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第一章婚約破棄事件
7.小さな悪役令嬢
しおりを挟む私を使用人と間違えていた彼女は真っ青な表情をしました。
ですが、更に失言を零したのです。
「奥方って…愛人では?」
この状況で空気を読めないのでしょうか。
ただでさえ、怒っている旦那様に火に油を注ぐような言い方をする等。
「どうみても伯爵夫人は若すぎますし、愛人にしか…」
「奥様正真正銘、アスガルト伯爵家の奥方様でいらっしゃいます。お若いですが奥様は二児の母君でもありますよ」
「は?」
旦那様以上に怖い顔をしているマーク。
その隣では腕を組み仁王立ちするヴィルマも戦闘態勢した。
「伯爵夫人を侮辱するぐらいなのですから、それ以上の家柄でしょうね?ちなみに奥様の父君のご友人は公爵閣下ですが」
「ひっ!」
「貴女は公爵よりも上の方に後見人がいらっしゃるのでしょうか?そうなると皇族ですね」
「あっ…ああ」
少々苛め過ぎではないかと思いますが、彼女には少しお仕置きが必要かと存じます。
「失礼ですが、侯爵令嬢の健康管理は何方が?」
「普段は乳母がしているのですが、今は腰を痛めて、侍女が」
「そうですか。貴女はお嬢様を見つけた時、すぐに安否を気遣うことをしなかったのですか?」
「何を…」
解せません。
自分の失態でお嬢様がいなくなったのなら真っ先にかけより心配するのというのに。
「貴女は最初にお嬢様を責めました。責める前にご自分の失態を詫びて、お嬢様に謝罪した後に無事を喜ぶのに、お嬢様を責め、罵倒しました。これは職務怠慢です。今すぐ謝罪した後に始末書を書きなさい」
「伯爵夫人…それは」
「侯爵様、差し出がましいようですが、お嬢様はご病気でもなければ食が細いわけではありません」
私の見たところ小食だなんてとんでもありません。
息子よりも食欲旺盛でいらっしゃいます。
「先ほどパンを食べた時に味がすると仰せでした。侯爵家では味のしないパンを食べているのでしょう」
「何だと?」
「しかも瞼を見たところ、彼女は貧血にもなってます…栄養が滞っているのでは?」
同年代の子供よりも痩せて小柄で、貧血を患う程とは。
侯爵家で酷い扱いを受けている可能性も考えられますし、すぐに対処すべきかと。
「侯爵夫人はいずこに」
「妻は、病気で療養をしていまして…」
この言葉を聞いて奥様の様態は芳しくないと思いました。
もしあの夢の通りだとしたら?
ゲームでは孤独な悪悪令嬢として登場した彼女は早くにお母様を亡くされている設定でした。
幼い頃病にて。
その所為で寂しい幼少期を過ごした後に伯爵夫人が家庭教師として傍にいました。
ですが、彼女の孤独な心を救えなかった。
ならば悲しい過去を塗り替えれば良いのではありませんか?
「侯爵様、ご無礼を承知でお願い申し上げます」
何ができるか解りません。
私はいわゆる脇役でしかないのですから。
ですが、最悪の状況を変えるべく動く事は出来ます。
そして後に孤高の悪役令嬢の結末が悲しい物にならないようにしたいと思います。
浮気男に振り回され傷つくことがないように。
断じて許しません。
あんな最低な似非王子、正確には皇子ですが。
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