ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第四部帰省とお家事情

59.裁かれし者




全ては身から出た錆だった。


「ジュリエッタ、覚悟していてくださいね」

「ロバート!」

ジュリエッタの前に立ちはだかるロバートは怒りを必死で押さえていた。
いくら憎くても自分の立場は騎士団を纏める立場にある為、個人的な感情で復讐はできないことも解っている。



「貴方にはそれ相応の報いが待っています…ですが、エステルの母であったので情けはかけます。貴族である以上死刑になることはありません」

「じゃあ!」

ジュリエッタはロバートが助けてくれると思いすがろうとしたが…


「死んで楽にはなれません事よ」

「ええ、貴方には生きてしっかり償っていただきますわ」

そこに現れた二人の女性にジュリエッタは真っ青になる。


「王妃様、モントワール侯爵夫人…」

この国で最も恐ろしい女性が現われた。

「殺意があったにせよ未遂故に極刑にはならん…しかし」

言葉を濁す王は冷や汗をかいている。

「貴方達は伯爵の地位を取り合げ男爵の地位を与えます」

「領地は召し上げ代わりの領地を差し上げますわ」

普通ならば平民になっている所を、情けをかけたと誰もが思うが。

「行先はラサールです」

「ラサール!」

「ここよりずっと東北に位置する辺境の地ですわ」

ラサールと言えば国内でもかなり荒れ放題の領地で、先日領主が病死したと言われている。


「お待ちください、そんな場所に…」

「アルスター伯爵は領主として優秀だと聞きましたわ。ですから一番荒れている領地でも問題ありませんわね?冬は熊が出て襲ってくるかもしれませんが」

「問題ないでしょう?」

にっこりと微笑む二人は悪魔どころか大魔王だ。
貴族として裕福な暮らしをしていた二人にとって平民よりも貧乏な暮らしを強いられると同然になるのだから。

ラサールは天災の影響で作物は殆ど育たず、荒れ放題だった。
領民も年老いた者ばかりと聞いている。

頼る物はおらず、最悪な状況に置かれた。


「ちょうどよかったではありませんか。田舎暮らしですわ」

「これから人生の楽園でお過ごしなさい」

ただし楽園ではなく地獄だが、あえて楽園と告げた。


「兄上!お助けください!」

「私の役職がなければお前をこの場で殺しているだろう」

必死で感情を抑え込むロバートは剣を握り震えていた。

「兄上…」

「お前達は私達から娘を奪い殺そうとした。その罪はどれ程大きいか解っているのか」

「私は被害者で…」

「いい加減にしろ!お前も同罪だ…お前達はずっと幼いエステルに何をした!」

胸倉を掴み怒鳴りつける。

「エステルだけではない、自分より弱い立場の人間を見下し軽んじ…領主とは父で領民は子だ!お前に親である資格も、領主たる資格もない。そして今日限りで縁を切る」

「そんな!」

「エステルの育ての父を殺すわけにはいかん…エステルがの望んでいないからな」

「お父様…」

ここまで怒りを露わにするロバートは初めてで驚いた。

同時にエステルの気持ちを大事にしてくれたことを喜んだ。

「生きたまま償ってください、叔父上様」

「くっ…お前さえいなければ!!」

エステルを睨みつけようとするが、ラウルはそのまま頭を地面に押さえつけられる。


「ぐあぁ!!」

「反省がないな。少しばかり拷問でもするか?」

アルフォードがラウルの頭を地面に抑えつける。


「容赦ないな、黒の騎士」

「アンタもああならないようにね?馬鹿ユラン」

「何で俺なんだよ!」


離れた場所でその光景を怯えながら見ていたユランとミシェルは容赦のないアルフォードに怯えていた。


「エステル、つくづく甘いな」

「申し訳ありません」

「だが、それが貴方の魅力だ」

「え…」

非情になり切れない甘さはあれど、好ましく思うアルフォードは笑みを浮かべた。


「兄上、闇討ちしないでくださいね」

「するか…」

「ならその顔をやめてください」

さっきから嫉妬に狂った男の視線を向けるクロードを咎めるエドワードはあらたな火種を想像していた。


「連れて行け」

「「「ハッ!」」」

「くっ…離せ!無礼者!」

「離して…お姉様!!」


ヘレンとカルロも別で拘束され連れていいかれる。
二人もラサールに送られることになった。

もちろんカルロはフレッツ家と縁を切られているので支援は一切ない。

皮肉にも真実の愛を貫いていた二人は愛ゆえにすべてを無くしてしまったことになる。


互いにあったのは真実の愛ではなく自分の愛だけだった。


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