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第三章雇われ国王物語
19勝負
しおりを挟む何と横暴な告白か。
まぁ、リーシェらしいけど。
「勝負よ」
「はぁ?」
種ぶって何だよ。
この状況で何で勝負なんてするの?
「貴方と私、どっちが先に惚れるか」
「あー…そういう事ね」
「私は待つのが大嫌いなの」
知ってますとも。
どんな勝負でも敗北の二文字はないと常に豪語しているからね。
「どんな不利な勝負でも勝利をしてみせるわ。貴方を惚れさせてあげるわ!」
「なぁ、おかしくない?」
これって、告白されてプロポーズされているんだよね?
なのに決闘を申し込まれているような気がするんだけど、告白されているんだよね?
「おかしくないわよ」
もう何も言えないんだけど。
しかし何でリーシェは俺のことが好きなんだろう?
「くだらない事を言ったら怒るわよ」
「え?」
「貴方が何を考えているかなんてお見通しよ。言っても無駄だから自分で考えなさい。私はそこまで優しくないわよ」
俺の疑問に答えてくれなかったリーシェはそっぽを向く。
「とにかく誓約書、これは仮よ」
「え?」
「私が勝負に勝った時に正式な誓約書を交わすわ」
結局無理強いはしないのか。
あれだけ言っていた癖に、俺の気持ちを尊重するなんて甘いな。
「何を笑っているの」
「いや、俺よりも君の方がずっと甘いと思うけど」
「今すぐ無理矢理誓約書を交わしても良いわよ」
「申し訳ありません」
うん、お口にチャックしよう。
これ以上余計な事を言えば後でどんな目に合わせられるか解らない。
男としても情けない気がするのだが。
これでもかなり譲って貰ったので、良しとするべきか。
「なんとまぁ…ヘタレですね」
「フィルベルト様」
事後報告となるが、ナツメとポッポに報告すると想像通りの言葉が返って来た。
「ですが、一歩前進ということになりますね」
「良かったですね」
二人は俺の事を心配してくれていた。
だからこそ一番最初に報告したが、レック達にどう説明しよう。
「余計な事は言わなければいいでしょう」
「そうだが…」
「別に姫様の事は嫌いではない。結婚しても良いと思っているのでしょう」
「それは」
リーシェの事を好きか嫌いかと言われれば好きだ。
ただ戦友としての気持ちが強い、そして俺はリーシェに相応しくないと思っている。
「別に激しい愛情がなくとも育てる愛もあるでしょうに」
「僕はお似合いだと」
まぁ政略結婚と割り切ればいいんだが、リーシェには幸福になって欲しいんだけど。
「姫様の幸せは姫様が決めるものです」
「そうだな…」
リーシェを幸せにするなんて傲慢な事は言わない。
「ですが、フィルベルト様は姫様が好きですよね?…というか」
「フィルベルト様が恋愛初心者だからではありませんか?」
ポッポまでそんなことを!
皆して厳しいな。
一難去ったと思った頃。
更に一難舞い込んで来た。
それは――。
フルーデルト公爵家のお家問題とアルセウスが王太子候補から外された事だった。
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