ある公爵令嬢の生涯

ユウ

文字の大きさ
26 / 408
第一部目覚めた先は巻き戻った世界

24失言

しおりを挟む
若手の優秀な貴族や官僚はサロンを開き勉強会や改革を話し合い、国の発展の為に情報交換をしている。


いわばサロンを道楽だと馬鹿にすることは彼等を侮辱することだった。


「ヘレン、言葉を慎みなさい」

「何故ですの?」

「サロンは身分問わず政治や哲学を学ぶ場ですのよ」


平民、貴族と関係なく志を共にする者達が交流し、国の発展の為に話し合うことは重要だった。


「だとしても所詮は趣味ですわ」

「お茶会や夜会に参加できない者が参加する場所だ」


そもそもサロンなど必要あるのか?と疑問を抱く。

「お姉様は夜会に積極的に出すべきですわ。サロンに参加する暇があるなら…」


喉から言葉が出そうになった。
これまで夜会に行かなかったのではなく連れて行ってもらえなかった。

行ったとしても放置された。


「この…」

「ミシェル様」

ここで感情的になってはダメだと言い聞かせる。
怒りのまま言い返しても得る物はないと学んだエステルは微笑を浮かべる。


「サロンでの勉強はためになるわ…何事も勉強ですもの」

「エステル!」

「夜会にでることも大切だし貴方の言う通りかもしれないけど…学んで無駄なことはあるのかしら?」


感情を表に出すことはしてはいけない。
常に頭で考え行動することを心掛けて全体を見渡す。


「夜会でも音楽や教養の話がでますわ。サロンに参加される方は上流階級の方も多くおります。先輩方から学ぶべきことも多いかと」

ここで夜会を軽視することはできないがサロンの必要性を先に出す。


「でも…」

「貴方の言う通り、夜会は貴族としての義務。ですが夜会に参加なさらない方とのお話も勉強になります。常に学ぶことは大切かと存じます…あくまで私の考えですが」


ヘレンが言葉を発する前にエステルは自分の価値観だと言う。
そうすれば相手に自分の考えを押し付けることもなく平和的に解決できる。


「なんて立派なんですの」

「そうですわ。サロンは交流の場ですわ。夜会とは違いますが」

「流石ですわ」


反感の目を持っていた貴族達は感銘の声をあげる。


「私は身分問わず交流していただきたくサロンを開きましたわ…それを道楽だなんて哀しいですわね」

「フォーカス公爵夫人!」

大勢の中に現れたフォーカス公爵夫人に貴族達は言葉を失う。



「ヘレン嬢、人には価値観の違いがございますわ。それを相手に強制するのはよくありませんわ」

「強制なんて…」

「夜会もサロンも大事な交流の場です。王妃様はサロンでの交流を大切にしております。何故か解りますか?」

「いえ…」


「貴族だけでなく平民の言葉にも耳を傾ける為ですわ。我らは決める立場がある以上責任ある行動する為に知らなくてはならないのです」


夜会だけでは知り得ない情報を得て交流を図ることが必要だったからだ。


「ですがヘレン様はサロンがお嫌いのようで残念ですわ。またご招待しようと思ってましたのに」

「え!」

遠まわしに二度と邸に来るなと告げられる。


「カルロ様も残念ですわね」


「フォーカス夫人!」

優しい笑顔を浮かべながらも一切の容赦がなかった。


「エステル様、どうかまたいらしてくださいませ」


「はい喜んで」


「では、皆様失礼しますわ」


微笑んで去っていくフォーカス公爵夫人だったが、貴族達の視線は一瞬で変わる。


「流石ですわね」

「フォーカス夫人のお墨付きをいただくなんて…」

「それに引き換え、ヘレン嬢はなんて非常識なのかしら」


囁きが止まることもなくその矛先はカルロに向く。


「サロンを批難するなんて…」

「カルロ様はちゃんとした教育を受けていないのかしら?」

「そうですわね…お育ちを疑いますわ」


サロンを利用する貴族は多く、主催者のほとんどが上流階級の貴族が多い為、サロンの否定はあれらの否定となるのだった。

「私が出るまでもなかったわね」


「お母様」




ヴィオラとミシェルは笑みを浮かべる。言葉は間違えれば何倍にも跳ね返ってくるので注意しなくてはいけない。


特に社交の場では命取りになるが、ヘレンは知らなかった。


「待たせてすまない」



ようやく解放されたロバートがサイレス伯爵と一緒に現れる。

