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最終章運命の先
閑話1ヘレナの歯車
しおりを挟む物心つく前からお姫様だった。
裕福な家に生まれ、両親は伯爵家で溺愛されて育ったヘレンは欲しいと願えば何にもかも与えられて来た。
何時しか恵まれた生活は当たり前で、愛されるのが当然になった。
それが例え人のモノであってもヘレンが欲しいと思えば手を伸ばし、相手を傷つけても罪悪感を抱くこともない。
(私はお姫様なんだから!)
傲慢な性格になり、欲しいモノはどんな手を使ってでも手に入れなくてはならないと思う様になり。
対照的に跡継ぎであり、姉のエステルは月とスッポンだった。
伯爵家の出来損ないで、美しい両親から生まれた醜く出来損ないであるエステルをヘレンは見下し罵倒した。
母親に何時も聞かされていた言葉がある。
「ヘレン、貴方は特別なのよ。だから絶対あれのようになってはダメ」
まだモノの分別が使い時期から毎日のように聞かされた言葉。
「あんな出来損ないとは違いのだから。貴方はいずれ公爵…いいえ、この国の女王となるのだから」
「はいお母様!」
いずれこの国で最も身分の高い女性になる。
なんて素敵な響きなのだろうか、誰もがヘレンに膝間づくのを想像するだけ気持ちよかった。
(私はお姫様…そうよ、誰もが私にひれ伏すのだから)
歪み切った心は日増しにエスカレートして行き、物言わぬエステルに暴行を働き嫌がらせをした。
エステルをいたぶるととても気持が良かったが、心が満たされることはない。
そんな折、エステルの婚約者に出会ったヘレンは一目で思いついたある計画。
相手はカルロ・フレッツ。
王族で分家筋にあたる人物でエステルの婚約者だった。
双方の利益がある政略結婚であったが、貴族の間では珍しいことではない。
いずれヘレンも見合った相手と婚約をするのだが、親の決めた相手に嫁ぐことは決められている。
このまま名も知らない婚約者と結婚して姑に仕えるなんてまっぴらだった。
(そうだわ…お姉様の婚約者を奪えばいいのよ!)
嫁ぎ先に指図されるなんて耐えられない。
ヘレンは自尊心が強く、誰かに命令される事すら許し難かった。
カルロは王族の親族だし、うまく利用すれば王妃の座に就くことができるかもしれない。
その為にはカルロを誘惑すればいい。
カルロと結婚した後は王族の親族になり、王太子に見初められれば王妃の座に就くのも夢ではない。
そう思って、ヘレンはカルロに近づいた。
カルロを誘惑するのは思いのほか簡単で、両親もヘレンがカルロに好意を持っていることに気づき応援してくれた。
エステルはただ見ているだけで耐え忍び、ヘレンは己の心が満たされる気がした。
(うふふ…どうお姉様?悔しいでしょ)
遠くから見ているしかできず、ただ耐えることしかできない哀れな姉を見下し馬鹿にしてあざ笑っていた。
社交界に至ってはカルロと仲睦まじく舞踏会に参加してアピールしてエステルの立場を奪い、二人が思い合っている噂を流し、徹底的にエステルを孤立させるように仕向けたが…あくまで二人は報われない恋をしてエステルに遠慮している風を装った。
そうすれば周りは批難することはない。
責められるのはエステルだけでヘレンは賛美される。
長年にわたってエステルを虐げ、栄光を掴むのもすぐそこだと思っていたある日のこと。
運命の日は訪れた。
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