ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第八話父と娘、愛の死闘

2.父の思い

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時間だけが過ぎていく中、エステルは考えていた。


(どうしたらいいかしら)


話をしようにも避けられ、クロードも話し合いの場を設けようとしているのに応じないロバート。

このままでは一向に話しが進まない。

そんな折。



「ロバート、待て!」

「お話することは何もございません」


エステルは廊下から聞こえる声を聞いてすぐに柱に隠れた。


(お父様とクロード様?)

思わず隠れてしまった。
盗み聞きなんて失礼な行為であるが、咄嗟に隠れてしまった。


(はしたないわよね…)

急いでこの場から離れようとするも。


「俺はエステル以外の女と婚約する気は無い」

「殿下、お立場をお考えください」

(えっ…?)


珍しく感情を露わにして起こったクロードの声に、何処か突き放すようなロバートの声に立ち止る。


「貴族派の息のかかった王女を妃に取るなど冗談ではない」

「冗談ではございません。大臣達は未だ独り身の殿下に他国の王女様を迎えることを望んでおります」


(殿下が…)

目の前が真っ暗になる。
未だエステルとクロードは公の場で婚約者として認知されていない。


そんなこともあってか、貴族派の貴族達はなんとしてもクロードを貴族派の駒にしようとしている。


「あくまでお話がでているにすぎません…ですが、あからさまに拒否するのは得策ではございませんと申したのです」

「要するに見合いをしろと言うことだろうが」

「そうなります」


見合いと言う言葉に胸に刃物が突き刺さる。


「他国の王女とよからぬ噂が流れれば、偽りの噂を真実にでっち上げて来る。そんなことぐらい解らないお前ではないだろうが!」

「未だに婚約者がいない以上は断ることができません」

もし公式の場で婚約者がいれば別だが、独り身だと思われている為断れない状態だった。


(公式な場…)

どんなに思い合っても二人は恋人同士で婚約者という認識は持たれていない。


「ならば、お前がここで認めてくれればいいだろう…何度も言ってるはずだ」

「エステルと殿下の婚姻は障害が多すぎます」

「だから反対と言うのか?俺の血筋故に!」


普段ならばここまで感情的にならないが、信頼していたロバートが血筋や教養に生まれだけで判断すると思っていなかったのでショックが大きい。


「殿下は私をそのような男と思っておいでですか」

「思ってない。だからあえて聞きたい…どうしてここまで頑なに反対するんだ」


ロバートの気持ちを全て理解することはできないが、過去の出来事はその場で聞いたし。
事情も知っている。

目に入れ手もいたくない愛娘を早々に手放したくないということも。


「私はエステルを手放したくない…ですが、いずれはと考えております」

「なら…」

「ですが、二度とエステルが傷つくようことになって欲しくないのです。今の貴方にエステルが守れますか?この先貴族派から憎まれ、貴方の妃になればどうなりましょうか!」


愛する娘を手放したくないと言う親のエゴもあれど、根本的な理由は別にある。
貴族派の統制が乱、王侯貴族の秩序が乱れ始めている。

そんな中貴族派はクロードの妃を貴族派に迎えようと目論んでいる故にエステルが婚約者となればさらに命の危険に晒される。


「貴方だから認められないのではありません」

「ロバート…」

「申し訳ありません」

何を言ってもロバートの決意は変わらなかった。


(お父様…どうして)


クロードの悔しそうな声が響く。
例え障害が大きくても、一緒に頑張ろうと約束した。


支え合って生きて行こうと。

なのに、ロバートは決して受け入れてくれない。


(私は…私は!!)


その場を去って行くロバートを見ながらエステルは剣を握る。


もう覚悟は決めている。

ならば方法は一つしかないと決意を固めた。


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