168 / 408
第五部見習い騎士
9.見えない出口
庭にて、一人ため息をつくエステル。
「本当にどうしよう」
手紙を手に取りさらに重いため息をつく。
せめて気持ちを落ち着かせるべく花を見て心を癒そうと思ったが、逆効果だった。
「赤と白の薔薇…」
薔薇を見るたびに思い出すのはクロードのことだった。
ミシェルにはお茶を濁したが、エステルは学園に戻ってもクロードのことを忘れたことなど無い。
クロードの告白をなかったことにしようなんて思ってはいないが、簡単に受けれいることはできなかった。
「私は、王族の方がを守りたい。それが願い」
逆行する前からの悲願でもあった。
今でも王族派と貴族派の立場は良いとは言えない状態でエドワードの失脚を狙う貴族派少なくない。
クロードは目を光らせているので大事には至っていないとの報告を受けているが、貴族派の動きをリズベットに知らせて貰っている。
「私は恋に生きられる程一途じゃない」
純粋に恋をして結婚をできる程無垢でもなければ、愚かでもない。
もし、あの頃のように何も知らない少女のままクロードに出会っていたら受け入れたのかもしれない。
ただ愛されることを望んだ過去のエステル。
「クロード様、私は…」
これまで送られてきた手紙に触れる。
「もう時間はないわ」
答えを出さなくてはならない。
クロードは待つと言ってくれたが、立場上ずっと待たせるわけには行かない。
「クロード様、貴方は優しすぎるのです」
妾腹とは言えど、今のクロードならば無理矢理エステルを妃に向かえることだってできる。
王や王妃に頼み召し抱えさせることだってできたのに、権力で縛り付けるようなことだけは絶対にしない。
その高潔さが時折エステルには重かった。
割り切った夫婦の関係ではなく思い終われる関係を望んでいるからこそ苦しい。
何時だってクロードは強引でありながら優しくエステルの意思を尊重してくれた。
激しく乙女ながらも自制して、無理強いをすることはない。
「貴方の優しさが少しばかり苦しく感じることがある」
優し気な瞳で見つめられると胸の奥が熱くなり、手を握られると身動きが取れなくなってしまう。
王族を守る騎士となりたいのに、クロードはエステルを騎士としての剣を奪ってしまう。
その手で触れられると。
愛の言葉を耳元で囁かれると、乙女心を鎖で縛りつけようとしていた鎖を斬られてしまうようで怖くなる。
「あの方は、私の壁を簡単に叩き切ってしまう」
鎧を、纏っても無意味で、クロードはエステルのむき出しの心を覗く。
「あの方は…って、何を考えるの!!」
火照った体をを抱きしめ我に返る。
「なんてはしたないことを!!来月には王都に戻るのだから気を引き締めるのよ!!」
こんな姿を見られたら、平常心を保てる自信がない。
「それどころか、王妃様やモントワール侯爵夫人になんて言われるか」
何枚も上手のあの二人に弄られるのだけは阻止しなくてはならない。
「そうよ、鍛錬をして気を引き締めるのよ!!」
気持ちを切り替え、鍛錬に励むエステルだったが、クロードの事を考えながら鍛錬をしていたので結局身が入ることはなく日は傾いていくのだった。
あなたにおすすめの小説
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
公爵家の養女は静かに爪を研ぐ 〜元々私のものですので、全て返していただきます〜
しましまにゃんこ
恋愛
リヴィエール公爵家に養女として引き取られた少女、アリサ・リヴィエール。
彼女は華やかな公爵家の嫡子マリアとは対照的に、家でも学園でもひっそりと息を潜めて生きていた。
養女とは言っても、成人と同時に修道院へ入ることが決まっており、アリサに残された時間は僅かだった。
アリサはただ静かに耐えていた。
——すべてを取り戻す、その時まで。
実は彼女こそが、前公爵が遺した真の娘であり、水の加護を持つリヴィエール公爵家の正統なる後継者だった。不当に奪い取られた地位と立場。
アリサは静かに時を待つ。
一方、王太子リュシアン・ルミエールは、傲慢な婚約者マリアに違和感を抱きつつ、公爵家に隠された不正の匂いを嗅ぎ取っていく。
やがて二人の思惑は重なり、運命の卒業パーティーが幕を開ける。
奪われた名前も、地位も、誇りも——
元々、私のものなので。まとめて返してもらいます。
静かに爪を研いできた養女の、逆転ざまぁと溺愛ロマンス。
完結保証&毎日2話もしくは3話更新。
最終話まで予約投稿済み。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。