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20.公爵家
しおりを挟む当初の予定ではウィンディア家の別邸があるのでそこで慎ましやかな生活をする予定だった。
いずれ騎士として働き身を立てるまでは俺の溜めたたくわえで生活できるから当分は問題なかったはずだ。
なのに――!
「ようこそお越しくださいました」
何故か俺達は皇族専用の馬車に乗せられた後、公爵家の邸に連れていかれて、現在に至る。
宮廷にも負けない程の豪邸に庭園は言うまでもない。
俺達を迎えた使用人が派手な出迎えをしている。
「伯母上、これではどういうことです」
「どうもこうもなくてよ?皇族があんなウサギ小屋のような別邸に住むなんて許さなくてよ?今日から二人はここで生活してもらいます。新居は準備してあるから」
「は?」
新居ってなんだよ!
「まったく、あんな邸に未来の皇太子妃を済ませる気ですの?」
「伯母上、何を言っているんですか」
「頭の回転が悪くなったのね?貴方は私の養子に入る事になります。アイリス様の養子縁組も問題ないわ。ナージャの養女になれば身分的にはつり合いが取れているわ」
「伯母上!何を!」
話しがついて行けない。
何で俺が皇太子になることが決定しているように言うんだ?
「皇家の事情は知っているでしょ?本家筋は女系家族…王侯貴族から養子を取る話が出ているわ。だけど反対意見が多くて面倒ですの…そこにタイミングよく私の甥がやって来た。しかも国外追放になって…なんて好都合なのかしら!素敵だわ」
「喜ばないでください、普通は気の毒に思うものです」
「だって、ユーリを騎士として鍛え上げたのは私なのよ?騎士団長如きで満足して貰ったら困るわ。我が帝国は騎士国家とも言われているし、初代皇帝は騎士として国の為に剣を振るっていたし、問題ないわ」
ぶっ飛び過ぎだ!
普通に考えてありえないだろ!
「ユーリ様、驚かれるのも当然でしょう」
「ベルセバブ!」
執事長のベルセバブが現れる。
家令でもあり、この邸の全てを取り仕切っている。
「ですが、これが自然の流れです。本来ならば貴方様は養子縁組をしていただき、立太子する予定でした」
「は?」
「ですが少々順番が変わっただけの事。何もお気になさいますな。戸籍の偽造はお手の物です。文句を言う者はこのじいが処分して差し上げます」
「紳士的な笑みを浮かべながら袖から武器を出すな!」
見た目は紳士的な老人であるベルセバブは白い悪魔と呼ばれている。
悪魔ベルセバブ。
見た目は聖者のようだが中身は最悪の悪魔だった。
現役時代は悪魔騎士と呼ばれる程情け容赦なかった。
「さて、ユーリ様をこけにした馬鹿共は晒し首にして、御霊は地獄鍋行に送りましょうか。死んでもこの世に留まるように儀式をして…」
「止めろ!冗談に聞こえない!」
ベルセバブは悪魔騎士という特殊な職業を持っている。
文字通り悪魔を操ることができる呪い殺すのも得意だった。
暗殺闇討ちなんて朝飯前だ。
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