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第一章逆行した世界
16.歩く凶器
しおりを挟む傍で失神するコレットに同情しながらもリリアンヌはどうやって弁解すべきか考えていた。
ある意味、コレットよりも気丈夫だった。
‥‥が。
「どうしたのだ?マリー…もう釣りは終わりか?」
「「「は?」」」
しかし、状況はさらに悪化した。
背後には上半身が裸の中年男性が大きな魚を抱えていた。
「なっ…何を…」
その人物を知る者は真っ青になるも、何も知らないマリーはさらに爆弾発言をした。
「おじさん、それは食べれないから釣っちゃダメですよ」
「「「おじさん?」」」
「もう、本当に素人なんだから!釣りもしないなんてダメな大人」
「まっ…マリー!!」
リリアンヌはもう黙ってられず怒鳴った。
「あっ…貴女は何方に言っているのです!」
「え?失業して死んだ魚のような目をしたおじさん」
「ああ!なんてことを!」
さらりと更なる爆弾を投下するマリーにリリアンヌは一族揃って火あぶりか、ギロチンを命じられるだろうと思った。
「申し訳ございません陛下!」
「は?このおじさんが王様?失業したおじさんじゃなくて?」
「口を閉じなさい、このお馬鹿ぁぁぁ!!」
泣きながら怒るリリアンヌはなんとかして死罪だけは回避したかった。
自分はいいが、幼いマリーがこんな形で死罪になるなんて耐えがたいと思っていたのだが…
「良い、気にするでない」
「陛下…」
「私も久しく楽しんだ。してマリーよ。この魚をどうやって食すのだ…調理してくれぬか」
「はい、塩ぶっかけて焼いて食べるんです。美味しいですよ」
緊迫する空気にまったく気づかないマリーは通常運転だった。
王も変わらずマイペースだったがそんなことを乳兄弟が許すはずもなかった。
「陛下!いい加減になさいませ…そんなお姿で!」
「まったく、口うるさい女だ」
「陛下!」
侍女頭と口論する中、パチパチと音が聞こえる。
「焼けました」
「いや、マリー嬢…この状況で魚を焼くか?」
「殿下、美味しいですよ?」
葉っぱをお皿にして差し出すマリーに、一同は絶句する。
「マリー…お願いだから、止めて」
「お嬢様…」
これ以上したら銃殺刑だけで済みそうにないのだが、本人は事の重大さをまるで理解していなかった。
「美味いな」
「陛下!」
しかし、その上を行く人物がいた。
王はそのまま魚を丸かじりしてご満悦気味だった。
「酒が欲しくなるな」
「じゃあ、台所に行って取りに行きましょう。お祖父様のコレクションで地酒があるんです」
「何?マリーは中々悪だな」
「それほどでも」
ニヤニヤ笑う二人にリリアンヌは思った。
この二人は同族だと。
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