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序章~出会い
10.気持ち
しおりを挟むその後ドレスアップをさせられレストランの中に入り食事を頂きました。
「何か?」
「いいえ、お味はどうですか」
「評価は4段階で良です。料理も大変美味しゅうございますが、若干スープの温度ですね。器が冷めやすい所為ですので改善点を上げるなら…いえ、失礼しました」
私はつい何時もの癖でやってしまいました。
前世でも飲食店に入ると4段階評価の後にアンケートにも記入していました。
どんな時も癖がついてしまっていたのかもしれません。
「改善点をお教えください。是非」
「はっ…はい」
「こちらの皿はアンティークになっているので、温度を保つ素材になっていないのです」
「でしたら、ギリギリまでお皿を温め、尚且つ運ぶ直前までスープの温度を保てばよいかと。温度が下がると味が塩辛く感じます。例えばスープのお皿を平らではなくこのような物に…」
「なるほど、熱を外に下げない形に…ではメインの皿はこちらでは?」
「そちらですと…」
私の人生は仕事に捧げて来ました。
青春時代もすべて仕事にぶつけ、喜びも悲しみも仕事に注いできたのです。
だけど、行き過ぎた私の行動に嫌気がさしている彼はこんな風に笑いかけてくれませんでした。
仕事がなければ私は面白みのない何もない女です。
「貴方は変わった人ですね」
「えっ…」
「だけど、一緒にいて楽しい人です」
人付き合いが得意というわけじゃない。
新人の頃は何度も失敗して相手を怒らせることなんて数えきれません。
ですが失敗を繰り返しながらも次に生かしてきましたが、やはり人間関係を円満にするのは下手だった。
「レディー…」
「どうかレティとお呼びください。ブリリアント商会会長様」
「ならば私の事もケンと呼んでください。マイレディー、レティ」
甘いマスクではなく、優しくも穏やかな笑顔でした。
そして何故か心拍数が少し上がったのは何故でしょうか。
「あっ…あの」
「何でしょう?」
「いえ、何故顔を近づける必要があるのかと。そんなに近づかなくともお話は出来ると思いますが。もしやもう視力が悪いのでしょうか?でしたら良い眼科を紹介しますが」
「そう来ましたか」
手で顔を覆うとは、よっぽど深刻な状況なのかもしれません。
「そうですね、視力が困った事になっているかもしれません。ですから、容赦してください」
「解りました」
今度眼鏡を進めて見ましょう。
今日のお食事のお礼と、そして今後も好敵手として良いお付き合いをするために。
しかし、この時私は夢に思いませんでした。
その3か月後に。
紆余曲折を得て私がマグリット商会の商会部長として地位を築き、ケンは大商会の主として度々対立を重ねながらも好敵手として互いに競い合う様になりました。
そして出会いから半年後、我がマグリット商会が主催する舞踏会にて。
「本日はお招きいただき、誠にありがとうございます」
「いいえ、先日の新作の純伯のドレス。大変すばらしかったわ。乾杯でした」
「あのドレスは私がどうしても着て欲しいと思いながら考えました」
冬に発表したドレスで私達は勝負しましたが勝者は言うまでもありませんでした。
素晴らしいドレスで、完全に負けたと思いました。
まさか、ケンが設計からデザインまでしていたとは。
何と多才な人でしょう。
「私、知りませんでしたわ?貴女は女性の相手も鮮やかですが、特定の相手を作られなかった」
「はい、正確には作れなかったと言うのが正しいのですが。私の前に女神が現れまして」
帝国一の商人でもある彼の心を盗んだのはどれ程魅力的な女性なのでしょう。
何故か胸の奥が寂しくなりました。
そして同時に気づきました。
私は彼が好きだったのだと。
胸が痛かった。
前世の時も、さして胸が痛むことはありませんでした。
そしてジャスパーに別れを切り出された時も。
なのに今、胸が痛いです。
「でも、今目の前にいる華の前では霞んでしまう」
「え?」
ふと、彼と視線が重なったと思った瞬間、腕を引かれました。
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