ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第三部騎士科の道

21.敵意

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エステルが地方の学校に通いだしたのと同時にヘレンは王都の貴族院に在籍した。


メトロ学園とは雲泥の差ではあるが、ここも名門校だった。
ただし絶対実力主義のメトロ学園とは違うので勉強が出来なくても入ることは可能だった。

当初は、ヘレンもメトロ学園に行きたいと言ったが完全寮生活をヘレンができるわけもなく、娘を溺愛する両親が身分の低い人間と一緒では悪い影響ができると言って許さなかった。


ヘレンの友人もジュリエッタが厳選して選んだ令嬢ばかりだったが、常にヘレンのご機嫌を伺うだけで友人というよりも取り巻きだった。


社交界でも学園でも大きな顔をしているが、誰もヘレンを慕ってないことを。
逆に、婚約者も両親からの愛情も全て奪われあげくの果て王都から追い出したのは元両親だと言う噂も流れていたのだ。


そんなことをヘレンは知ることもなく、今日も社交の場に出るヘレン。


「ごきげんよう」

「あら、ヘレン様。ごきげんよう」

豪華なドレスを身に纏うヘレンは社交界でも目立っていた。


「今日もお美しいですわね」

「ありがとうございます。美しく着飾るのが女性の嗜みですもの」

「ええ…ですが先日のお茶会のドレスとは違いますのね」

「もちろんですわ。常に流行から後れてはいけませんもの」

この言葉に令嬢は苛立つ。
遠まわしに同じドレスを着るのは時代遅れだと言っているようだった。

「エレニー様もドレスは新調なさった方がよろしいのでは?そのような古臭いドレスでは浮いてしまいますわよ」

いつも同じようなドレスを着ている令嬢。

ミシュラン伯爵令嬢ことエレニー。
着飾ることをしないが清楚感のある装いをしており美しい令嬢だったが、質素すぎる装いを咎める。


「ですが、このドレスは母から譲り受けたものでして」

「まぁ!お古を?ドレスを買うお金もないのですか!」

「ヘレン様!」

傍にいる他の令嬢があまりにも酷いと思い咎める。


「どうしました?」

「エレニー様を貶めるような言葉はおやめください」

「貶めるだなんて!私は事実を言ったまでですは…それにご夫人はお亡くなりになったと聞きますのに…そのドレスを身に纏うなんて不吉ですわ。陰気臭いですし」

「なっ!」

黙っていた令嬢もあんまりだと思った。
ミシュラン伯爵家は辺境の地を守る一族であるが金銭的に貧しいわけではない。

無駄に贅沢をしないだけだった。
その理由として領地が豊かではなく、戦争が始まれば領地は戦場となるので領主が贅沢するならば兵や騎士やその家族にも不自由ない生活をさせたいという領主の思いやりだった。


ドレスをあまり新調しないのもエレニーの気遣いだったし、亡くなった母親の残してくれたドレスを着て一緒に社交界に出たい。

そんな思いを踏みにじられた気分だった。


「母にも夜会の形式を見せて差し上げたかったのです」

「エレニー様」

「母は体が弱く夜会やお茶会にあまり出れませんでしたし…だからこのドレスを着て…なのに陰気臭いだなんてあんまりですわ」

泣きそうになるエレニーを支える友人。


心無い言葉を吐くヘレンを冷たい目で見る令嬢達だがヘレンは気づいていない。

「おかしなことをおっしゃるのね?死んだら天国に行ってそれっきりですわよ」

「ちょっと!」

「エレニー様、そうやって亡くなった方に縋るのは子供のすることですわ。貴族の令嬢として失格ですわよ」

ヘレンからうれば何時までも死んだ人間のことを思うなんて馬鹿馬鹿しいことで、公式の場にそんな気持ちを持ち込むのは間違っている。


「なんてことを」

「信じられませんわ」

「はい?」

表向きは大人しくしていたがここまで酷いことを言われては黙っていられない。

「エステル様は…褒めてくださったのに」

ぽつりと囁かれた言葉に空気が一変する。


「母の形見のドレスで夜会に出ることを素敵だといってくださったのに…」

「あの方だったらきっと褒めてくださったわ…」


「エステル様だったらそんな酷いことを言わなかったわね」


賛同するようにエレニーの友人はエステルを思い出す。


「お姉様はファッションセンスが解らないのですわ。私はエレニー様の為に…」

「だったらもう少し言葉をお選びになったらどうなんです」


「無理ではなくて?だって姉から婚約者を奪って王都から追い出した方ですもの」


あくまでエレニーの為に言ってやったのだと言う上から目線にカチンときた令嬢は言葉の刃を突きつけた。

今社交界で噂になっているのはアルスター伯爵家の隠居だけではなく婚約騒動以降のことだった。

「人聞きの悪いことを…」

「社交界では皆思ってましてよ?姉の婚約者を寝取って奪い、大制の前で婚約破棄をさせたとか。姉に劣等感を抱きその仕返しをしたとか?」

「社交界にわざと出さないように辱めていたも言われてますわ」

「そんなわけ!」


ないと言い切ろうとするも言葉を遮られ告げられた言葉は屈辱的なものだった。


「エステル様とヘレン様噂ではね?」

「完璧な姉を持って劣等感を抱くのは仕方ありませんわ」

「エステル様はご立派ですものね」


可哀想にという視線を向けられヘレンは顔を赤くする。

「もういいではありませんか」

「そうですわね。行きましょう」

「ええ」


エレニーを連れてその場を去り、ヘレンは尾の場に置き去りにされてしまった。


(何…)


訳が解らないでいたが、こんなのは序曲に過ぎないことをヘレンは知らない。


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