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第三章集う光の使者
16リリーの願い②
しおりを挟む最初は嫌でしかなかった。
大好きな両親と大好きな友達と無理矢理引きはされて。
けれど今は良かったと思っている。
リリーは聖女になれて良かったと思う。
人としても成長ができた事、そして時として大切なものを守る為には体を張らなくてはならないことを知った。
「陛下、私は聖女と過ごした時間は宝物でございます」
「ありがとうリリー、どうか幸せに…そなたの愛する者と幸福である事を願っているぞ」
「はい、ありがとうございます」
王が認めた以上は誰も口がはさめないでいた。
「せめてあと一つ、何か望みはないか?」
「でしたら今回のオンディーヌ様の事でお願いがございます」
「何?」
リリーの言葉に王は顔を顰める。
「私はあの日罪を犯しました。オンディーヌ様は無実であるのに私は…」
「リリー様、仕方のない事ですわ」
「いいえ、私は怖くて声に出せませんでした。多くの貴族の前で私は平民故に恐ろしかったのです。学園内では身分が関係ないと言われても身分差別はありました…学園の外もそうです」
「貴様!」
リリーの言葉は貴族達を侮辱する言葉として受け取られても仕方なかった。
「貴族と平民の間に差別があるのは当然です。ですが、その為に真実を捻じ曲げる事は許されるのでしょうか。私が望むのは平民も発言の自由が許される事です…第三者を挟んで」
「第三者とな?」
「はい、双方の言葉を公平に聞いてくださる方がいれば今回の事は塞げたかもしれません。冤罪になったオンディーヌ様が万一命を落としていたらどうなっていたでしょうか。私を一人前の聖女にするべく導いてくださったのは誰か…そして言葉の一番の功労者は誰か」
リリーは非難の声を上げる貴族達の前にい踏み出す。
「未来の聖女が現れた時、同じ過ちを繰り返さないためにどうかお願い申し上げます。そしてこの度関わった方は多いでしょう…貴族達を取り締まる法律をお作りください」
「聖女の座を降りておいてなんと傲慢な!」
「傲慢?さっきから黙って聞いていれば何様ですの?」
アンジェリークがリリーを庇う様に前に出た。
「王女殿下!」
「貴方は聖女を王都に連れて来たと言うだけで何もしていないと言うのに、何様です」
「しかし!」
「彼女は我が国の聖女です。聖女の座を降りても大事にされてしかるべきなのです。国の為、民の為…彼女は民の心の叫びを代弁しているのです。そこの言葉、私が忘れませんわ」
「アン王女…」
「この国の王位継承者として必ず実現します」
アンジェリークの言葉に周りの貴族は押し黙るしかなかったが、これで終わるはずはなかった。
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