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第五部見習い騎士
1.社交界の麗人
しおりを挟むお家騒動から一年が過ぎた社交界。
多くの令嬢が今宵も夜会に向かう。
勿論お目当ては。
「「「「きゃあああ!!エステル様ぁ!!」」」
貴族の令息ではなく一人の令嬢。
ただし令嬢であってもドレスなどは着ていない。
男装をした令嬢だった。
「今日も凛々しくて素敵!」
「ああ、気絶しそう」
「ちょっとリズベット様!」
昨年の騒動は社交界では一番のスキャンダルとなったのだが、その噂がさらにエステルの人気を鰻登りにした。
血筋が高く正義感の強いアルスター家の嫡男。
聡明で賢く貴婦人として立派な振る舞いをした妻。
その二人を嫉妬し妬み犯行を行った愚かな弟夫婦は、子供を誘拐し腹いせに虐待を繰り返したあげく婚約者を妹に寝取られても恨み言一つ言わなかった令嬢は高潔な心を受け継ぎ、慈悲の心を持ち合わせ。
女神の導きによって生みの親の元に戻ることが叶った。
あらゆる美談が飛躍して新聞に載せられてしまい、現在に至る。
「ああ、日を増すごとに凛々しく成られて」
「リズベット様、落ち着いてください」
ローニャは隣で支えるがこの中で一番エステルにお熱だったので無理だろうがローニャ自身も熱狂的なファンであるので人のことをとやかく言えない。
「どうしてあの方はエステル様ですの?女性なければ求婚してますわ!」
「解って言いますわ。ええ…他の殿方が芋虫に見えますもの」
二人は社交の場でありながら中々酷いことを言っている。
貴族の中でも名家の令嬢で、そろそろ婚約者を決めなくてはいけないが、身近に理想の男性がいるので他の貴族の令息など霞んでしまう。
二人とは反対にただボーっと見惚れていたエレニーはエステルと視線が合う。
「エレニー様、ごきげんよう」
「はっ…ごきげんようエステル様!」
一番最初に声をかけてもらえて喜ぶエレニー。
現在ではいい関係を築いている。
ただし片方は友愛で、もう片方は恋慕の情を抱く程だ。
完全なる一方通行だが、エレニーは今で十分幸せだった。
「先日、新しい作品を出展されたそうですね」
「はっ…はい」
「とても美しい慈母女神の像で感動いたしました」
エレニーは今まで以上に芸術に力を注ぎ平民でも芸術に触れる場を作るべく頑張っていた。
その動力源はエステルの励ましだった。
憧れの人が傍で見ていてくれる。
これほどの喜びはなかった。
現在15歳になったエステルは、身長も伸びていた。
騎士としての訓練を受け、佇まいが凛としており女性の心を掴んでいた。
「視線が突き刺さるわ…」
ただし、本人はかなり鈍感で自分に寄せられている好意に一切気づいていなかった。
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