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88.役者の正体
しおりを挟む一件落と思ったが、次なる問題がある。
大事な式典の後の宴でこのような事になれば、ブリチア王国の名前は地に堕ちてしまう。
あの一家が断罪されてはい終わりというわけには行かない。
「ユーリ、また無駄な事を考え要るようですわね」
「は?」
「私達がなんの準備もしていないわけがないでしょうに」
母上と伯母上が呆れた表情をしながら扇を鳴らした。
「皆様、もうよろしいですよ」
「お勤めご苦労様」
その瞬間、招待客のほとんどが他国の代表ではなく我が帝国の貴族達だった。
「えっ…これは」
「ああ、全部カモフラージュですわ」
「まぁ、リアリティーを出す為に同盟国の代表の方もわずかにいますが。全員あらかじめ作戦を知らせ、邪魔者を排除する為に協力していただきましたの。中には貴族派の連中が他国に圧力をかけているようでしたので、手を組みましたのよ」
「ここにいらっしゃる各国の代表は、元は我が帝国と親しい方達。いくら何でも大事な宴を台無しにするはずがありませんわ」
「ええ、あの馬鹿一家には貴族派を完全に潰す為の生贄ですわ」
全部最初からお膳立てされていたと?
「あら?すべてではなくてよ」
「お願いですから心の声を読まないでください」
「顔に出ているのですわ」
ああいえばこういう母上に頭が痛い。
俺は一生この人に頭痛を抱えて生きて行かなくてはならない気がする。
「予想外の出来事は多くありましたわ。私が想像するよりもステンシル侯爵家がお馬鹿で踊ってくれた事。アイリスが立派に過去を切り捨てた事」
「立派でしたわよアイリス」
「お二人共…」
確かにあの時のアイリスは本当に凛々しく神々しさも感じた。
とても立派だった。
「もしかしたら天国のご両親はこうなるべくして導かれたのかもしれません」
「両親が?」
「ええ、悪魔の巣窟にいながらも貴女は汚れなかった。歪んだ考えを持つ親元で育てられれば、子供も影響を受けるでしょう。それが正しいのだと…だけど貴女はそうならなかった」
「それはウィンディア家で…」
「たとえそうであってもです」
いくら我が家でアイリスを受け入れても血を分けた親以上になるのは難しいかもしれない。
きっと、アイリス自身も気づかない内に乳飲み子だった頃に抱かれた記憶しかない温かさを覚えていて、本当の両親は叔母夫婦ではない事を察していたのかもしれない。
「貴女は彼等とは違うわ。例え少しの血が流れていても」
「はい…ありがとうございます」
ずっとアイリスは悩んでいたのだろう。
生みの親が、あのような人間であるのであれば何時か自分も同じような事をしてしまうのではないか。
ずっと不安を抱いていたのだろうが、本当の生みの親はではなかった。
今後、ステンシル侯爵家の事が明るみに出ても、アイリスは被害者として同情されても、犯罪者の子として責められる可能性は少ない。
アイリスも被害者であるのだから。
身内に罪を犯した者がいたとしても、生みの親と叔母とでは印象は変わって来る。
「後は貴方の腕の見せ所。良くて」
「はい、心得ました」
妻を守るのは夫の役目。
アイリスを叩く者がいるなら俺が排除して行くまでだ。
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