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第八話父と娘、愛の死闘
18.父の答え
しおりを挟む「エステル!しっかりしろ!」
負傷したエステルを抱き寄せるクロードは何度も呼び掛ける。
「ロバート!」
クロードはロバートを睨みつける。
いくら何でも実の娘にここまで容赦の無い仕打ちをするとは思っていなかった。
(こんなに傷つける必要はなかったはずだ!)
実力の差は歴然で、ロバートならばエステルを打撲傷程度ですませることもできたはずだ。
「何故ここまでした…何故だ!」
頭では解っていた。
ロバートなりにエステルに向き合った結果だと。
解っていても心が付いて行かなかった。
「エステルを無傷で勝利することはできませんでした」
「何?」
「もしかしたら、私がこうなっていたかもしれないのです」
エステルの実力を侮り過ぎていたロバートは、もし魔力を使わなかったら。
もし最初から手加減をしていたら、どうなっていたか。
「それに、エステルは全てを捨てて私に立ち向かいました。親として、師として私は応えたかった」
「ロバート…」
「その結果です」
ロバートは辛そうに唇をかみ締める。
最愛の娘を傷つける結果になり、深く悲しんでいた。
(俺は底なしの馬鹿だ)
ロバートがエステルを溺愛しているのは知っていた。
エステルがロバートを敬愛しているのも知っていた。
二人の関係に亀裂が入ってしまったとしたら自分の所為ではないか?
クロードは己を責める。
(俺は…俺は!)
ぎゅっと、エステルを抱きしめる。
「殿下、もう一度聞きます」
「何だ」
「エステルと共に生きたいと思われますか」
今更な言葉だった。
「ああ」
「この先エステルは、さらに辛い思いをするでしょう…死地に向かうこともあれば、女性の矜持を汚され罵倒され蔑まれるおともありましょう」
高位貴族でありながら女性で騎士を目指すと言うことは親の七光りだと罵倒を受けることもある。
貴族派から噂を流され、あることないことを吹き込まれエステルは孤独な立場になるかもしれない。
そうなった時どうするのか聞く。
「俺は何を手放してもエステルだけは離せない」
例え神が二人を引き離そうとも、この手だけは離さない。
クロードはエステルの手を離さないと誓った。
「どんなことがあってもエステルは俺が守る。貴族派からも王族派からも…エステルは俺の宝なんだ」
例え誰にも祝福されなくても、クロードはエステルと共に生きてかった。
「お前が認めないと言うなら認めさせる。諦めるという選択肢はない」
「殿下…」
エステルと同じ迷わない瞳をしていた。
「ならばその約束を違えた時、貴方の首は私が切り落とします」
「ロバート!」
「私の娘を裏切れば、どうなるか御覚悟ください」
この場でしっかりと告げた。
「強情で頑固でありますが、私の大事な娘です。どうか娘をお願いします」
クロードとエステルの仲を認めると告げた。
「ああ…当たり前だ」
エステルとクロードの覚悟がロバートの心に響き、ようやく仲を認めて貰うことが叶った。
そんな中、急いで医療班と治癒師が駆け付ける。
「兄上!すぐにエステルを!」
「エド!」
医療班を手配したエドワードが急いで駆け寄って来た。
「回復水を!」
「ああ」
医療班が差し出した回復水をロバートが飲ませようとするも、ぐったりとしているエステルは飲む力がなかった。
「エステル、飲みなさい」
「うっ…」
「貸せ」
クロードはロバートから回復水を奪い口に入れる。
「兄上?」
「殿下、何を…」
二人が戸惑う中、クロードは口移しで回復水を飲ませる。
公衆の面前の前で。
観客は声を上げ、悲鳴をあげる者もいたが、おかまいなしにクロードはさらに残りの回復水を飲ませるのだった。
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