ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第五部見習い騎士

9.見えない出口

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庭にて、一人ため息をつくエステル。


「本当にどうしよう」


手紙を手に取りさらに重いため息をつく。
せめて気持ちを落ち着かせるべく花を見て心を癒そうと思ったが、逆効果だった。


「赤と白の薔薇…」


薔薇を見るたびに思い出すのはクロードのことだった。
ミシェルにはお茶を濁したが、エステルは学園に戻ってもクロードのことを忘れたことなど無い。


クロードの告白をなかったことにしようなんて思ってはいないが、簡単に受けれいることはできなかった。


「私は、王族の方がを守りたい。それが願い」

逆行する前からの悲願でもあった。
今でも王族派と貴族派の立場は良いとは言えない状態でエドワードの失脚を狙う貴族派少なくない。

クロードは目を光らせているので大事には至っていないとの報告を受けているが、貴族派の動きをリズベットに知らせて貰っている。


「私は恋に生きられる程一途じゃない」

純粋に恋をして結婚をできる程無垢でもなければ、愚かでもない。

もし、あの頃のように何も知らない少女のままクロードに出会っていたら受け入れたのかもしれない。

ただ愛されることを望んだ過去のエステル。


「クロード様、私は…」

これまで送られてきた手紙に触れる。


「もう時間はないわ」

答えを出さなくてはならない。
クロードは待つと言ってくれたが、立場上ずっと待たせるわけには行かない。


「クロード様、貴方は優しすぎるのです」

妾腹とは言えど、今のクロードならば無理矢理エステルを妃に向かえることだってできる。

王や王妃に頼み召し抱えさせることだってできたのに、権力で縛り付けるようなことだけは絶対にしない。


その高潔さが時折エステルには重かった。
割り切った夫婦の関係ではなく思い終われる関係を望んでいるからこそ苦しい。


何時だってクロードは強引でありながら優しくエステルの意思を尊重してくれた。


激しく乙女ながらも自制して、無理強いをすることはない。


「貴方の優しさが少しばかり苦しく感じることがある」

優し気な瞳で見つめられると胸の奥が熱くなり、手を握られると身動きが取れなくなってしまう。


王族を守る騎士となりたいのに、クロードはエステルを騎士としての剣を奪ってしまう。



その手で触れられると。
愛の言葉を耳元で囁かれると、乙女心を鎖で縛りつけようとしていた鎖を斬られてしまうようで怖くなる。


「あの方は、私の壁を簡単に叩き切ってしまう」

鎧を、纏っても無意味で、クロードはエステルのむき出しの心を覗く。


「あの方は…って、何を考えるの!!」


火照った体をを抱きしめ我に返る。


「なんてはしたないことを!!来月には王都に戻るのだから気を引き締めるのよ!!」


こんな姿を見られたら、平常心を保てる自信がない。


「それどころか、王妃様やモントワール侯爵夫人になんて言われるか」


何枚も上手のあの二人に弄られるのだけは阻止しなくてはならない。


「そうよ、鍛錬をして気を引き締めるのよ!!」

気持ちを切り替え、鍛錬に励むエステルだったが、クロードの事を考えながら鍛錬をしていたので結局身が入ることはなく日は傾いていくのだった。
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