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第一章光の少年と癒しの歌姫
3奇妙な共同生活
しおりを挟むレオは翌日も居座っていた。
「小僧、お前はまだ帰らんのか」
「ああ」
「なんて図太いんだい!」
エリーと口喧嘩が絶えずにいるが、店の掃除や力仕事を手伝ってくれているのでオンディーヌは助かっていた。
「オンディーヌ、今日の昼食はなんだ」
「このクソガキ!オンディーヌに馴れ馴れしくするんじゃないよ」
「何だ?ジェラシーか?」
「ぶっ飛ばされたいのかい」
レオは稀に見える鋼の精神の持ち主だった。
一方では図太いともいえるが、エリーの呪いを弾く程の光魔法を持っている。
なので呪いは効かないのだ。
「それにしても、本当にここの水は美味いな。食事もだが…」
「ここの水は聖水だよ」
「ほぉ?それはすごいな…ばあや、お代わり」
「誰がばあやだ!」
お茶の時間まで言い合いをする二人は既に定着しつつある。
「お婆様、お茶の準備ができましたよ」
「そうかい」
「アップルパイか!大きくカットしてくれ」
「アンタはきれっぱしを食べてな!」
エリーはパイが大好物だった。
中でも林檎が大好物で毎日アップルパイを食べる程だ。
(なんていうか白雪姫と魔女のお婆さんを思い出すわ)
林檎を持つとまさに重なる。
「老婆と林檎か…毒林檎の方が似合うな」
「レオ…」
口には出さないが、心の中で思ってしまったオンディーヌはこっそり謝ることにした。
「どうしたらこのクソガキを毒殺できるかね?毒を盛ってもピンピンしているし」
「ああ、俺は子供の頃から度胸試しで毒を飲んでいたからな」
((おかしいだろ!))
オンディーヌとエリーの心は一つだった。
どんな子供時代かと思ったのだが能天気すぎるレオに言っても笑って終わりだろう。
「レオ、足りないなら私のを食べる?」
「オンディーヌの取り分が無くなるだろ」
「大丈夫よ」
食い意地が張っているが、優しさもある。
「オンディーヌ、重い物は持たなくていい」
「えっ?でも…」
「男の仕事だ」
少し重い物はティーセットを運ぼうとしても率先してレオは運ぶし、椅子に腰かけようとしたら椅子を引いてくれたり気遣いができる。
(なんだか初めてかもしれない)
婚約者のキャルティは気遣いなんてしてくれたことはないかった。
「ありがとうレオ」
「気にするな」
エスコートもスマートで優しい。
「老婆殿もどうぞ」
「要らんわ!」
同じくエリーにもエスコートするも一言余計だったのだが、この何気ない光景がオンディーヌは好きだった。
「二人共お代わりのパイは?」
「「もちろん!」」
普段水と油でありながらも結構いいコンビだった。
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