11 / 48
序章~出会い
10.気持ち
しおりを挟むその後ドレスアップをさせられレストランの中に入り食事を頂きました。
「何か?」
「いいえ、お味はどうですか」
「評価は4段階で良です。料理も大変美味しゅうございますが、若干スープの温度ですね。器が冷めやすい所為ですので改善点を上げるなら…いえ、失礼しました」
私はつい何時もの癖でやってしまいました。
前世でも飲食店に入ると4段階評価の後にアンケートにも記入していました。
どんな時も癖がついてしまっていたのかもしれません。
「改善点をお教えください。是非」
「はっ…はい」
「こちらの皿はアンティークになっているので、温度を保つ素材になっていないのです」
「でしたら、ギリギリまでお皿を温め、尚且つ運ぶ直前までスープの温度を保てばよいかと。温度が下がると味が塩辛く感じます。例えばスープのお皿を平らではなくこのような物に…」
「なるほど、熱を外に下げない形に…ではメインの皿はこちらでは?」
「そちらですと…」
私の人生は仕事に捧げて来ました。
青春時代もすべて仕事にぶつけ、喜びも悲しみも仕事に注いできたのです。
だけど、行き過ぎた私の行動に嫌気がさしている彼はこんな風に笑いかけてくれませんでした。
仕事がなければ私は面白みのない何もない女です。
「貴方は変わった人ですね」
「えっ…」
「だけど、一緒にいて楽しい人です」
人付き合いが得意というわけじゃない。
新人の頃は何度も失敗して相手を怒らせることなんて数えきれません。
ですが失敗を繰り返しながらも次に生かしてきましたが、やはり人間関係を円満にするのは下手だった。
「レディー…」
「どうかレティとお呼びください。ブリリアント商会会長様」
「ならば私の事もケンと呼んでください。マイレディー、レティ」
甘いマスクではなく、優しくも穏やかな笑顔でした。
そして何故か心拍数が少し上がったのは何故でしょうか。
「あっ…あの」
「何でしょう?」
「いえ、何故顔を近づける必要があるのかと。そんなに近づかなくともお話は出来ると思いますが。もしやもう視力が悪いのでしょうか?でしたら良い眼科を紹介しますが」
「そう来ましたか」
手で顔を覆うとは、よっぽど深刻な状況なのかもしれません。
「そうですね、視力が困った事になっているかもしれません。ですから、容赦してください」
「解りました」
今度眼鏡を進めて見ましょう。
今日のお食事のお礼と、そして今後も好敵手として良いお付き合いをするために。
しかし、この時私は夢に思いませんでした。
その3か月後に。
紆余曲折を得て私がマグリット商会の商会部長として地位を築き、ケンは大商会の主として度々対立を重ねながらも好敵手として互いに競い合う様になりました。
そして出会いから半年後、我がマグリット商会が主催する舞踏会にて。
「本日はお招きいただき、誠にありがとうございます」
「いいえ、先日の新作の純伯のドレス。大変すばらしかったわ。乾杯でした」
「あのドレスは私がどうしても着て欲しいと思いながら考えました」
冬に発表したドレスで私達は勝負しましたが勝者は言うまでもありませんでした。
素晴らしいドレスで、完全に負けたと思いました。
まさか、ケンが設計からデザインまでしていたとは。
何と多才な人でしょう。
「私、知りませんでしたわ?貴女は女性の相手も鮮やかですが、特定の相手を作られなかった」
「はい、正確には作れなかったと言うのが正しいのですが。私の前に女神が現れまして」
帝国一の商人でもある彼の心を盗んだのはどれ程魅力的な女性なのでしょう。
何故か胸の奥が寂しくなりました。
そして同時に気づきました。
私は彼が好きだったのだと。
胸が痛かった。
前世の時も、さして胸が痛むことはありませんでした。
そしてジャスパーに別れを切り出された時も。
なのに今、胸が痛いです。
「でも、今目の前にいる華の前では霞んでしまう」
「え?」
ふと、彼と視線が重なったと思った瞬間、腕を引かれました。
13
あなたにおすすめの小説
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果
藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」
結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。
アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。
※ 他サイトにも投稿しています。
嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる