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第一章
1.新たな婚約
しおりを挟むスチュアート伯爵家。
当主であるユアン様は最年少で宰相にまで上り詰めた天才とも謡われていた。
政治に関しては隙が無く、あらゆる改革を成功に収めた実績を持つ。
際の溢れ、氷の宰相と呼ばれる傍らで愛人を持つ事は愚か、病弱な奥方様を気遣う優しい人だ柄だった。
「久しぶりだね、エリーゼ嬢。この度は…」
「はい、ご無沙汰しております」
私を見て痛々しそうに見つめられ、申し訳なくなってしまう。
「エリーゼ」
「ロミオ様、このようなお姿でご挨拶するご無礼をお許しください」
「そんなことを気にする必要はない。むしろ、邸に伺うのは俺の方だ」
私を気遣うロミオ様は優しかった。
なのに、私達は彼等にとても失礼な事をしているのだ。
(本当はマリアンヌを望んでいたと言うのに…)
私ではなくマリアンヌが嫁げば、伯爵家を守ることができたのだろうに。
「この度は誠に申し訳なく…」
私がお詫びを口にしようとした時だった。
「失礼いたします」
「サブリナ!」
侍女に支えられながら姿を見せられたのはスチュアート夫人だった。
「このようなお姿でお許しくださいませ」
「母さん、まだ体調が…」
ふらつきながらもそっと、ソファーに腰かける。
「どうしてもご挨拶をさせていただきたくて参りました。お見苦しい姿をお見せして申し訳ありません」
「いえ…そのような」
お母様は心配しながらハラハラした目で見ていた。
「この度、婚約を受けてくださり誠にありがとうございます。本来ならば身分的にも難しいと損じておりましたのに」
「何を申されますの?スチュアート家は名門ではありませんか…」
爵位だけで言うならば公爵家の方が上だけど、スチュアート伯爵家は既に高位貴族と並び立つほどの大きな力を有している。
財や権力だけある貴族とは異なり、国に貢献する一族として他国からも一目置かれているのだから。
「ずっと夢でしたのよ。エリーゼ様が私の娘になってくださるのが…」
「え?」
「公爵令嬢である貴女様に無礼だとは存じておりますが、もし叶うなら、エリーゼ様のような方がロミオの奥様だったらどんなに良いかと」
「あっ…あの、どういうことですの?」
これってどういう事なんだろうか?
スチュアート伯爵家はマリアンヌを望んでいたんじゃ?
お母様も困惑しているようにも見える。
「マリアンヌとの婚約を望んでいらしたのでは?」
「え?」
「マリアンヌ嬢?」
お母様の言葉にスチュアート伯爵夫妻が首をかしげていた。
ロミオ様に至っては無言になっていた。
訳が分からなかった。
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