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序章~出会い
11.永久就職
しおりを挟む何時も唐突なのは今日に始まった事ではないのですが、どうしたのでしょう。
「解りませんか?あのドレスはとある女性思って作ったんです」
「はい、大変すばらしいドレスでした」
「では、着てみたいと思いすか?」
私があのようなドレスを?
正直、私のような者には似合う気がしません。
「今、ご自分には似合わないと思いましたね」
「えっ…ええ、とても美しいドレスで、女性ならば誰もが憧れるでしょうが。私には…」
「そんなことはありません。いいえ、貴女にしか似合いません」
「は?」
一体何をおっしゃっているのでしょうか。
私にしか似合わないとはどういう意味でしょうか?
「では着て見てください」
「何を…」
「マーク」
「はい」
またしても黒子さんが音もなく現れました!
「さぁこちらへ」
「はい?」
ブリリアント商会の女性商会員が現れ会場から出される。
「こちらにお召し変えくださいませ」
「あの、何故着替えを?」
「どうかあの方の我儘を聞いてくださいませんか。どうか」
「解りました」
疑問が多いですが、ここまで懇願されては無下にすることはできません。
そして着替えが終わり会場に戻る事にしたのですが。
「まぁ!レティ!すごく似合うわ」
「お嬢!すごく綺麗だぞ!」
着替えを終えた私を見た皆様は口々に褒めてくださいました。
ですが、新作発表をされていたドレスとは随分異なります。
素材は同じなのに、これはコルセットを必要としないエンパイヤドレスで、動きやすく露出度も少なめです。
「やっぱり、ピッタリですね」
「だけど、このドレス…刺繍が入っているね。しかも銀刺繍じゃないか」
ドレスの裾を見るとレースにも銀刺繍があしらわれていました。
しかも光を照らすと刺繍の部分に文字が。
「このドレスは貴女の為に作ったんです。新作発表に出したのは万人向けに仕上げていますが、このドレスが一番最初に作った物です。その意味解りませんか?」
「申し訳ありません。勉強不足で…」
「ならこれから勉強しませんか?私の元で…私の妻になって私の元で学んでください」
「はい、よろし…はぁ?」
今、なんとおっしゃいましたか?
「私は貴女にこのドレスを着ていただきたい。このドレスが似合うのは世界中で貴方だけです」
羽のように軽い生地に、私の体にぴったりフィットしながらも動きやすく心地よい。
「私はずっと女性と過ごすよりも、お金を数える方が好きでした。明けても暮れても商売をすることを考えてましたが、ある日を境に私は商売の事すら手につかない程に貴女の事を考えるようになりました」
「それは…何と申しますか」
「経済の帝王とまで呼ばれた私ですが、本当な大それた人間ではありません。貴女をどう振る向かせるか必死で考えながら足搔くような男です」
女性の大人気で、彼の微笑みに落ちない女性はいない。
夜の帝王とまで呼ばれている彼が何をおっしゃっているのか解りません。
「あの、何かの余興でしょうか」
「いいえ、我が主はこれまで女性にドレスを贈った事はありません。それ以前に二人きりで食事をしたことも、仕事の話をしたこともございません」
「おい、マーク!」
食事は接待ではなかったのでしょうか?
もしくは企業の情報を得るための手段だと思っていました。
「旦那様は少々ひねくれておりますが、結構一途ですよ」
「おいヴィルマ!」
先程私の着替えを手伝ってくださった女性でした。
「レティ―さん!旦那様の奥様に転職してください!」
「「「旦那様に永久就職してください!」」」
ブリチア商会の皆様揃って土下座をされました。
これは――!!
営業マンがする土下座攻撃。
依頼人を怒らせお詫びをするのは勿論ですが、土下座された側はなんとしても許さずにはいられません。
何故かと言うと大勢の前で土下座すればされた相手は追い込まれるのです。
悪い事をしたのは土下座する側ですが、された側は妙な罪悪感と第三者から責める様な視線を受け、悪者にされてしまうのです。
しかも大勢で土下座をされれば要望を聞かなくてはならない。
「ありえないわ…なんて色気のない求婚なんて」
「結婚指輪は万年筆が良いかと思いまして」
膝をつきながら私に差し出したのは、婚約指輪ならぬ婚約万年筆でした。
私とケンの字か彫られていました。
「素敵なオファーを頂き誠にありがとうございます。私のスキル、経験がお役に立てます事を願い、よろしくお願い申し上げます」
「はい、こちらこそ何卒よろしくお願いします」
こうして私は伯爵夫人に就職したのでございました。
ですがこれは、私の戦いの始まりでした。
そうこれは全ての始まりに過ぎなかったのです。
後に起こりうる国の大問題に発展する修羅場、そして私達を巻き込んだ迷惑な恋愛事情に巻き込まれる事など知る由もなかったのです。
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