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第八話父と娘、愛の死闘
1.親の心子知らず
しおりを挟むその日からエステルとクロードの戦いが始まった。
このままでは婚約もままならならない事態となり、二人はあの手この手を使ってロバートと話し合いの場を設ける為に行動をおこなしたのだが…
「お父様、お時間いいでしょうか」
「エステル、悪いがこれから会議があってね」
「そうですか…申し訳ありません」
休憩時間の合間を見つけ、ロバートに時間を作って欲しいと頼むのだが、タイミング悪く会議が入っており叶わず。
「ロバート、話がある」
「申し訳ありません陛下に呼ばれておりまして」
とにかくタイミングが合わず、話しかければ絶妙なタイミングで他の仕事が入ったり急な用事だったりと偶然が重なりすぎている。
「絶対わざとだ」
「ええ…」
ここまでタイミングが良いなんて予め仕掛けていおいたのだと思わざるを得なかった。
「おい殿下、何時まで遊んでんだ?休憩時間は終わりだぞ」
「遊んでねぇよ…とにかくあんまり考え込むなエステル」
「クロード様」
父親一人満足に説得ができない自分に不甲斐なさを感じながらもエステルも勤務に戻って行った。
「はぁー…」
嘆きながら戻って行く後姿を見つめる影が一つ。
「エステル…」
ひょっこり柱の影から落ち込むエステルを見つめるのはロバートだった。
エステルが何か言いたそうに訴える視線には気づいていた。
何を話したいかもだ。
それでも今は顔を合わせれなかった。
「お前、子供か」
「カミュ…」
「娘にあんな顔をさせて、父親失格だぞ」
隠れているロバートに気づいていたカミュ―はロバートを咎める。
「ああ、可哀想なエステル。恋人との仲を認めて欲しいのに父親は話をまともに聞いてくれない」
「茶化すな!」
「茶化していない…娘の門出を邪魔する親が何処にいる」
カミュの言っていることは正論なので何も言い返せなかった。
「殿下は将来有望だぞ?財も力もある」
「財と力だけで幸せにできないだろ」
「屁理屈を言うなよ…一度ちゃんと話してやれ」
ロバートの肩をポンと叩くカミュ―は手のかかる弟の世話を焼く兄の心境だった。
実際、ロバートの世話を色々焼いていた幼少期が懐かしい。
幼い頃はとにかく真面目で純情可憐な性格だったので悪いことも知らず、貴族として生きていけるのか心配していた。
今のようにそれなりに上手く立ち回れるようにしたのはカミュのおかげでもある。
「まだエステルを嫁に出したくない」
「解っている」
「まだ私のエステルでいて欲しい」
「ああ」
子供の時のように辛い時には下を向きながら言うロバートの癖は変わっていない。
大人になっても変わらないと思いながらもロバートの頭を撫でる。
「エステルを失ったあの日、私は心に穴が開いた」
「ロバート…」
「子供を欲していたヴィオラがどれだけ傷つき泣いていたか知っていた…」
ずっと子供を欲しがりながらも体が弱いヴィオラには希望がないとまで言われた。
奇跡的に授かった子供は誘拐され、生死の確認もできずどれだけ絶望していたか。
そんな時に二人を救ってくれたのは、幼いエステルだった。
当初からラウルとは仲が良くなかったが、姪として接する中愛情を抱くようになり。
もし娘がいたならば…と思う様になっていた。
そしてあの日、エステルが自分達の娘であることを知りどれだけ嬉しかったか。
生まれる日を待ち望み、成長を楽しみにしていた喜びを奪われた日を今でも忘れない。
「私は殿下が嫌いだ」
「え?」
「私よりも一緒にいて、エステルを奪っていく…私達がどれだけエステルを愛しているか知らないで」
ある日いきなり現れエステルの手を引き、いつの間にか自分達よりも遠い世界に誘ってしまった。
妬ましくて仕方ない。
エステルが今笑っているのはクロードのおかげだと言うことぐらいロバートにも解る。
「泣くなよロバート」
「お前に解るか…大事な娘があろうことにも…男に如何わしいことをされていたんだぞ」
「あー…」
クロードに迫られるエステルを見た時、殺意が芽生えた。
「まぁ、男だし」
「私はヴィオラを襲ったことはない!」
「お前は襲われてたからな」
「くっ!」
過去に婚約時代、清い付き合いを徹底していた。
だが、あまりにも進展がないのでヴィオラに迫られていたのだった。
「とにかくずっとこのままと言うわけにはいかないだろう…あ」
「どうしたカミュ…」
前方を見ると思わずロバートは剣を握りしめてしまう。
庭園の方にはエステルとクロードが仲睦まじく歩く姿が見えるではないか。
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