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第三章悪役令嬢の道
2.西の帝国
しおりを挟む西の帝国アルケス。
大帝国の一つで、火の鳥を神として崇めている。
王族の中でも特に血筋が良い者は家紋に不死鳥を掲げている。
近衛騎士団や騎士団等も赤を身に着けている。
王族の中でも深紅のドレスを着ることが許されるのは国王と皇后に皇族と限られた者だけ。
ウィリッド公爵家は皇族の中でも一番血筋が良く、特別の配慮で配偶者にも赤を身に着けることが許されていた。
そして彼らは特別に目をかけている者や、寵愛している者にある装飾品を与える風習がある。
「その服飾品は決まって薔薇の形をしております。」
「これのこと?」
胸元からペンダントを見せる。
「お嬢様、なんてものをいただいているんです!それは白薔薇ではありませんか…」
「うん、綺麗でしょ?グレイス様が是非貰ってくださいって…これがあれば顔パスでお邸に入れるんだって」
「事の重大さをご理解されてますか?相手は…」
ガクガクと震えるアンナ。
これまでマリーの行動を制限せずに見守ってきたが、これは流石にまずい。
真っ青になりながら急いで報告すると。
「マリー、貴女はなんということを!」
「ああ、我が家は公爵家でありますが王族とは遠縁です。なのに…なんということを」
普段は、ある程度なら寛大なコレットも倒れそうだった。
リリアンヌも倒れてしまった方がどれだけ楽なのかと思ったのだがマリーの暴走は続く。
「今度、ピクニックに行く約束をしました!」
「「絶対なりません!」」
二人そろって拒否された。
ここ最近、二人の絆はますます強くなっていた。
その原因はマリーが問題ばかり起こして、二人の間に奇妙な連帯感が生まれてしまった所為でもある。
その所為で一時、不仲だと噂を流されていたのが、何時の間にか実の姉妹以上に仲睦まじく親友のように仲がいいとまで言われるまでになった。
「奥様…」
「なんです!」
「ウィリッド公爵家から招待状が…」
「なんですって!」
遠慮がちに他の侍女が手紙を差し出すとコレットは疾風の如く速さで奪い、手紙を読み始める。
「お義姉様…」
「どうしましょうリリアンヌ!ウィリッド公爵夫人がマリーをお気に召したそうで…お邸に遊びに来てほしいと!今度のピクニックを楽しみしていると乗り気ですわ」
「ああ、どうしてこうも!」
一難去ってまた一難。
王妃の一件の事もあり、今後は大人しくさせようと思っていた矢先にこれだった。
「お母様、叔母様!私にお任せを」
「「お任せできません!」」
今までは荒業でもありながら、周りがフォローしてくれたらよかったが、今度ばかりは上手くいくはずがない。
王家主催のパーティーでは王家の親族が集まるのだから。
その中には同じく婚約者候補だった令嬢も多く参加しているのだから。
アレクシスのはとこでもあり、公爵令嬢でもある。
後から現れたマリーを良く思うはずもなく、マリーに嫌味を言うに決まっている。
「頭が痛いわ…」
「それにこの手紙には…ジョアンナ様が」
「ジョアンナ様とは…ノルマディア公爵家のご令嬢ではありませんか!父君は陛下のお従兄弟…」
同じ公爵家と言っても、血筋からして全く違う。
ノルマディア公爵家は王家の本家筋に当たるので、遠縁のサンチェスト家では雲泥の差だった。
二人は胃を押さえながら、耐え忍んだ。
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