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第五章.悪女と聖女

11.勘当

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玄関先ですべてを聞いていた二人は耳を疑った。
サングリアがコレットを見下した発言をし、マリーに対してあまりにも酷い言葉を吐いたこと。

そして王太子までも侮辱する発言をしていた事に。


「随分と酷い事をおっしゃいますのね」

「ジョアンナ様!」


二人の影に隠れていたジョアンナが現れる。


「なんて人でなしなのかしら?妹君が余りにも哀れですわね」

冷めた表情でサングリアを見る目は、かつてマリーが親族に向けられていた視線と同じだった。


「こんな酷い方の身を案じていらっしゃったのに」

「何しに来たんです!私を笑いに来たんですか」

「ハッ、私は貴女程暇ではなくてよ?本当に迷惑な方」

美しい所作で現れ、王族としての気品を損なうことなく余裕を持って接するジョアンナの態度が不愉快だった。


「ジョアンナ様、そのような」

「乳母のエイダ・キトン。貴女の身柄は拘束させていただきますわ」

「なっ…」

「貴女にはマリー・サンチェスト嬢に対して虐待を行った疑いがかけられております。それからこちらは貴女のご実家より貴女との縁は切るとの事ですわ」

「そんな!」

離縁状を渡されたエイダはそのまま連行される。
これまで公爵家の長女の乳母として傲慢な振る舞い行い、マリーに対しても虐待に近しい事をしていた事実が明らかになった。


「私は公爵家の為に!」

「まぁ、自覚がなかったなんて怖い事。でも、証拠もありますわよ」

「お待ちください、ジョアンナ様!」

エイダはそのまま連行され、サングリアと引き離されてしまった。


「お兄様、こうなった以上は解ってますわね」

「ああ、殿下との婚約解消の後、サングリアに爵位を与える件は無意味になった。陛下はせめてもの情けと言ってくださったが…公爵家はチャールズに任せる」

「お父様!何を…」

「マリーは、お前の事を案じ、万一の時は公爵家の当主に迎えて欲しいと言っていた。そうすればサングリアの体面は守れるとな…それを!」

(嘘よ…じゃあ)


例え婚約破棄となっても大人しくしていれば、跡継ぎとしての未来が約束されていた。
それを自分の手で壊してしまったというのか。


「チャールズに公爵家を任せようとも頼んだが、マリーを支えたいので辞退した」

「公爵の地位を捨てた?なんて馬鹿な…」

「お前は、どこまで性格が歪んだんだ!私の教育が間違っていたとはいえ…人格に問題があり過ぎる」

地位も捨ててマリーの世話をして一生を終えようとするチャールズを愚かだと言い放つサングリアにもはや娘に対する愛情を抱くことはできなかった。


「残念だよサングリア。君はマリーより優れていても心が貧し過ぎた。もう二度と会うことはない」

「お父様!」

「すぐに支度を」


使用人達に命令して、すぐに邸から追い出す形になった。


その後の事はよく覚えていなかった。
質素な馬車に乗せられて、王都を離れ寄ることになったが…


さらなる事件が起きることとなった。


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