいそうなんだけど。なんなのこの健気な少女。いやヤクさんをはじめとした、俺とか周りにいる大人がこの少女を追い込んでるんだよな。
「ルナ!!!」
周りの空気が魔術の気配にぶわりと揺れると、目の前の少女を抱き込むようにしてサイラスが現れた。あれ、今日は西の辺境の任務与えてなかったっけ?
やばいやばい。久々に見る瞳孔の開ききったオッドアイ。最近、ルナちゃんとの交際でふぬけていたけど、本来のサイラスはヤバい奴だった。
そして、ルナちゃんの泣きながらも全方位に気を遣うその健気さに、こっちまで胸が苦しくなる。この子は、サイラスの愛にどっぷりと浸されていても、きっと自分を失わないんだろうな。だからこそ、余計にサイラスは溺れていくんだろう。
はぁ。これはとんだお節介だった。部屋の片隅で、はじめから黙って成り行きを見守っていたヤクさんの表情は涼やかだ。ルナちゃんが王都へ来たときの一番はじめの砦が俺だ。どれだけヤクさんやサイラスが言葉を重ねても、ルナちゃんのことを穿ってみてしまうだろう。そのことがわかっていて、無駄足になるとわかっていて、俺を納得させるためだけにこの機会をもうけてくれたんだな。
ヤクさんに頷いて、帰途につくことを知らせると、それに気づいたルナちゃんがサイラスの腕から抜け出して、俺にとことこと近づいてきた。
「ギルド長さん、サイラスとの交際は認めてもらえますか?」
ハイ、俺、終了のお知らせぇぇぇぇぇぇ―――
サイラスと俺を気遣って至近距離で小声で尋ねてくれたけど、サイラスがルナちゃんの発言を一言だって聞き漏らすわけがない。ルナちゃんが宥めたことで閉じていた瞳孔が全開になってるぅぅぅぅ―――
『死ね』
俺の脳内に直接サイラスの声が響く。念話なんてまた高度な事をさらっと。ルナちゃんにこの物騒な発言を聞かれたくない一心で高度な術を使ったのね。
『もだえ苦しんで死ね。ルナに何言ったか、王都に戻ったら一言一句違わず教えろ』
もう、おじさん涙目。
”ゴ・メ・ン”
念話なんて高度な術使えないから、必死で口パクする。
不穏な空気を知ってか知らずか、ルナちゃんがこの後お茶できるか無邪気に尋ねると、とたんに部屋に満ちた重苦しい空気が霧散する。ルナちゃんの手作りパンでお茶することになって、サイラスの殺気は消えた。
わーお前、潔癖症じゃなかったっけ? 俺といる時ですら外さない手袋はしていない、ベタベタベタベタ、ルナちゃんに触れている。俺に鋭い一瞥を投げつけると、ルナちゃんの腰を抱いて、部屋から出て行った。
あの後、ルナちゃんから『サイラスをそれだけ真剣に思ってくれる人がいてうれしい』なんて言葉をもらって、俺は首の皮一枚で命が助かったらしい。あと、俺とルナちゃんの会話をヤクさんが記録していたみたいで、それを見てルナちゃんの凛々しさと健気さに号泣し、惚れ直したらしい。
「もうさ、十分、ルナは辛い目に遭ってるんだ。二度と、あんな状況に追い込まないでほしい。せめて、ルナに会う時は、俺も立ち会わせて」
普通のテンションで、サイラスに告げられて、返す言葉もなかった。でも、反省はしているけど、後悔はない。サイラスが好きになって、溺れるように愛する相手がルナちゃんみたいな人だと確認できてよかった。
ワイバーンの大群が確認され、魔の森を出ないうちに駆除せよとのことだった。魔物は瘴気を好むので、あまり魔の森を出ないが、翼を持つ魔物は移動が一瞬なので、油断できない。
たまたま、ルナとお茶をする日だったようで、突然の召集に不機嫌顔で現れた。瘴気避けの重装備を確認していると、上下のつなぎの戦闘服に色付きゴーグルという軽装で現れた。
「おま、瘴気あるところにいくのに正気か? 早く瘴気避けの装備に着替えろよ!」
「え、僕、いつも魔の森でもどこでもこの恰好だけど? 僕の周りに瘴気避けの防御壁つくって、空気も空間魔術と風魔術で供給されるようになってるし。大丈夫だよ、戦闘に必要な魔力はそれを常時発動してても全然残ってるよ。あーあ、ルナとの憩いの時間を邪魔したんだから、さくっと全滅させるかぁ」
その言葉に嘘はなく、薄暗い魔の森を縦横無尽に駆け巡り、次々とワイバーンを倒していく。
「人と一緒だと、やりにくいんだよね。他の人の位置に気を付けて攻撃しないといけないし、守ってやんないといけないし」
緊急召集で、俺とサイラスと辺境にたまたまいたA級ランクの冒険者三人と対応していたので、さすがのサイラスも少し手こずっていた。あーあー足ひっぱっちゃってすまんなぁ。
