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最終章.自称悪役令嬢の果て

21.悲しみの果て

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エルヴィーラの言うことは正しかった。
正論に感じたし、マリーが甘すぎる事も解っていた。


(お祖母様は優しい人だわ…)


本来ならば死刑になる所を温情をかけられたのだから、エルヴィーラも生きているだけ感謝すべきだと言っていた事は解る。


優しさだけではだめだと、甘さだけでは生きて行けない。
これまで周りに甘やかされ、守られて来た事を突きつけられた気分だった。

「マリー、お祖母様を許しておくれ。王太子妃になれば、醜い権力争いを目の当たりにしなくてはならぬ。優しく素直なマリーには過酷過ぎるが…」

「お祖母様」

「ですが、財政が困難である国を新しい視点で見極める才能を持っているマリーが王妃となれば、国を変えることもできるやもしません」


エルヴィーラは、自由過ぎるマリーの行動が武器にもなることを解っていた。
型にはまった姫では、今の世を生き抜くことは難しいと思った。


「ジョアンナ様ではどうしてもできないことをマリーならできると思っています」

「はい…」

「この先待っているのは辛く険しい道であるかもしれません…ですが忘れてはなりません。マリーは一人ではありません」


一人ではない。
後ろを振り返れば支えてくれる人がいる。


(私は…)


アレクシスやジョアンナ達がこれまで支えてくれたように、これからもきっと支えになってくれる。


「めげてはいけません。貴女はこの先もっと辛い目にあることもあります。裏切られることは何度もありますわ」

「はい、お祖母様」


サングリアとの決別は避けられない。


けれど、引き戻すことはできない。


「私は前だけを見て生きて行きます」

「それで良いのです…それで」

エルヴィーラは心の中で泣いていた。
どんなに愚かであっても孫が憎いわけはない。

だが、取り返しのつかない所まで来てしまった以上はどうにもならない。


せめてマリーだけでも光の下で生きて欲しい。
サングリアは闇の中でしか生きられないが、国外追放や死刑にならないだけマシだと思った。


両陛下は、サングリアの罪を知った上で、マリーの姉であることを考慮して貴族が罪を犯した者が入れられる塔にて一生を過ごすことを命じた。


そこでならばまだマシだった。
食事は質素であるが、地下牢よりも日当たりはマシだ。

世話をしてくれる下女もいる。

本来ならば地下牢に入れられ、鉱山で重労働を強いられてもおかしくないというのに、最後まで情けをかけてくれた王に心から感謝をしたのだった。




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