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間章
8.母の心配
しおりを挟む結局のその後も食事の席にはマリアンヌが来ることはなかった。
「本当に申し訳ありません、折角来てくださったのに」
席を外していたお母様が後からこの事を知り、すぐに謝って来たけどマリアンヌは来なかった。
「あの子は早くに社交界に出て、宮廷貴族の考えこそが正しいと思ってしまって…周りの友人も似たような環境だったんです」
「トリアノン夫人、それ以上は…貴女様の躾が悪いとは誰も思いますまい」
「同感ですね。貴女の聡明さ、人望は申し分ありません。我が弟ロナウドにも幼少期から気にかけてくださったではありませんか」
嘆き悲しむお母様を慰めるように気遣ってくださるスザンヌ様とロベルト様。
やっぱり二人は優しい人だわ。
「トリアノン夫人、貴女が間違った教育をしたと言うのであれば、エリーゼはどうなりましょう」
「そうですわ。幼少期に忌み嫌われる私を救い、病気のお母様を救ってくださったのはエリーゼ様です。エリーゼ様がいらしたから伯爵家は光を取り戻したのです」
「そうだ。エリーゼは立派だ。魔力が低く、加護がないぐらいなんだというのだ。我ら貴族は守る側の人間だ。その意味を誰よりも理解しているエリーゼの母君が間違っているはずがなかろう…ちなみに俺は魔力はあるが頭は悪いがな!ハハハッ!」
「リオネル様、笑わないください」
うんうん、私をフォローしてくれているのだろうけどね?
リオネル様はもう少し考えた方が良いと思うぞ?
私も人の事は言えないけど。
「ありがとうございます。そう言っていただけると救われますわ…ですが」
ちらりと私を見るお母様は更に悲しい表情をする。
「私はあの子が心配でなりません。幼少期から周りから甘やかされ過ぎて、本当の意味であの子を心配してくれる友人はいるのか…エリーゼの事はそれ程心配していないのです」
「え?そうなんですかお母様」
「ええ、貴族令嬢としてはすっごく心配だわ」
「お母様、溜めたね」
ハイネ、そこで突っ込むのは止めようね?
ナタリーもうんうんと頷かないで欲しいんだけどね。
「エリーゼには立派な友人はいるけど、社交界の友人はどうしてもね…」
確かに身分制度が厳しいので、友達を作るのは難しいかも。
マリアンヌのご機嫌伺いをする令嬢や令息はいても、対等の関係は望めない。
「貴族とは不便な者ですね。ずっと優遇されていると思ってましたが」
「そうですね」
スコットの言葉にサーシャも頷いていた。
二人は貴族が羨ましいとは思っていなかっただろうが、裏側を知って思う所があったのかもしれない。
「貴族は特権を与えられているからこそ、責任が伴います。それにささいな噂で糾弾され、あることない事を噂を流され、時には命を落とすこともあります。地位が高ければ高い程…」
その言葉に私は恐ろしくなる。
王族であるロベルト様もお茶会の時はよその家で出されたお茶は口にしない。
どうしても口にする時は毒見役に毒見をさせた後も銀食器で毒を確認した後に解毒剤を飲んで、毒がないか解るように少量を残している。
周りには解らないようにしているけど、それだけ慎重にしているのだ。
私も、もっと注意すべきかもしれない。
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