と、なんとなく緊迫感のないまま、粛々と討伐していたのだが、突然サイラスが立ち止まると、俺と一緒に来ていた冒険者を四人をまとめて防護壁で覆う。次の瞬間、残りのワイバーンの首が全て吹き飛んだ。そして、全てのワイバーンの死骸が消える。
「ルナがピンチだから行くわ。ワイバーンの死骸は生体反応ないの確認済みで、本部のギルドの倉庫に転移させたから。マーク、帰るくらいは自力でできるよな? じゃ、俺行くから」
俺と冒険者が目を瞬いてる間に、サイラスは消えた。
後から聞いたところによると、ルナが幼馴染のダレンにキスされそうになるという緊急事態が発生したらしい。えっとワイバーンの討伐の方が状況として重くない? え、扱い軽すぎん?
そして、ルナのピンチに駆けつけたどさくさで、告白されて思いが通じ合ったらしい。その浮かれようは凄まじかった。
「あールナってなんであんな可愛くて綺麗で天使みたいなのに、妖精みたいなんだろ。つきあうってことは、もうほとんど結婚してるのと同じだよね? だって成人して王都に来たら、一緒にいたいって、それって結婚するってことだよね? 朝起きたらルナがいる生活ってすごくない? おはようからおやすみまで、隣にルナがいて、おやすみからおはようまで隣で眠って! なにそれ天国なの? やばくない俺一回死んでるのかな? でも、死んじゃうとルナと一緒にいれない…」
これまでも独り言は気持ち悪かったけど、のべつまくなしに惚気なのか呪詛なのかわからないものをまき散らすようになった。せっかく上がっていた周りの評価も下がり、『脳内幼妻のいるヤベー奴』と再び、遠巻きにされるようになった。
そんなサイラスを見て、十七歳の頃にはじめてルナと出会った頃のように、俺には危機感が募った。
ヤクさんに連絡を取り、サイラスを西の辺境へ出張させると、密かに東の辺境の村へと向かった。サイラスの執着のもとであるルナの所へ。
ルナはどうやら不憫な境遇にあるようだ。話に聞く限りでも同情に値する。しかし、サイラスとつきあうというなら話は別だ。サイラスは今や王都の本部ギルドでなくてはならない人材であるし、はじめて会った十六歳ですでに生気のない目をした少年をなにくれとなく世話するうちに、保護者になったような気もしているのだ。
可愛さや庇護欲だけで、取り入って寄生しようとするならば、容赦はしない。そんな姑根性で、鼻息荒く、乗り込んだのだが、対面してすぐにその心はぽっきり折られる。
あまり威厳がないし、周りから侮られてばかりいるけれども腐っても王都のギルド本部のギルド長だ。いつもは下ろしている前髪をきっちり後ろへなでつけて、ギルド職員の正装で挑む。
百戦の猛者でも怯む眼光で目の前の少女をねめつける。
細身の体に、紫の大きな目を瞬かせて、両手の拳をぎゅっと握りしめて、少し震えながらも目を逸らそうとはしない。そのまっすぐな目線には受けて立つという気概が感じられた。
本当に十三歳なんだろうか? うちの娘と変わらない年頃だけど、まとう雰囲気は全然違う。
そして、妙に納得してしまう。儚い容姿に、瞳に宿る強い意志。
庇護欲と、そして一部の男の加虐心をそそるのだろう。
いや、ただサイラスにただ寄りかかるだけのお荷物になるなよーとちょっと釘刺したかっただけなんだ。あいつ初めての恋で目が眩んでんじゃないかって確認したかったのもある。希代の天才が女で人生を傾けたなんて話ゴマンとあるからな。
でも、あいさつをして少し言葉を交わした時点で、大人の威圧感バリバリでいったことを後悔していた。儚い姿からは想像できないくらいしっかりしているし、会ったばかりなのに誠実さと健気さに、もういいよって言ってあげたくなる。
それでも、上司として保護者として確認しておかねばならないと心を鬼にして質問を重ねる。
でも、途中から、目の前の少女が、サイラスを思い負担を掛けないように語る決意をただただ聞くことしかできなかった。言いたいことを言い切ると、少女の目からぽろりと大粒の涙が一つ零れる。それをぐいっと手で乱暴にぬぐうと、口を一文字に結んだ。その目にもう涙はなかった。
もう、おじさん泣いちゃいそうなんだけど。なんなのこの健気な少女。いやヤクさんをはじめとした、俺とか周りにいる大人がこの少女を追い込んでるんだよな。
「ルナ!!!」
周りの空気が魔術の気配にぶわりと揺れると、目の前の少女を抱き込むようにしてサイラスが現れた。あれ、今日は西の辺境の任務与えてなかったっけ?
