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第二章
7陰口
しおりを挟む私の知らないお父様のお話を聞けて嬉しかった。
しばらくしてお父様は挨拶を終えているので戻って来るのを待っていたら。
「見て」
「このような場所に堂々と来るなんて」
「本当に図々しい女」
ヒソヒソと囁く声が聞こえた。
「アンリ」
「ああ」
視線の先にいるのはお母様で夫人達はわざと聞こえるように言っているようにも見える。
「あら?こごきげんよう」
「成金のようなドレスがお似合いだわ」
「本当に」
陰口だけで終わらず、夫人達はこれ見よがしにお母様のドレスを侮辱した。
露出度はそれ程ないのにどうして。
「赤いドレスなんて祝い事ではないのに」
「なんて非常識なの」
複数でお母様を責める夫人達はお母様を嘲笑い、何事かと人が集まって来る。
「今度は何方に取り入ったのかしら」
「モンハン伯爵にその体で誘惑したのかしら?」
酷い。
お母様は一度だって仕事で誘惑するような真似をした事はない。
商売に誇りを持っているお母様はそんな真似をしないのに。
「止めに…」
「いや、待て…」
「お止めなさい」
私がお母様の元に向かおうとするもオリアナ様に止められた。
「手出しは無用です」
「ああ、必要ないな」
「でも…」
目の前で起きているのにどうして?
「覚えて起きなさい。陰口を吐く人間に真っ向から立ち向かっても勝てない事を」
「ですが…」
「社交界では上手く立ち回った方が勝ち、頭を使わなくてはならないのです」
捕まれた手に力が籠る。
私が今すべきことはお母様を見守るだけだ。
なんて無力なのだろうかと悔しい思いでいっぱいになるのだけど。
でも…
「え?」
「はぁー、なんて悪趣味な」
「まぁ、自業自得でしょうね?本当に懲りない方」
お母様は素敵な笑みを浮かべていた。
責められているのにまるで楽しんでいるかのように。
「それは光栄ですわ」
「は?」
「やっぱりこの美貌が罪なのですね?他の皆さまを嫉妬させてしまって…本当に申し訳ありませんわ」
「何を…」
「美しいとは本当に罪ですわ」
扇を片手に微笑む笑顔はなんというか…
「馬鹿な事を」
「私達が言いたいのは!」
お母様に嫌味を言う夫人達はイライラしていたが気づきながらも神経を逆撫でする発言を続けた。
「女として男性に求められないのはお辛いでしょうに…」
「なっ!」
「旦那様との関係も上手く行っていられず、今日もお一人で参加されるなんて不憫ですわ」
私は耳を疑った。
一人で参加している?
それって…
「あら?旦那様がいらっしゃいましたわね」
「なっ!」
視線の先には一回り若い女性をエスコートする中年男性。
あまりにも体を密着させている。
社交の場ではやり過ぎだと思うがあの二人って…
「ああ、嫌味を言っていたモラボン伯爵夫人の夫だ」
「ちなみにですが、浮気相手はその奥方の姪だ」
えぐい。
王都の社交界はそんな恐ろし事がされているの!
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