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第一章侯爵令嬢の婚約者(仮)
32復学のピンチ
しおりを挟む翌日、傷もすっかり完治した。
使用人の皆さんは俺の傷が一日で治ったことに驚いていたが、元から丈夫だし傷の治りは早い方だった。
「いいえ、凍傷…しかも私の氷魔法は普通は二週間は安静ですわ。普通なら重傷を負ってましたのよ」
「そうなの?じゃあ十年で慣れたんだな」
わがまま王子が癇癪を起すのは珍しくない。
少しでも気に入らなかったらバンバン魔法をぶつけられたから頑丈になったんだな。
魔力が少なく加護もない俺だけど魔力がわずかでもある人間は防御力がある。
俺もわずかだけどあったし、後は爺ちゃんから貰ったお守りのおかげで衝撃も少なかったんだ。
「もう何も言いませんわ」
「私も何と言うべきか」
変な所で息がぴったりな二人だな。
「それで話しってなんだ?」
「そうでしたわ。来週から私もそろそろ学園に復学しなくてはなりません」
「長い間休んでいたもんな」
「ええ、長期休みを挟んでも新学期を迎えるので。手続きを取って進級試験を受ける形で休ませていただきました。まぁ学園側も来てほしくなかったでしょうし」
「そう悲観的になる必要ないだろ?」
「ありがとうございます。ですから心機一転として来週から復学ですわ」
気持ちの整理もついたんだろう。
学園生活は残す所あと一年だし、ちゃんと卒業をしたい。
元から特進科であるレティーは進級に関して問題ないだろ。
休学と言っても一か月も休んでいるわけじゃないし、事情を考慮される。
問題なのは俺だ!
奨学金で通っている以上、二週間以上の欠席はまずい!
「アレックスは錬金術科でしたわね」
「うん…」
「成績の方は問題ありません。ただ問題もありますの」
やっぱりそうなるか。
授業は真面目に参加していたし、成績も問題はなかったはずだ。
問題は出席日数だ。
「奨学金制度を利用している生徒は一年の内に休める日数が決まっています」
「既にその日数を超えているということか」
「はい…」
このままじゃ退学じゃないか!
今までの努力が水の泡になってしまう。
王立学園に通えるからこそ薬の実験も無償でできたし。
実家にわずかながら仕送りもできた。
今更他の学校に編入するとしても学費は相当だ。
一応貴族だから普通の学校に通うのは難しいし、かといって貴族院は途中編入の場合一年間の授業料を一括払いだ。
「学歴、中退なんて…」
例え田舎貴族であっても学校を中退されたなんて笑いものだ。
この先就職活動はどうなるんだ!
いや、それ以前に実家で作っている米や野菜が俺の所為で売れなくなったら?
最悪だ!
「アレックス。復学の方法はありますわ」
「え?」
「今の貴方は侯爵家の婚約者。通常は学費も出すのは当然です。勿論これまで王太子殿下の学費は我が侯爵家が出してましたの」
「…王家ってそんなに貧乏なのか」
「まぁ…」
聞きたくない事実を聞いてしまった。
「ですが、貴方の性格上お嫌でしょう?」
「うん…そんなことしたら不正を疑わられるよ」
今後俺が努力しても、何を発明しても侯爵家のおかげだと言われ正当性が認められない。
「最後の選択として特待生制度を利用するのです」
「特待生?」
「はい、特待生は学園内でも数名選ばれます。ただし、その場合寮生活を行うことになりますし…試験も厳しいでしょう」
俺の希望する専攻は錬金術科。
少し昔の錬金術師とは異なり今では多くの物を作りだしている。
魔法とは異なりその場にある物で色々作り出しのだが、今では生活に必要な消耗品も錬金術で作れるのだ。
ただし、錬金術は忍耐との戦いだった。
現在では国が定めた国家試験を受け資格を得た後に、見習いから始まるのだ。
王立学園では錬金術科で優秀な成績を取れば卒業と同時に準錬金術師の資格がもらえる。
通常見習い錬金術師から準錬金術師、正錬金術師の三段階に分かれている。
準錬金術師で一人前扱いを受け、正錬金術師は独立して一人でも十分食べていけるレベルだ。
その中で大錬金術師が最高位であるとも言われている。
王立学園でも十年に一度、正錬金術師が誕生するかしないかの狭き門だ。
準錬金術師だって大変なんだ。
それでも魔力がほぼない状態の俺が食べていくには錬金術師になるのが一番だった。
国からの研究費の援助も出るし、年金だって至急されるんだ。
退職金だってある!
なので諦めるわけには行かない。
俺に選択の余地はないからね!
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