ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第五部見習い騎士

5.残念美女

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学園生活も残すところ一年もない。
この時期、本科生は多忙だった。

特に、卒業試験に行われる実技試験で配属先が決まるのだから。


魔術科の花形は魔法省か、王立研究院にもしくは宮廷魔導士団に入るかのどちらかだ。

官僚科も宮廷に入り文官として働くのが出世への近道となる。

騎士科に至っては選択はより取り見取りであるが、エステルの目的は最初から決まっているので選ぶまでもなかった。


「今月が終ったらまた試験だよな」

「そうね」

「つーか、本科に上がって試験ばかりじゃね?」

「そうね」

書類にサインをしながら、返事をする。
生徒会の仕事にかまけて日頃の訓練を怠るわけにもいかない。


「おい、お前さっきから何して…って、何やってんの!」

「空気椅子」

椅子に座っているかと思えば三センチだけ隙間を作り座っている。


「エステル…アンタねぇ」

常に鍛錬を怠ることをしないエステルだが、何も生徒会の仕事をする時まで鍛錬をしなくてもいいのではないかと呆れるミシェルと、ユランだった。

「日頃の鍛錬を怠ってはなりません。筋力は一日にしてならず」

「いや、使い方間違ってんだろ?うら若き乙女が何で空気椅子してんの!!」


まだ十代半ばで、花の乙女がすることではないと思った矢先。


ドサッ!

四角い袋が床に落ちて、床に穴が開く。

バキッ!


「なっ…なんだ!」

「ちょっとルーク!」

ルークが落とした物のようだ。

「すいません、錘が」

「アンタまで何やってんのよ!」

「えーっと、訓練ですかね?」

ここにもう一人いた。


見ていない所で常に筋力アップを目指す二人。
特にこの一年で、ルークは随分と身長が伸びたのだが、愛らしい面立ちは健在だった。

ただし体つきは一年前よりも逞しくなったが、ユランやサブローには敵わないが体つきは逞しくなってきた。


「次の実技試験体術だから…とりあえず足腰を鍛えとかないとね」

「エステル様…」

常に努力を怠らないエステルを尊敬の眼差しで見つめるも…


「鍛えても、鍛えても腹筋が割れないのよ」

「おいおい、正気かよ」

まさかの天然発言にユランが顔を引きつらせる。

「エステル様、ダメです」

「そうよ。アンタ性格は残念だけど…顔だけはいいんだからやめないよ」

「女性がマッスルになるのはいただけませんね」

「エステルさん、無理は良くないと」


全員がエステルがマッスルポーズをする瞬間を想像して、思ったのは…



(((絶対ないな)))


細身のエステルがムキムキ筋肉の姿なんて想像したくなかった。

見てくれだけなら可憐な少女なのに、どうしてこんなに残念美女になってしまったのか。


本気で思い悩む彼等だった。



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