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第一章
7父の後悔①
しおりを挟む三十年前の大飢饉の影響で領地持ちの貴族は打撃を受けた。
私が治めるランフォード領地も例に漏れる事はなかったが、幸いにも他の領地よりもマシだった。
とは言え、国からの援助金でしのげるはずもなく。
領地を離れて飛び回り、貿易をする為に多忙だった私は邸に帰られるのは滅多になかった。
その所為で子供達の教育は全て妻のダニアに任せることになった。
姑も私が子育てに関わる事を良く思わず、そんな暇があるならば領地をなんとかしろと。
もっと稼げと言われていた。
本当はもっと子供達と触れ合いたかったが、シェパードは成長するごとに私を無視するようになった。
理由は解っている。
私が甲斐性無しであるからだろう。
対するマリーは優しい子に育ってくれた。
「お父様、無理しないでくださいね」
「マリー」
「私、お父様がお金を稼ぐよりも一緒にいてくれた方が」
姑とダニアは邸にいないで稼ぎに行けと散々言うが、マリーだけは違った。
だが…
「マリー!何をしているの!お父様は忙しんのよ」
「まったくお前はダメだな!父上に似たらダメな大人になるぞ」
私がマリーと二人でいるとダニアとシェパードは責める。
「何て事を言うんだ。シェパード!」
「事実です。父上もような無能は一人十分です…どうせマリーは跡継ぎになれませんし?無能で平均的な事も出来ない…」
「シェパード!」
この時私はシェパードに強い怒りを感じた。
「何するんですか」
「お前はそこまで根性が曲がったか…思い上がりもたいがいにしろ」
「貴方、何を…」
「お前は何様だ。父親に向かってそんな口を利くとは…あげくに妹をそうやって虐げ苦しめ苛めていたのか。ダニア!義母と揃ってマリーを虐げていたのか」
「何を言うの?躾よ?」
よく見ればマリーの洋服は古着だった。
私が贈った洋服は着ていない。
「シェパードには良い服を買い与えてマリーはこんな服を」
「当然ではありませんか…そんな事よりも」
「そんな事?もう良い。マリー、今からお父様と買い物に行こう」
「え?」
「今日は休みだからな。一緒に新しい服を買いに行こう…臨時収入があったんだ」
胸倉を掴んでいたが殴っても意味がない。
「知り合いに腕の良いデザイナーがいてな。マリーの事を話すと是非会いたいと」
「私を?」
「ああ。お父様とデートしてくれないか?私の可愛いお姫様」
優しく抱き上げると嬉しそうに笑う。
この邸で私も孤立しつつあったが、マリーの笑顔だけが私の幸せだった。
「ちょっと貴方、そんなお金があるなら私のドレスを新調してくださらない?」
「必要ないだろ?先日も新調したそうだな…」
「マリーに買うぐらいなら!」
「生活費で支払うんじゃない。私の個人的な財産だ…それともなにか?お前は散財しているのに私には使うなと?煙草も酒も控えて浮いた金だ」
無駄だと言って酒や煙草を禁じられた。
そして私が個人的に使える金もほとんどなくなったが、こっそり貯めておいたものがある。
その金で服を買おう。
それから今度から贈り物をする時は頭を使うべきだと思った。
しかし、私の浅はかな態度が更にマリーを苦しめる事になるとは知らなかった。
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