令嬢は大公に溺愛され過ぎている。

ユウ

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気障な騎士

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二人が向かった先は温室だった。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

ここなら他の令嬢が通ることはないので心配ない。

「申し訳ありません。嫌な思いを」

「アレーシャ様、貴女は何故何もおっしゃらないのですか」

レオンハルトは先程の会話が耳に入り不愉快に感じる。

「事実ですから…それに慣れています」

「慣れている?」

「ええ、宮廷内ではああいった陰口は少なくありません。人は自分より優れている者を妬み、それ以外は見下す哀しい生き物です」

相手を傷つけ得る者はないのだが、解っていない人間が多い。

「伯爵家の貴女なら不敬罪にすることも出来ましょう」

「私は伯爵家の娘ですが立場は弱いんです。ご存知かと思いますが、私は婚約を断られた身です」

宮廷内は様々な噂をして、面白おかしく陰口を叩く。
女性としての魅力がないのか、それとも不義を働いているとでっち上げている。

「耐えるのですか?名誉を傷つけられたのですよ。それに妹君も」

レオンハルトは妹に対しても酷いと思った。
姉から婚約者を奪う様な事をしていいはずもない。

「では、やり返せと?」

「え?」

「やられたからやり返してどうなりましょうか」

傷つけられたから傷つけて、傷つけたから傷つけられてはその繰り返しだ。

そんな愚かな行為はする気なんてない。

「それに少しばかり哀れにも思うのです」

「誰がです?」

「貴族の令嬢達です」

高飛車で傍若無人に振る舞る貴族の令嬢が時折哀れになる。

「鳥籠の中で争い、欲望のまま欲して、また欲が出る。欲しがることを辞めず尽きない欲。哀れです」

恵まれすぎる環境にいながら他人の物を欲しがる。
持てども持てども飽き足りない心は満足できないなんて哀れでしかないと思った。


「寂しさを、虚しさを財を使って紛らわすなんて哀れです」

眉を下げて哀し気な表情をするアレーシャは自由がない令嬢を憐れんでいた。

「アレーシャ様、貴女はお優しいのですね」

「え?」

「虐げられながらも他者への慈しみを持っておいでだ」

そっと手に触れ微笑むレオンハルト。

かなり至近距離で驚く。

「貴女は聖女のように美しい」

そっと髪に触れキスをするレオンハルトに固まった。

(えっ…はぁ!?)

初体験に動揺が走り身動きが取れなくなっていた。


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