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第四部帰省とお家事情
1.旅は道ずれ
しおりを挟む豪華客船の前に立ち、一同は固まる。
「これ…本当に船ですか」
「大きいです」
平民組は未だに目を疑い、同じく貴族出身のルークは言葉も出なかった。
「忘れてたわ。アンタの身分」
「そうですか?」
本人に自覚はないが四大公爵家の孫娘なのだということを今更ながら思い知るミシェル。
「あら?どなたでしょう」
「こちらに向かってきますね」
二人の男女がこちらに向かってくる。
「お嬢様!!」
「セレナ?」
ブンブンとハンカチを振るのは懐かしの乳母の姿。
「うわぁー…すげぇ美人!誰だよ?エステルの知り合いかよ」
ユランの好みだった。
巨乳で美人だったので久しく夢を見た。
「乳母です」
「は?」
「私の乳母です」
夢は一瞬で打ち砕かれた。
「乳母?嘘だろ!あんな若くて美人な人が…折角のストライクゾーンが!」
夏は出会いの季節。
バカンスをエンジョイすることを決めたユランはセレナを見た瞬間ようやく幸運が味方をしたと思ったのだが、相手は自分よりずっと年上だと知りショックを受け。
「エステルぅー…」
泣き言を言いながらエステルにからもうとした時だった。
ヒュン!
風を切るような音と同時にユランの喉のギリギリにあたる木の棒。
「ひぃ!」
「お嬢様に不埒な行為は許しません」
(何この人ぉぉぉ!)
真夏の日差しもサヨナラする程の絶対零度となる。
「お嬢様から離れなさい」
「ぎゃあああ!」
太腿のガーターベルトに隠しておいたナイフを取り出し構える。
(何この二人!!)
最初こそ好みだと思った女性はとてつもなく恐ろしい女性だった。
「馬鹿とね」
「馬鹿ね」
サブローとミシェルは同情するどころか自業自得だと言って助けようとはしなかった。
「エステルお嬢様の乳母のセレナ・シャーリーと申します」
「護衛騎士をさせていただいておりますクニッツと申します」
二人は改めて挨拶をする。
ユランに対する態度とは正反対だった。
「ルーク・インディーズです」
「アリス・ハントです」
「ジークフリート・オルガです」
「サブローと」
順番に名前を名乗り挨拶をしていく。
「よろしくお願いします」
「お嬢様、出発のお時間ですのね」
「そうね…とりあえず船に」
立ち話をきりあげ彼等に船に乗るように促し、ユランを放置し全員船に乗った。
「おい!俺を置いていくなよ」
「早く乗りなさい馬鹿ユラン」
ミシェルの手厳しい一言にユランは項垂れながらもしくしく泣きながら豪華客船に乗った。
船の中は言うまでもなく豪華だったが…
「エステル、私の気の所為かしら?」
「いいえ、私も流石に…と思ったのですが」
二人して表情が引きつる。
終始笑顔のセレナには悪いが、言わなくてはいけない。
「セレナ」
「はいお嬢様」
「何故お客様が私達だけなのかしら?」
嫌な予感がする。
当初は普通の船で帰る予定だったが、道中何かあっていけないと言われ船はヴィオラが用意すると言われたのだ。
そうなると質素な船旅は望めないと思っていたが、これはやり過ぎだ。
「本日の乗客は皆様だけですわ」
「「「えええ!!」」」
「アルスター家が誇る船で旅をお楽しみください」
「自家用ってレベルじゃないわよ!!」
ミシェルが色々規格外だと怒るのだがセレナはしれっとする。
「当然です。アルスター家のお嬢様を貧相な船に乗せられません。ご友人もご一緒ならば安全で快適な旅を楽しんでいただくべく私がすべて手配いたしました」
「余計楽しめないわよ!!この子達は平民よ!」
「何事も体験すべきです」
「アンタの乳母、頭のネジが緩んでるんじゃない?」
嫌味ではなく本気で思ったミシェルは大丈夫なのかと尋ねる。
「すいません、これがセレナの通常運転です」
「アンタの周りは常識人はいないわけ?」
楽しい旅は危険がいっぱいながらも船は王都に向けて出発した。
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