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第三章
9アレーシャの決意②
しおりを挟むアレーシャはカナリアならば自身が現場に出向き、ミリアの名誉を守りながらセリアの気持ちを確認すると思った。
そういう女性だと思っていた。
(だけど今の段階でカナリア様が行くのは危険だわ)
宰相の妻でもあり祖国でも色んな噂が流されている。
しかもオイシス家との因果関係をネタに噂を流される可能性がある。
流されても逆手に取るだろうが、これ以上傷ついて欲しくなかった。
「ユリア、私はカナリア様を守る義務があります。姉として、大公妃としても」
「はい、承知しております」
「何よりミリアは私に子ができないと言う絶望に光を与えてくれたのです。そのミリアを傷つけるならばどうなりますか?」
「我らの敵ですわ」
「そうです。このような侮辱は許しません」
他国の王族を平民が侮辱すればどんな目に合うか思い知らせてやればいいと思った。
増長している男には特に。
「上手く立ち回らなくてはなりません。敵に隙を見せず、容赦なく叩き潰す為に」
「その為にも準備が必要です」
「ならば夫婦そろって行こうではないか!」
バァン!
「びぇぇぇ!」
「ああ、すまん!驚かせたか」
我が子を片手に抱きながら現れたのはレオンハルトだった。
「盗み聞きですか」
「人聞きの悪い事を言うな」
「事実でしょうに」
部屋の外で聞き耳を立てていた事を咎めるユリアに視線を逸らせるレオンハルトは図星だった。
「話は全て聞いていたようですね」
「ああ!」
「明るく返事をしないでください」
深いため息をつきながらユリアは思った。
アレーシャが単身で行くことを許すはずがないので、この際仕方ないと。
「レオンハルト様、今回は迂闊な真似は許されません」
「解っている」
(本当に解っているのか不安になって来たわ)
ユリアはレオンハルトを軽んじる気は全くないし、信頼はしているが、腹黒さが足りなかった。
ある程度の忍耐力はあるが、根っからの騎士体質故に色々思う所はある。
「アレーシャ様、万一のことがあります」
「ええ、解っているわ」
ユリアはサステナル家に乗り込んだ際にアレーシャが侮辱される事があればレオンハルトが暴走しないようにと目なくてはならないが逆に使い道はあると判断した。
こうして大公夫妻は綿密な計画を立てながら隣国に旅立つ準備を整えたのだった。
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