ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第四部帰省とお家事情

36.血の繋がった他人

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久しぶりに再会を果たしても何の感情もなかった。


「エステル、お前の仕業か!」

数年ぶりの再会だと言うのに元両親の向ける視線はそれは冷たく、親の仇でも見るような目だった。


「なんのことです」

「しらばっくれないでちょうだい!ヘレンを陥れるなんて!」


今の現状を全てエステルの所為にするジュリエッタは流石というべきか。


「人の所為にするのは母親譲りか…つーか、このおばさん本当にお前の母親か?」

ユランの言葉にジュリエッタが言葉を失う。

「おばっ!!」

これまで美しいともてはやされたジュリエッタにとって屈辱だったが、そんなことも気づかずサブローが距離を保ちながらさらに暴言を吐き、アリスも悪びれもなく続く。

「化粧、濃すぎてこしゅぎて気持ち悪いぞうらめしか

「かなり肌が荒れているのでしょうか?厚化粧が酷いです」


二人には一切の悪意がないので余計質が悪いが、一番はここにいる。


「皆さん、もう少しオブラートに!」

「ルークさん」


「せめて個性的だといってください。本当のことを言ってはダメです」

フォローするどころか一切フォローになってない。
拳を握り震えるジュリエッタの怒りに気づかない彼等はさたに続ける。


「けど、本当にエステルさんの生みの親ですか?似てませんね」

「まぁ、人間大人にると性格の悪さが顔に出るからな…特に目つき悪すぎだろ?」

「ああ、性格ブスという奴ですね!」

ポンと手を叩き納得するアリスの声はとても明るかった。


「なんと無礼な…」

耐えがたい仕打ちを受けたジュリエッタは怒りの矛先をエステルに向ける。

「エステル、貴方は貴族の令嬢としての誇りも捨ててしまったのですか!貴方はヘレンの名を汚し、アルスター家の名に泥を塗ったのですよ!」


「あげくこんな低俗で身分卑しき者と付き合うとは」

ジュリエッタはヒステリックに叫ぶも、ラウルは一応貴族としての礼儀を弁えてか穏やかに話すも怒りが籠っていた。


「ヘレンの姉だから大目に見て甘やかせすぎたようだ」

「甘やかす?」

眉を動かすエステルはラウルの言葉にあきれ果てる。


「貴方は一度だって私を甘やかしたことがありますか?私を見ようともしなかったのに」

「何を言っている」

「多少厳しくしましたが、貴方を思ってのことです」


どの口を言うのか。
子供の為を思って多少厳しくするのは解るが、二人の厳しくは愛情など無かった。


「部屋に閉じ込めて食事を抜いて、それで体調を崩したら自己管理が成ってないと罵倒したのは誰ですの?」

「何を…」

「火事にあったあの日、私は一人で残されました。誰も傍にいてくれずどれだけ心細かったか」

あの日の事は今も覚えている。
ある意味でエステルの人生が変わった日でもある。

そしてすべてを失った逆行前の記憶。

セレナとクニッツが本来受けるお咎めはとても理不尽なものだった。


「何を馬鹿なことを」

「子供のようなことを言わないで頂戴、親心も解らないの?」

「親心?そんなこと一度だって感じたことがありませんでした」

何時か認めて欲しい。
ずっと頑張っていたが、その努力は報われることはなかった。


「貴方にとって娘はヘレンだけ、私にとっても母はセレナでした。貴方じゃない」


「なんてことを!酷いですわお姉様…お母様に向かってそのような口を利くなんて」

泣きそうな表情で叫ぶヘレンだが、茶番劇にしか見えなかった。

「ヘレン、貴方は本当に優しい子ね」

「自慢の娘だ…」

これ見よがしに仲良し家族ごっこをするが、こんなものは偽りだった。



エステルの心は凍りついていく。
仲睦まじい家族に見えるが、本当に愛があるなんて思えない。


(私は知っているのだから…)


ヴィオラとロバートとは違い二人の間に夫婦の絆も、親愛の情などないことを。

全ては見せかけだけの愛に過ぎないことを。


この家族にある愛は自分への愛だけしかないことを改めて思い知った。


愛と言うには余りにも軽薄で身勝手な感情。
ヘレンもカルロも同じでエステルは完全に見切りをつけていた。



「貴方なんて生まれてこなければよかったのよ!娘はヘレンだけでよかったのに!」


さらに響く罵倒の声。
酷い仕打ちにエステルはただ黙って聞いていた。

既に赤の他人でしかない相手に何を言われても感じることはなかった。
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