やばいやばい。久々に見る瞳孔の開ききったオッドアイ。最近、ルナちゃんとの交際でふぬけていたけど、本来のサイラスはヤバい奴だった。
そして、ルナちゃんの泣きながらも全方位に気を遣うその健気さに、こっちまで胸が苦しくなる。この子は、サイラスの愛にどっぷりと浸されていても、きっと自分を失わないんだろうな。だからこそ、余計にサイラスは溺れていくんだろう。
はぁ。これはとんだお節介だった。部屋の片隅で、はじめから黙って成り行きを見守っていたヤクさんの表情は涼やかだ。ルナちゃんが王都へ来たときの一番はじめの砦が俺だ。どれだけヤクさんやサイラスが言葉を重ねても、ルナちゃんのことを穿ってみてしまうだろう。そのことがわかっていて、無駄足になるとわかっていて、俺を納得させるためだけにこの機会をもうけてくれたんだな。
ヤクさんに頷いて、帰途につくことを知らせると、それに気づいたルナちゃんがサイラスの腕から抜け出して、俺にとことこと近づいてきた。
「ギルド長さん、サイラスとの交際は認めてもらえますか?」
ハイ、俺、終了のお知らせぇぇぇぇぇぇ―――
サイラスと俺を気遣って至近距離で小声で尋ねてくれたけど、サイラスがルナちゃんの発言を一言だって聞き漏らすわけがない。ルナちゃんが宥めたことで閉じていた瞳孔が全開になってるぅぅぅぅ―――
『死ね』
俺の脳内に直接サイラスの声が響く。念話なんてまた高度な事をさらっと。ルナちゃんにこの物騒な発言を聞かれたくない一心で高度な術を使ったのね。
『もだえ苦しんで死ね。ルナに何言ったか、王都に戻ったら一言一句違わず教えろ』
もう、おじさん涙目。
”ゴ・メ・ン”
念話なんて高度な術使えないから、必死で口パクする。
不穏な空気を知ってか知らずか、ルナちゃんがこの後お茶できるか無邪気に尋ねると、とたんに部屋に満ちた重苦しい空気が霧散する。ルナちゃんの手作りパンでお茶することになって、サイラスの殺気は消えた。
わーお前、潔癖症じゃなかったっけ? 俺といる時ですら外さない手袋はしていない、ベタベタベタベタ、ルナちゃんに触れている。俺に鋭い一瞥を投げつけると、ルナちゃんの腰を抱いて、部屋から出て行った。
あの後、ルナちゃんから『サイラスをそれだけ真剣に思ってくれる人がいてうれしい』なんて言葉をもらって、俺は首の皮一枚で命が助かったらしい。あと、俺とルナちゃんの会話をヤクさんが記録していたみたいで、それを見てルナちゃんの凛々しさと健気さに号泣し、惚れ直したらしい。
「もうさ、十分、ルナは辛い目に遭ってるんだ。二度と、あんな状況に追い込まないでほしい。せめて、ルナに会う時は、俺も立ち会わせて」
普通のテンションで、サイラスに告げられて、返す言葉もなかった。でも、反省はしているけど、後悔はない。サイラスが好きになって、溺れるように愛する相手がルナちゃんみたいな人だと確認できてよかった。
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