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第八話父と娘、愛の死闘
17.勝負の行方
しおりを挟む天から地上に光が放たれるような光景だった。
「あの光は…」
「聖女エルキネス?」
僅かだが、聖女エルキネスの幻が見えた。
まるで彼女の影がエステルに憑依するかのようだった。
「エステル…?」
観客席からクロードはエステルを見つめると、強い緊張感が走る。
光と闇が重なる瞬間、クロードは既視感に襲われる。
(この光景は!)
光と闇が重なり合う様に。
これまで別々の魂が一つとなり、一体化する。
(聖女エルキネスの魂が!)
光は止み、エステルはそのままロバートの懐に飛び込んで行く。
「はぁぁぁぁ!!」
二人の一騎打ちの末にエステルは倒れこむ。
「ぐっ…」
「まさか、ここまでとは」
倒れこむエステルと同時にロバートも膝をつき、地面に落ちる薔薇の花びら。
(エステル!!)
クロードは食い入るように見守る中、地面に落ちたのはロバートの薔薇だった。
エステルの薔薇は辛うじて花びらを残したまま胸についたままだった。
「これって…」
「もしかして」
観客席の誰もが目を疑う。
勝者は薔薇の花を守った方となる。
「勝者、エステル・アルスター!!」
審判が声を張り上げると同時に歓声が響き渡る。
「きゃあああ!!エステルゥーーー!!」
「やりました!やりましたよエステルさん!」
「愚民の分際でやったか!今日だけは褒めてやる!感謝しろ!!」
「いや、お前が威張るなよ!」
エステルを応援していた一同は興奮して悲鳴を上げる。
「クロード様、エステルが…エステルが勝ちましたわ!」
ミシェルは直ぐにクロードに声をかけるも、本人は既にいなかった。
「クロード様?」
「あそこだ」
腕にクロードは観客席を抜け出し闘技場に向かっていた。
「エステル!!」
光の如く猛スピードでエステルに駆け寄る。
「「「早っ!!」」」
誰よりも行動が早かった。
そしてもう一人。
「早く医療班を呼べ!!」
「お待ちください王太子殿下!」
「ぐずぐずするな!エステル嬢はかなり負傷している!急いで治癒師と医療班を!」
エドワードが急いで侍従に医師を手配するように命じていた。
「エドワード様!」
ヴィオラは真っ青になりながら震えていた。
傍でモントワール侯爵夫人と王妃に支えられていたが、今にも気絶するかもしれない程の顔色が悪かった。
「大丈夫です。お気を確かに」
「はっ…はい」
夫と娘の戦いをずっと耐えながら見守っていた。
公の場で私情を交えることはできず、感情的にならずにいたが、本当は何度も止めたかった。
けれど、できなかった。
「ヴィオラ、耐えるのです」
「お義母様」
「あの子は大丈夫です。貴方の娘であり、私の孫ですのよ?」
ロバートとの戦いで何度も耐え忍んだエステルの精神力の強さを見てガブリエルは決闘を最後まで止めなかった。
万一に出も二人が死ぬまで戦いを止めなかったら、止めるつもりだった。
「あの馬鹿息子、ようやく気づいたようですわね」
「ああ…エステルの粘り勝ちだな」
「では!」
二人の良い方ではまるでロバートが認めたと言いたげだった。
「ロバートは最後に負けました」
「エステルの覚悟で戦う意思が消えたのだろう」
最後の一撃で薔薇の花は全て散った。
エステルが勝利し、ロバートから戦意を喪失させたのは騎士としての覚悟だった。
「不器用な子、エステルの本気を知って認めたのでしょう」
「認めざるを得なかったのだろうな」
最初から二人の仲をそこまで反対していなかった。
ただ立場や派閥を考えれば二人を簡単に認めるわけには行かなかったのだが、エステルの気持ちを無視して結婚を強いる気はなかった。
ただ、心の底ではどうしてもエステルを跡継ぎにしていいのか迷っていたからだ。
だが、その迷いは消えた。
エステルの心の叫びを聞きようやく気づいたのだから。
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