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第一章婚約破棄事件
34.蓄積された怒り~ケネシーside③
しおりを挟む誹謗、中傷のビラを作ってばらまいているのはジャスパーの息子だが、協力しているのはあの馬鹿一行だろう。
正直もう切れそうなんだ。
レティーは気にしていないと言っているが、そんなはずはない。
誰だって罵倒を浴びせられ、いわれのない噂を流されれば傷つく。
それでも私達は貴族だ。
社交界では感情を先に出した方が負けで、マウントを取られても笑っていなくてはならない。
「伯爵、私はどう詫びていいか解らない」
「侯爵様…」
「レオナルドが怪我をしたのも、セレニティーがあの馬鹿に付きまとわれているのも…私やリリアンと親しいのが原因だろう」
この方は優し過ぎる。
身内に対して寛大過ぎるからこそ、傷ついているのだろう。
敵には情け容赦がないが、味方には何処までも心を尽くすお人だ。
「侯爵様、私の妻は後悔していないでしょう。恐れ多くも侯爵夫人と妻は親友でした」
「ああ…」
「身分が違い過ぎますが、妻にとっては唯一の友と言っても過言ではありません」
伯爵夫人という立場故に、レティーも孤独だった。
そして、身分が低く周りから爪はじきに合っておられた侯爵夫人も孤独だったのかもしれない。
「妻は侯爵夫人の強さに憧れていました」
「私の妻も彼女を好いていたよ。私が嫉妬してしまう程に」
それは私の台詞だ。
時折私よりも侯爵夫人と一緒の方が楽しいのではないかと思ってしまう事があった。
「二人は共に負けん気が強かったですからね」
「まったくだ」
「ですが、傷つかないわけがありません。私は妻が苦悩している事を知っております。そして息子が継承でありましたが…運が悪ければ」
「最悪の事も考えられたな」
今回は不幸中の幸いであったんだ。
今噂で流れているようにレオナルドに万一の事があればレティーはどれ程自分を責めたか。
「正直、あのクソ皇太子をこのまま皇帝にすれば帝国は亡びるでしょう」
「当然、私も指示はしない。私が忠誠を誓っているのは陛下であったあのクソ殿下には一切の情も無い。むしろ妻が死ぬきっかけを作ったとさえ思っている」
既に皇帝陛下の耳にもレティーの事や、リリアン様とのやりとりも知っておられるはずだ。
学園で度重なる問題を起こし続け、皇太子殿下の側近は帝国内でも重要な役職のついている貴族の子息だ。
このままで済むはずはない。
済ませるつもりもない。
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