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第二章北方四島の絆
28グレタ姫
しおりを挟む久しぶりの王宮。
不安を抱きながらも私は馬車から降りて広間に通された。
「グレタ、待ってましたよ」
「良く帰って来てくれた」
「お久しぶりです」
ぎこちない挨拶をしながら私は顔を下に向けた。
この王宮では良い思いではなく居心地が悪かったのだから。
王位に興味がなかったし、私は忘れらられた存在だった。
ただ、フィルお兄様は私を気遣ってくれた。
王となった暁には王宮で過ごせるように取り計らうと言ってくれたけど、無理だと思っている。
私の居場所はこの王宮にはない。
フィルお兄様はずっと苦しんでおられたのだから。
王宮は砂の城。
管理しようとすれば足元を掬われるのだから。
「グレタ、貴女を呼んだ理由は解ってますね」
「はい」
フィルベルトお兄様が表向きに失脚した。
外交の何たるかを解っていないアルセウスに立太子する事は不可能だわ。
だから私に王位をと手紙に書かれていた。
「アルセウスはもはや立太子する資格はありません。まさかあそこまで物を知らないとは思いませんでしたわ」
「フィルベルトお兄様は苦労をされてましたので、その違いではありませんか」
天から授けらた才に頼り、周りの人間を粗末に扱った結果。
確かにフィルベルトお兄様は天才ではない。
特に剣術の才には恵まれなかった。
秀才型で努力の方だったけど、王として必要な器はあった。
多くの者の言葉を聞ける。
独裁者では長く国を治めることもできない。
何より、少し隙がある方が敵国も油断するのだから。
でもアルセウスは敵を作り過ぎる。
「フィルベルトの功績を見せつけ、王太子に戻そうとも思ってました。それが叶わなくありましてね」
「え?」
フィルベルトお兄様を王宮に戻さない?
「北方三島の代表が、フィルベルトを認めました」
あの気難しい彼等が?
そうなると再度、王都に戻すのは難しいかもしれない。
「領主としてまだまだ甘さが残りますが、故に周りは助けたいと望むのでしょうね。フィルベルトを随分気に入っているようです」
「そうですか…」
ご自分で居場所を見つけられたのね。
ずっと息苦しいとおっしゃっていたから、ようやく居場所を見つけられたのね。
「彼等は独立を望んでいたのですが…フィルベルトを主君として認めるなら平和的に解決ができるでしょう」
「独立をお許しに!」
「仮の話です」
それでも可能性があると言う事になる。
だけど、今のままでは独立しても四面楚歌だわ。
後ろ盾が足りない。
「そこでだ。エリンデール王国から縁談が来ています」
「え…あの国から」
お兄様と交流のあるお転婆姫?
お母様の笑み私は嫌な予感がしてならなかった。
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