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序章~出会い
2.どんな時も仕事
しおりを挟む私は頼れる親族もなく、後ろ盾もない。
まだ爵位を継承する前だったので、私は成人もしていません。
そんな時、激痛に襲われた私は前世の記憶を取り戻した。
タイミングとしては悪くなかったかもしれません。
このまま黙って泣き寝入りするなど前世では契約を取る為にスッポンと呼ばれた名が廃ります。
「ここですね」
ブリリアント商会。
最近業績を伸ばしていると噂もありますが少々強引な手を使うと黒い噂もあります。
お金を出せばある程度の仕事は引き受けてくれるとか。
「いざ!」
気合を入れて中に入ろうとした時でした。
「訴えてやる!」
「申し訳ありません!」
中に入ると店の方で何やら騒ぎが起きていました。
「特別製の生地で汚れは直ぐ落ちるって聞いたのに、汚れを落としても広がるなんて!なんて不良品なんだい!」
「ですが…」
「口答えをする気かい!客に向かって…」
これはクレームですね。
お客様は商品に関してクレームをしています。
「お客様、どうかなさいましたか?」
「なんだいアンタ?」
「私が代わりに承ります。そちらの素敵なお洋服ですね…一級品のワンピースですね。とてもお似合いです」
「息子が私の還暦祝いに安い給金を溜めて買ってくれたんだ」
上質なワンピースで、生地だけでなくデザインも申し分ない。
「こんな素晴らしいプレゼントを下さる息子さんはさぞお母様思いなのでしょうね」
「そうだよ!なのに不良品を売りつけられちまって!」
「ですから…」
「申し訳ございません。それはさず悔しい思いをされましたでしょう。返す言葉もございません。なんとお詫びしたらいいか」
クレーマーのお客様を宥めるにはまず事情を聴く事。
そしてこちらの無礼を詫びてお客様の思いに寄り添いながらも、解決策を提示する。
「せめてこのワンピースの染みだけでも抜いてくれたら、私も怒らないよ」
「でしたら、私にお任せください」
「え?」
「こちらの染みを今すぐ抜くことができます」
「本当かい!」
話しを聞けばお客様はワンピースの汚れさえ落としてくれれば大ごとにしなとの事でした。
悪い方ではないし、話をちゃんと聞いてくださった。
「布を持ってきてください。綿はありますか?」
「はっ…はい」
この生地の染みの抜き方は知っている。
アパレル商品の開発に携わっていたので、間違いでなければ。
「こちらでいかがでしょうか?」
「汚れが綺麗に取れた!すごいよアンタ!」
「ありがとうございます。この度は誠に申し訳ございません。私共の配慮が足りないばかりにお客様に大変不快な思いをさせてしまった事を深くお詫び申し上げます」
「いや、私も悪かったね!そこのアンタにも怒鳴って悪かったよ…今度から服はここで買う事にするよ。そうだ、折角だから靴も見ようかね?」
「お客様、もしや息子様とデートでしょうか?」
「デートってわけじゃないけど…ちょっといい店で食事をする予定なんだよ」
機嫌を良くしてくださったお客様は靴を見て、次は帽子とバレッタを買って上機嫌で帰って行かれた。
ああ、お客様が喜ばれて本当に良かった。
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