「なんだい?この騒ぎは?」

「なんでもありませんわ」


困惑するロバートに笑顔で応対する。


「ヘレン!」

「お母様!」

人混みの中入って来たのはジュリエッタだった。


「エステル」

居なくなったヘレンを探しに来たジュリエッタだったが、傍にエステルがいることに気づく。


「久しぶりですね」


「はい」


返事をするだけで会話はなかった。


「お義母様に無理矢理連れて行かれたから心配していたのですよ?困っていませんか?」

「いいえ、何不自由ありません」

毎日学ぶことも多く、充実している。

「たまには帰って来なさい」

「いいえ、私の家はアルスター侯爵家ですわ。叔母様」

「なっ!!」


耳を疑うジュリエッタだったがもう一度告げる。


「お姉様何を言うの!」

「私の両親はロバートとヴィオラですわ」


戸惑うヘレンにきっぱり言い放つ。


「エステル…」


表情を強張らせるジュリエッタに代わらず笑みを浮かべる。


隣には元父がいるが変わらず微笑む。


「勉強が忙しく夜会に顔出せずお詫び申し上げますわ、ラウル叔父様」


「エステル!」


「声をあげないでくださいませ。私が至らないばかりに心配をおかけしましたが優先するのは跡継ぎになるお勉強でございますわ。どうかお許しくださいませ」

咎めるような視線を受けながらも笑顔を浮かべる。

「お前は自分が何を言っているのか解っているのか…」

「はい侯爵令嬢ならび公爵令嬢として発言には責任を持っております。ご心配いただき痛み入りますわ」

優雅に微笑みあくまで感情を表出すことなく対応する。


「私はお祖母様の庇護下にございます。しばらくは邸に留まり勉学に励むように仰せつかっておりますので…当主の命令は絶対ですわ。何か問題でも?」

「それはそうだが…」

ここで怒鳴り散らせばラウルの立場は悪くなる一方だった。


「長らく心配かけたことは詫びるが私の家庭のことは口出し無用だ」

「兄上!」


「エステルはとてもいい子だ。ヴィオラもすっかり元気になってね…来年は夜会にも参加するのを楽しみにしているんだ」


「ええ、今から楽しみで仕方なくて」

嬉しそうに笑みを浮かべるヴィオラはエステルを抱きしめる。


「エステルは本当に可愛い娘ですわ」

「お嫁に行かせたくないぐらいだ」

「お父様ったら!」


仲睦まじい光景にジュリエッタだけでなくラウルも固まった。


まるで本当の家族のようだった。


「何をおっしゃっているんですか!お姉様は…」


「ですから伴侶は心豊かな方がいいわね」

「は?」

ヘレンの言葉を遮りながら放たれた言葉にカルロは驚く。


「身分は低くても優しく心ある強い殿方を伴侶に迎えたく思いますわ」

「「「えっ!!」」」


広間に波紋が広がる。
ヴィオラの言い方ではカルロがヘレンの婚約者だと受け取られてもおかしくない。


「アルスター侯夫人、どういうことですか!」

「そのままの意味ですわ」


「そろそろ時間のようだな」

懐中時計で時間を確認する。


「私達はこれで失礼するよ?いずれまた」

「はい…兄上」


引き留めようにも時間が押しているので敵わずその場に残され、居心地の悪い空気に耐えるしかなかった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています

高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。 そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。 最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。 何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。 優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛

Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。 全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

処理中です...